継続的Webサービス改善ガイド

第3章 パフォーマンスの改善~現状を可視化し,トップダウン/ボトムアップでアプローチする

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パフォーマンス面での変化

Webサービスが成長するにつれ,パフォーマンス改善を行わなければならない局面が必ず立ち現れてきます。より複雑な要求に基づく機能の追加,アクセス数の増加,データ量の増大などによるものです。本章では,筆者の勤務先であるpaperboy&co.(以下,ペパボ)での取り組みを紹介します。

まずはじめにパフォーマンス改善とは何か,どのように改善するのかという基本的な考え方について説明し,次にその考え方に基づいて取り組んだ実践の詳細について述べます。

ブクログのパブー

ブクログのパブー ⁠以下,パブー)は,ペパボの子会社であるブクログが運営する電子書籍作成・販売プラットフォームです図1)⁠このサイト1つで電子書籍の作成から販売,さらには外部の電子書籍ストアへの出版すらも可能な,まさに「プラットフォーム」と言うべきサービスを提供しています。

図1 ブクログのパブー

図1 ブクログのパブー

電子書籍N年

「電子書籍元年」という言葉が巷間(こうかん)とりざたされるようになってから,何年経ったでしょうか。ようやく日本でもAmazonのKindleが販売開始されたことで,電子書籍の普及も本格化し始めてきたようです。そのような状況下,おかげさまでパブーも,アクセス数の増加とともに販売数も順調に伸びてきました。

サービスが重い

そんな中,お客様から「ページの表示が重い」という声がちらほら聞こえ始めました。Twitterでも「パブーを開こうとするとしばらく待たされる」という声が上がり始めました。実際に自分でアクセスしてみても,レスポンスが遅いのは明白ですし,数値を計測してみても状況が悪いことがわかりました。

パフォーマンス改善の必要性

ECサイトのパフォーマンス

いちユーザとしての個人的な体験に照らし合わせてみてもわかるとおり,重いサービスのレスポンスをただ待ち続けるのは苦痛ですし,時にはサイトの表示を待たずにブラウザのタブを閉じてしまうこともあるでしょう。また,広い意味ではパブーも含まれるECサイトにとって,レスポンス速度と売り上げの相関はよく知られた事実です。

お客様へのより高い価値を提供するためにも,売り上げを落とさないためにも,なんとしてもパフォーマンスを改善しなければなりません。

継続的な改善

今回は,お客様の声に主に駆動される形で改善に取り組み始めたわけですが,本来なら,お客様に不便を感じさせてしまう前に,あらかじめサイトの変調を予期して改善にあたるべきでした。

そのためには,現状を改善するとともに,レスポンスの可視化・モニタリングを通して,継続的に改善できるしくみを整える必要があります。

パフォーマンス改善の費用対効果

どんなサイトにもいつかは必要になるパフォーマンス改善も,エンジニアのリソースを使って行うからには,費用対効果を考え,できるだけリターンの大きい方法を採らなければなりません。とはいえ,何がパフォーマンス改善にとっての「リターン」なのかは,一概にこれと決められるものではないのが難しいところです。

誰にとっての改善?

パブーには,ユーザが自著を作成するCGMConsumer Generated Mediaとしての側面もあります。CGM系のサービスの場合,サイトを利用するユーザは大きく2つに分かれます。

  • コンテンツを発信する側
  • コンテンツを閲覧する側

どちらの側に対しても改善できればそれに越したことはないのですが,両方を同時に満足させる施策を実施することはなかなか困難です。

コンテンツ発信側

コンテンツ発信側に対して主に影響するパフォーマンス劣化は,それらのユーザにとって便利な機能をどんどん追加していった結果,処理が非効率になったということが多いでしょう。たとえば,管理画面の機能強化や,サイト内アクティビティ通知機能の追加などがその例です。

CGM系サービスの性質上,この側面におけるアクセス数はサイト全体のアクセス数から比べると少なくなりますが,顧客満足度や定着率などのKPIKeyPerformance Indicator重要業績評価指標)に関わってくるため,早急な改善を要します。

コンテンツ閲覧側

CGM系サービスの場合,検索サービスからの訪問者など,サイトの直接のユーザではない閲覧者に対するパフォーマンス改善も重要になってきます。レスポンス速度とサイトへの流入・回遊率には一般に相関が見られ,サイトへの流入・回遊が多ければ多いほど,コンテンツ発信者のモチベーションも上がりますし,メディアとしての広告価値も高まるからです。

また,こちらの側面のほうがアクセス数の割合としては多くを占めるのが普通でしょう。こちらはこちらで,コンテンツ発信側への改善と同様に,力を入れた取り組みを要します。

著者プロフィール

栗林健太郎(くりばやしけんたろう)

(株)paperboy&co.

URL:http://kentarok.org/
Twitter:@kentaro
Github:kentaro

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