JIRAで進化するプロジェクト管理―ITSの特徴と変遷から見えてきたもの

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JIRAでITSを統一する

JIRAの採用例では,最初はスターターライセンスで試しに使ってみて,社内での実績を積み重ねていき,プロジェクト・部門・会社標準へと次第に広がっていくケースが多く見られます。採用の理由として,商用製品なのでサポートを受けられるという点や,会社資産として保持・運営しやすいという点を挙げるユーザも多くいます。

スターターライセンスの売り上げを全額チャリティーに寄付しているにもかかわらずAtlassianの会社運営が順調に推移していること,JIRAの製品戦略がより広範囲への適用に舵を切っていることなどは,上記のような活用の幅の広がりを示しています。

JIRAの採用が進む理由として,⁠成果(物)との関連付けのしやすさ」も挙げられます。バージョン管理システムやヘルプデスク,情報共有システムなどとJIRAを連携するしくみがサードパーティからも提供されています(Atlassian Marketplaceから調達可能⁠⁠。JIRA自身もDVCS(Distributed Version Control System:分散型バージョン管理システム)をベースとしたGitHubなどとの連携や,Subversionとの連携アドオンを提供しています。

JIRAは情報ハブ

ITSは,ほかのシステムと連携することでプロジェクトを広範囲にわたり詳しく追跡できるようになります。それぞれの作業を支援しつつ,それぞれの価値観や把握したい粒度に合わせた見せ方・追跡を行える情報ハブがITSなのです。

要件からソフトウェアへの中間成果物としてソースコードなどがあるととらえると,中間成果物は一部の関係者(開発者)にはわかりやすいですが,それ以外の多くの関係者(プロジェクト管理者やエンドユーザなど)にとってはわかりにくいものです。開発者以外の関係者は「要件が次のリリースで提供されるか?」⁠バグが改修されているか?」に関心があります。ITSは情報ハブとして,大きなくくりと細かい成果をつなぐのりしろのようなものです。次の工程に引き継ぎ,移行する情報源となります図2⁠。

図2 情報ハブとしてのITS

図2 情報ハブとしてのITS

JIRAは,さまざまなプロジェクトで揉まれてきた実績から,どのような立場の関係者にも直感的にわかりやすく,負担を軽減するしくみを提供しています。

これからのプロジェクト管理を支えるJIRA

これからのITSには,一歩先を行くためのしくみが求められてきます。ソフトウェア開発の過程で得られたあらゆるフィードバックを収集し,実践していくことが求められます。これからは実践・学習・蓄積を繰り返すプロジェクト管理が必要なのです。

Issueを基点とした情報ハブ
  • Issueと開発成果(物)を追跡可能にするシンプルな開発フローの形成と協調の促進
  • さまざまなツールやシステムからアクセスできる情報ハブ
  • Issueの発行や閲覧をITSで行わない情報共有と協調の促進
あらゆる関係者からIssueに情報を引き込むことによる情報ハブ
  • Issueの見せ方を関係者に応じて使い分ける協調の促進

これらを行うことで,企画→計画→開発→ビルド→デプロイ→運用のライフサイクルでITSが情報ハブとして力を発揮します。

開発フローの簡素化と定着化を担うGit Essentials

とはいえ,開発者の作業はソフトウェアの源泉であり,重要な役割を果たします。最近では頻繁にソースコードの履歴を取得できるDVCSが活用されるようになってきました。ただし,DVCSはリポジトリが分散するため,管理や開発フローの統一方法が従来の中央集中型バージョン管理よりも複雑です。

DVCSの代表格であるGitをベースとした開発フローを情報ハブであるJIRAで統制することで,計画→開発→ビルド→デプロイの一貫性を保ちながら簡素化し,定着させるソリューションがGit Essentialsです図3)。

図3 Git Essentials

図3 Git Essentials

JIRAで開発の全容と各Issueの詳細を把握できる。各Issueの状況に応じた開発操作をJIRAから実施でき,結果であるソースコードやビルドの状況が自動レポートされ追跡可能になるしくみを提供してくれる

Git Essentialsは,JIRAと,JIRA Agile(JIRAにアジャイルな運営機能を追加するアドオン),Stash(Gitのリポジトリ管理を行う)注2),Bamboo(継続的インテグレーションとデプロイを実現する)を組み合わせたものです。

Git Essentialsでは,開発のすべての成果(物)が開発の動機となったIssueに関連付けられます。ブランチをはじめ,コミットやプルリクエスト(コードレビュー),マージ,ビルド結果,デプロイ状況をJIRAのIssueに関連付けて把握できます。これは,開発者だけでなくプロジェクト管理者やテスト担当者などほかの関係者にも価値のある情報源となります。

現実的な企画と開発計画を支えるAgile Ready

ビジネスに合ったソフトウェアを提供し続けるためには,企画と開発計画を密接に関連付けることが重要です。企画担当者は開発チームの現状を理解したうえで企画を練る必要があり,開発チームは当初の企画だけでなく企画の更新内容も把握しながら開発を進める必要があります。

Agile Readyは,開発の複雑さをJIRAを使って誰もが把握できる粒度に調整することで,開発計画とより上流の企画をつなぐソリューションです。企画担当者が,情報を共有し練り上げることを容易にするチームコラボレーションツールConfluenceで企画書を管理することで,文書内の要件項目をJIRAのIssue(バックログ項目)として起票できます。企画担当者は,自分の責務である企画書に集中しながら開発チームに要求を伝達できます。開発チームは,JIRAで意思決定や進捗状況を明確にできます。企画書内の要件項目にJIRAのIssue IDと現在のステータスが動的に更新されるため,企画書は透明性と追跡可能性を兼ね備えたものになります図4)。このように,ITSを間接的に使いながら情報をつなぐということもITSには求められてきます。

図4 Agile Ready

図4 Agile Ready

Confluenceで保管している企画ドキュメントを編集することなく,JIRAでの要件項目などのIssueとして登録できる。企画担当者は,企画ドキュメントに注力しながら,開発の状況を文章に付けられたタグの情報で知ることができる

運用サポートとエンドユーザとの対話を実現するJIRA Service Desk

エンドユーザからのフィードバックに応えるためには,エンドユーザにもITSを使ってもらうことが必要です。ただし,ITSはエンドユーザにとって必ずしも使いやすいものではありません。情報量や専門用語などの壁があります。エンジニア以外にもITSを使ってもらうしくみを考えなければなりません。

JIRAのアドオンであるJIRA Service Deskでは,ヘルプデスク業務でJIRAを活用するしくみを提供しています図5)。エンドユーザは,シンプルなポータルと必要最小限の入力でフィードバックができ,それに対応するエンジニアはより専門的な情報を参照できるしくみです。

図5 JIRA Service Desk

図5 JIRA Service Desk

すべての関係者の手間を軽減し,ITSがより広範囲に活用されるためには,同じIssueに対して使う人の立場に応じて見せ方や提供のしかたを変えるしくみを持つことが必要となります。

注2)
Cloud版の場合は,StashではなくDVCSのホスティングサービスのBitbucketが組み合わせられます。

健全なソフトウェアライフサイクルをこの手に

最近,ソフトウェア開発現場の資質が問われるようになってきました。より透明性の高いプロジェクト管理に移行するには,ITSの積極的な活用がカギを握ります。開発の環境を整備し,負担を軽減し,本来注力すべき本業にフォーカスできるようにする必要があります。

ITSを導入し定期的に見直すことで,みなさんの開発現場の良い点・改善点を再発見してみてください。JIRAは十分にその手段の1つになれるでしょう。また,JIRAから多くを学ぶこともできます。ほかのITSを使い続ける方もJIRAを知っておいて損はありません。

Atlassian製品のプロフェッショナル
リックソフト大貫氏が語るJIRA導入の実際

JIRAとセットで使われるJIRA AgileとWBSガントチャート for JIRA

WEB+DB PRESS編集部
―Atlassian製品はそれぞれを連携させることで利便性を高められる特徴がありますが,実際に複数の製品を組み合わせて利用しているユーザは多いのでしょうか。

リックソフト代表取締役
Atlassianコンサルタント
大貫浩氏

リックソフト代表取締役/Atlassianコンサルタント 大貫浩氏

大貫氏:私たちのお客さまで言えば,何らかのAtlassian製品を導入している企業の7~8割が別の製品を組み合わせて使っています。最も多いのは,課題管理システムであるJIRAとチームコラボレーションツールのConfluenceの組み合わせですが,最近ではJIRAとJIRA Agileも増えていますね。製造した部品を海外の企業へ輸出しているあるお客さまは,開発にアジャイルの手法を採り入れてほしいと顧客企業からリクエストがあり,その声に応えるためにJIRAとJIRA Agileを導入しました。従来型の手法では顧客企業側がスピード感を持って製品を開発することができないという課題があり,それを解決するために部品メーカーにもアジャイル開発を求めているという構図になっています。

一方で,アジャイルは1年スパンで計画的に開発を進めるといったプロジェクトには向かない面があります。そのためWBS(Work Breakdown Structure)とガントチャートを使ってプロジェクトを管理したいというニーズも根強く,弊社が開発したWBSガントチャート for JIRAもよく使われています。

―JIRA AgileやWBSガントチャート for JIRA以外に,JIRAと組み合わせて使うお勧めの製品はありますか。

大貫氏:ぜひ試していただきたいのは,Gitを使ったソースコード管理をオンプレミスで実現するStashです。これまでのGitはコマンドラインを覚えて使うのが当たり前でしたが,StashではすべてGUIで操作できるほか,アクセス権限を柔軟に設定することが可能です。ソフトウェア開発では知財が絡むことも多く,たとえば外部の開発会社とソースコードを共有したいといった際に,特定の部分が見せられないといったことがあります。このようなときに,Stashであれば知財が関係するソースコードの閲覧を不可に設定できるのは大きなメリットでしょう。

もう1つの製品は継続的インテグレーション(CI:Continuous Integration)ツールのBambooです。JIRAとの連携が強化され,関連するJIRA課題上にビルド結果やデプロイ状況を表示させることができます。Bambooは有償の製品ですが,トラブル発生時のサポートの問題などを考えると,決して高い投資ではないと思います。

リックソフトでは,Atlassian製品の導入支援を多くの企業に対して行われていますが,どういった相談を受けることが多いのでしょうか。

大貫氏:プロジェクト管理で課題を抱えている,あるいはアジャイル開発など新しい手法に取り組む必要がある企業の方から,JIRAやJIRA Agileはどのように業務を支援してくれるのかという問い合わせをいただく機会が増えています。他社の導入事例やベストプラクティスを教えてほしいという問い合わせも多いですね。私たちが積み重ねてきた知見をお伝えしつつ,開発ツールの導入や開発環境の整備を支援しています。もし同様の課題を抱えているということであれば,ぜひ私たちにご相談ください。

Atlassian Expertsの盾は国内売上
トップという証

Atlassian Expertsの盾は国内売上トップという証

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URL:https://www.ricksoft.jp/

セミナーレポート
開発チームから業務チームまで,コラボレーションでハッピーに
~企業にあるチームを「JIRA」でひとつに~
http://gihyo.jp/news/report/2014/10/0602

著者プロフィール

長沢智治(ながさわともはる)

Atlassian 唯一のテクニカルエバンジェリスト。Rational Software などでソフトウェア開発業務改善のコンサルタント,ソリューションアーキテクトを経験し,Microsoft での7年間エバンジェリストとしての活動を経て,2014年より Atlassian に参加。

全国各地の開発現場やワークスタイルの革新のために「破壊と創造」をもたらし,仕事とビジネスが楽しくなることを願ってあれやこれや活動し続ける型にはまらないエバンジェリスト。悪巧みなどお気軽にお声がけください。

「通りすがりのエバンジェリスト」「パワポ職人」と呼ばれることもある。

趣味は,海水魚やオオクワガタの飼育,仮面ライダーの研究など。

長沢智治のTwitter(@tomohn):http://twitter.com/tomohn
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アトラシアン株式会社ブログ:http://japan.blogs.atlassian.com

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