増井ラボノート コロンブス日和

第3回 Gyamm

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URLで紐付けられた世界で

前回の記事でも書いたように,製品にも日記にもレシピにも場所にもURLがついており,あらゆる情報がURLで表現できる時代になってきたと言えるでしょう。

ところが,なぜかメールメッセージにアクセスするのにURLを使うのは一般的ではなく,メール専用のアプリケーションやサービスを利用するのが普通で,何かと不便が多い状況になっています。たとえば,会議やイベントの連絡をメールで受け取ったとき,その内容を表現するURLは存在しませんから,ブックマークできませんし,SNSなどにURLを貼ることができませんし,別のページやWikiなどからリンクを張ることもできません。

メールで個人的に受け取った情報を他人に伝えようとすると,メールを転送したり,SNSにコピー&ペーストしたりしなければなりません。あらゆる情報がWeb上で表現されている現在,情報に直接ブラウザからアクセスできないのはたいへん不便であり,メールで受け取った情報だけが別の世界に存在するように感じられてしまいます

なぜメールが使いにくいのか?

メールとWebの相性が悪い原因は次のようなものだと思われます。

  • メールはWebより前から存在しており,独自の環境で扱われていた
  • メールは個人的な情報のやりとりに使わることが多かったため公開が前提のWebの世界とは別物と考えられていた

このような事情のため,Webと融合する方法があまり工夫されていなかったのでしょう。

メールの普及はWebの普及よりもずっと前のことですので,しかたがなかったかもしれませんが,Webが発明されてから20年以上経過している現在,いつまでもメールを別世界のまま放置しておくわけにはいかないでしょう。何らかの方法での融合が必要だと思われます。

Gyamm――メールメッセージをWebページ化する

メールメッセージを普通のWebページと同じように扱うことができれば,メールの扱いはずっと便利になるはずです。私はメールを簡単にWebページに変換できるGyamm(ギャム)というシステムを作って運用しています図1)。

図1 SoftwareDesign@Gyamm.comに送られたメールのリスト

図1 SoftwareDesign@Gyamm.comに送られたメールのリスト

Gyammを使うと,メールメッセージをどこからでもアクセスできるHTMLページに変換することができます。

Gyammの使い方

Gyammの使い方はとても簡単です。メールメッセージを[example@gyamm.com]のようなメールアドレスに送ると,送られたメッセージは[http://gyamm.com/example/]から閲覧できるWebページに変換されます。メールが添付ファイルを含んでいたり,HTMLメールだったりした場合でも,普通にWebページとして閲覧できます。

たとえば,受け取ったHTMLメールを[example@gyamm.com]に送ると,図2のようなWebページが生成されて[http://gyamm.com/example/20151119003655]のようなURLでアクセスできます。メールの情報を簡単な手間でWebで公開できたことになります。

図2 書店からの案内メール

図2 書店からの案内メール

添付ファイルがある場合は「▶」の右にファイル名が表示されます図3)。

図3 添付ファイルつきのHTMLメール

図3 添付ファイルつきのHTMLメール

Gyammの利用例

Gyammは,次のようなさまざまな用途に利用できます。

情報の公開/共有

受け取ったメールをそのままの形式で,Webページで公開するのは普通は簡単ではありませんが,Gyammを利用すれば,HTMLメールも添付ファイルつきメールもWebページに変換して,ブックマークしたり他人と共有したりできます。

メーリングリストのアーカイブ

xxxxという名前のメーリングリストのメンバとして[xxxx-archive@gyamm.com]のようなアドレスを登録しておくと,メーリングリストのあらゆるメッセージが[xxxx-archive@gyamm.com]に送られ,その結果全メッセージが[http://gyamm.com/xxx-archive/]に蓄積されるので,メッセージのアーカイブとして利用できます。

フロー情報のストック化

宴会などの案内がメールで送られてくることはよくありますが図4),こういうフロー情報をWebページのようなストック情報に変換しておくと,後でアクセスしやすくなって便利です。

図4 宴会案内メールをWebページに変換したもの

図4 宴会案内メールをWebページに変換したもの

情報の集約

何かのトピックに関して,いろいろな人からメールを受け取ったとき,それを全部[specialtopic@gyamm.com]のようなアドレスに転送するようにしておけば,関連するあらゆるメールを[http://gyamm.com/special-topic/]からアクセスできるようになります。アンケートやレポートをメールで集計するような場合に便利です。

情報の分類管理

仕事に関するメールなど,やらなければならない仕事は全部[masui-todo@gyamm.com]に転送することにしておけば,やらなければならない仕事をすべてGyamm上にリストできます。Gyammではメールが表示されないように指定できるので,終わった仕事に関するメールは非表示にしておけば良いでしょう。同様に,トピックごとに別のGyammアドレスに送るようにすれば,フォルダのように管理できます。

著者プロフィール

増井俊之(ますいとしゆき)

1959年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部教授。ユーザーインターフェースの研究者。東京大学大学院を修了後,富士通半導体事業部に入社。以後,シャープ,米カーネギーメロン大学,ソニーコンピュータサイエンス研究所,産業技術総合研究所,Appleなどで働く。2009年より現職。携帯電話に搭載される日本語予測変換システム『POBox』や,iPhoneの日本語入力システムの開発者として知られる。近著に『スマホに満足してますか? ユーザインターフェースの心理学』。

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