キーパーソンが見るWeb業界
第3回 プロモーションにおけるWeb(後編)
前回から引き続き,今号の特集でも取り上げている「プロモーション」をテーマに,株式会社電通 螺澤裕次郎(かいざわゆうじろう)氏をゲストにお迎えしてお話しいただきました。
Web制作者が扱う範囲が広がる
――今の話から,Webというメディアは定型ではなく不定型な業務になってきていることが伺えます。つまり,単なる受発注業務で完結するものではなくなってきているということです。では,実際にWeb制作者が扱う範囲はどうなっているのでしょうか?
阿部:今のお話の流れで,コミュニケーションという軸で見ると,プロモーションでも同じようなことが言えるのではないのでしょうか。つまり,コーポレートサイトでもプロモーションサイトでもWebというメディアを軸に据えた考えが最適なものの1つになりうるということです。
螺澤:ええ。とくに認知してもらうことの重要性を考えた場合,マスメディアからWebまで1つの流れで行うことは大事です。Webから他の場所へつなぐこともあれば,Webから入って他の媒体へとつなぐこともあります。
森田:Webが最適であるというよりも,そういう役割があると表現したほうが適切でしょうね。コーポレートサイトであれば,実際にはコーポレートブランディングについて考えなければいけなくて,Webサイトに誰が来てどう伝わったかを考えるわけですが,プロモーションサイトとは最終ゴールの考え方が違う部分であり,役割の違いでもあります。
螺澤:ここまでの皆さんの話を聞いているだけでも,Webの仕事をするうえで考えることややるべきことは大幅に増えているということですよね。ここで,少し視点を変えて,たとえばWebサイトを作ってくださいという仕事を受けたとき,本当ならWebとは違うアプローチが取れます,と考えたことってありますか? つまり,自分にある程度の権限を与えてくれたら,もっと別の組み方をします,というようなニュアンスです。
長谷川:私個人としても,Web自体を目的としているわけではなく,もともと情報をわかりやすくつなぐインフォメーション・アーキテクトの仕事をやりたいと思っていました。その中でその一番主軸となりそうで,かつ商業ニーズがありそうなものとしてWebを選択しました。
そういう背景もありますので,クライアントから課題が持ち込まれたときに,Webを前提とした話であっても,その前提をひっくり返したような提案を行うことがあります。
たとえば,情報共有をするため,イントラネットで掲示板サイトを作りたいという相談が来たとき,図書館的なサロンを作ることで問題を解決したほうが良い,という提案を行いました。これによって,結果的にWebサイト制作のプロジェクトにはなりませんでした。
このようにWebを目的とせず,あくまで1つの手段として考えるべきだと思っています。ただ,会社としてWebの制作を請け負っている場合,これはジレンマになると思いますが。
螺澤:今のお話で「実際に図書館を作りましょう」となった場合,コンセントさんは社内に施工業者を持っているわけではないですよね。そうすると,それを発注する業務が必要で,ディレクションをすることで領域は広がっていきますね。
長谷川:そのとおり,ディレクションする領域は広まっています。実際に,自分たちが不慣れな領域についても関わることが増えています。
しかしそれでも,デザインのプロセス自体には違いはなく,ユーザの分析,コンテンツの分析,ビジネス意図の明確化を行って,それらをもとにプラニングを行います。コンセントでは,Webプロジェクトであれば,情報アーキテクチャ,ビジュアルコミュニケーション,そしてサーバやHTMLなどのテクノロジーの3つを要素としてデザインを行います。
Web以外のプロジェクトでは,これに建築や素材,物理的なUIなどの要素が加わってきたりします。その場合,たとえば建築については自社内にリソースはないので,専門家である建築家とともにコラボレーションすることになります。
螺澤:今,建築のお話が出たからというわけではありませんが,最近ちょうど『建築プレゼンの掟』という本を読みました。いろんな人にプレゼン方法を聞いてみたインタビュー集です。この本に登場するのは建築家だけではなく,広告代理店の人もいます。それで,中身を読んでみると「広告コミュニケーションは,広告制作担当と作るだけではなく,一般の生活者とコミュニケーションを取ること」と書いてありました。その方法の1つとして,マス的な展開ではないとしても,リアルな“場所”を作ることが大切なことになるのではないか,ということが書かれいて,コミュニケーションの誘発点として建築が必要なんだと言っている人がいました。
そういう視点からいろんなことを考えると,考えるべき領域は既に広告という枠でもないし,広告代理店とか制作会社というような業務分担の考え方でもなくなってくるんですよね。
森田:Webからスタートした案件が,そういうところまで展開できるようになったときこそ,電通さんのような大手広告代理店がすべての領域をディレクションしているということになっていれば心強いですね。自分たちの会社の規模ではそこまで追随するのが厳しくなりますから。


