増井ラボノート コロンブス日和

第16回 Scrapbox(1)

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Scrapbox利用例

ScrapboxはWebから利用できます。Scrapboxを長年に渡って利用してきた例を紹介します。

研究室での利用

私の研究室では数年に渡ってScrapboxを利用しており,2016年末現在,約8,000ページが作成されています。研究室に所属する学生の興味はいろいろであり,論文や研究トピックや開発Tipsのような情報に加え,ラーメン情報もアニメ情報も部品情報もイベント情報もすべて同じところに置いてあります。雑多な情報が何千ページもあるとたいへんなことになりそうですが,とくに分類を行わなくても関連ページやカテゴリをページとして関連付けておくだけで,これらの情報が適切に分類管理されるのが便利です。

研究室のScrapboxのトップページは図3のようになっています。研究関連情報からアニメ情報,ラーメン情報までかなり雑多な情報が並んでいることがわかります。

図3 研究室のトップページ

図3 研究室のトップページ

ここで「AD620」という部品に関するページを選んで表示すると,その部品の詳しい情報が表示され,似た部品など関連研究のページが表示されます図4)⁠この部品ページには「ストレンゲージ」⁠オペアンプ」というページへのリンクが定義されているので,同じページへのリンクを持つ「キッチンスケール」「LMC660」が関連ページとして表示されているというわけです。

図4 1つの部品ページを開くと関連する情報がすべて表示される

図4 1つの部品ページを開くと関連する情報がすべて表示される

一方,藤沢のラーメン屋のページを選んで表示すると,藤沢やラーメン屋のページがたくさん関連ページとして表示されます図5)⁠部品情報もラーメン屋情報も同じ場所に書いてあるのですが,リンク関係がまったく違っているので別のクラスタとしてうまく管理できています。

図5 藤沢のラーメン屋のページを開いたところ

図5 藤沢のラーメン屋のページを開いたところ

UIPedia

前述の例は研究室内の人間だけが参照できるページでしたが,ユーザーインターフェースに関連する論文やシステムなどをScrapboxで公開しています図6)⁠UIPediaページは誰でも閲覧できますし,参加も可能になっています注3。

図6 入力インターフェースの研究ページ

図6 入力インターフェースの研究ページ

文献情報を管理するさまざまなシステムが利用されていますが,文献データベースでは入力できる情報の属性が限られているのが普通です。Scrapboxを使うと,タイトルや著者名のような一般的な書誌情報だけでなく著者の写真や弟子筋情報,配偶者情報を記述したり,普通の文献整理システムではできないことができるので味のある情報ページにできます。

家族情報

私は個人的なメモや予定表,TODOなどをすべてScrapboxで管理しており,現在6,000ページほどが作成されています。また家族間で共有したい情報もScrapboxで管理しています。親戚の連絡先,銀行口座情報,各種の契約情報,予定表など,家族間で共有したい情報は意外とたくさんあるものです。こういった情報は住所録やスケジュール帳のようなアプリケーションで管理している人が多いと思いますが,家族関連情報はすべて1つの場所に置いておけば何かと便利です。私の場合,家紋の情報,家系図,引っ越し履歴など家族に関連するさまざまな情報を書いていたら簡単に100ページを越えてしまいました。

私はこの考えに基づくシステムを10年以上利用しており,Scrapboxはその最新版です。多くの機能を盛りこんだために現在のScrapboxの仕様はある程度は大きなものとなっていますが,多くのアイデアは「コロンブスの卵」的であり,仕様のシンプルさは保てています。次号では,Scrapboxのさらに詳しい利用法および実装について解説します。

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著者プロフィール

増井俊之(ますいとしゆき)

1959年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部教授。ユーザーインターフェースの研究者。東京大学大学院を修了後,富士通半導体事業部に入社。以後,シャープ,米カーネギーメロン大学,ソニーコンピュータサイエンス研究所,産業技術総合研究所,Appleなどで働く。2009年より現職。携帯電話に搭載される日本語予測変換システム『POBox』や,iPhoneの日本語入力システムの開発者として知られる。近著に『スマホに満足してますか? ユーザインターフェースの心理学』。