降りつぶし.net~同期するWebアプリ・スマホアプリの開発・運用~

第4回 Webアプリとスマホアプリの同期

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降りつぶし管理ソリューションの中核機能

降りつぶし.netは,⁠日本の鉄道駅」にいつ乗下車したのか,を管理するソリューションです。そして,過去の記録はWebアプリケーション(前回第3回で説明)で管理し,降りつぶし中の記録はスマホアプリ(次回以降に説明)でリアルタイム更新する,という要求仕様を実現するために必要不可欠なのが,今回説明する,Webアプリとスマホアプリの同期機能です。

図1 iPhone用アプリ「i降りつぶし」の同期実行画面

図1 iPhone用アプリ「i降りつぶし」の同期実行画面

同期が必要なデータは2種類,さらに特殊ケースも

Webアプリとスマホアプリのデータ同期といえば,Gmail,あるいはEvernoteやDropboxなどが思い浮かびます。これらは,ユーザの個人的なデータを,サーバ(クラウド)と複数のユーザ端末との間で同期させるものです。

しかし降りつぶし.netの場合,同期させなければならないのは,降りつぶしの記録=ユーザデータだけではありません。駅データベースの更新(駅の改廃など)=マスタデータも同期させる必要があります。

ユーザデータでは双方向の同期が必要ですが,マスタデータはサーバ側の更新をユーザ端末に同期させるのみの片方向となります。さらに,後述しますが,降りつぶし.netならではの,どちらにも分類できない特殊な同期が発生し得ます。それへの対応も必要です。

ユーザデータの同期のフロー

第2回で説明した駅データベースの,乗下車記録テーブルcompletionsには,降りつぶし管理のために必要な,ユーザID・駅コード(以上2つがキー)⁠乗下車日・メモ(以上2つがユーザデータ)の他に,更新日時カラムが設けられています。これが,ユーザデータの同期機能のために必要な唯一のデータです。

そして,同期のフローはシンプルです。

図2 ユーザデータの同期フロー

図2 ユーザデータの同期フロー

  1. スマホアプリが,スマホ内のユーザデータのうち,直近の同期開始日時以降に更新された乗下車記録データを取得,TSV形式のテキストを生成する
  2. スマホアプリが,直前の同期完了日時,および生成したTSVデータを,gzip圧縮してWebアプリに送信する
  3. Webアプリは,受信したTSVデータをパースし,各行について同じ駅コードの乗下車記録データが存在するかどうか調べる
  4. 存在していなければそのまま挿入する
  5. 存在していて,かつ受信データのほうが更新日時が新しければ,上書きする
  6. Webアプリは,このユーザの統計情報(前回第3回で紹介したstatisticsテーブル)を更新する
  7. Webアプリは,改めて,直近の同期開始日時以降の更新日時を持つ乗下車記録データを取得,SQLite用のSQL文を生成し,gzip圧縮してスマホアプリに返信する
  8. スマホアプリは,返信されたSQL文をトランザクション内でそのまま実行する
  9. スマホアプリは,すべてのSQL文が正常に実行できた場合,直近の同期開始時刻を今回の開始時刻に更新する

全体として,Webアプリ側にもスマホアプリ側にも更新タイムスタンプがあり,その最新のものを双方に反映する,というシンプルな仕組みです。また,同じユーザが複数のスマホアプリを使用している場合でも,すべてのスマホ間でデータを同期できます。

マスタデータの同期

一方のマスタデータですが,これらにも,ユーザデータと同じ仕組みは使えます。しかし,それではあまりに非効率です。マスタデータの更新には,以下の決定的な違いがあります。

  • a.更新されるマスタデータはWebアプリ側でのみ管理される
  • b.更新情報をWebアプリからスマホアプリに一方的に送信すればこと足りる
  • c.スマホアプリ側のマスタデータは,アプリの更新を行うユーザと行わないユーザとの間で,内容が異なることがある

マスタデータは,Webアプリの管理者が一方的に更新し,それをスマホアプリに通知すればよく,双方のデータのすり合わせは不要です。

しかし,ではスマホ側のマスタデータが常に共通かと言えば,もちろんそうではありません。スマホアプリは,同期機能を使わなくても,すなわちWebアプリにユーザ登録をせずとも,乗下車記録の管理が可能でなければなりません。そのため,マスタデータが更新されるたび,アプリ自体も更新し公開しなければならないのです。そして,その更新を適用したスマホと適用していないスマホでは,マスタデータ自体が異なることになります。つまり,すべてのスマホアプリに同じ更新データを送信して済むわけではありません。

そのため,マスタデータについては,タイムスタンプではなく,バージョン番号により管理することとしました。

マスタデータ同期のフロー

マスタデータの同期は,以下のフローで実現しています。

図3 マスタデータの同期フロー

図3 マスタデータの同期フロー

  1. スマホアプリから,現在のマスタデータバージョン(SQLiteデータベースの「ユーザバージョン」番号を利用しています)を送信する
  2. Webアプリは,受信したマスタデータバージョンより新しいバージョンの駅データ更新情報を,updatesテーブルから取得する
  3. Webアプリは,updatesテーブルから取得した各レコードについて,SQLite用のSQL文を生成し,gzip圧縮してスマホアプリに返信する
  4. Webアプリは,最後に,SQLite用のユーザバージョンを,updatesテーブル内の最新のマスタデータバージョンに更新するSQL文を生成し,スマホアプリに返信する
  5. スマホアプリは,返信されたSQL文をトランザクション内でそのまま実行する

このうちの5は,ユーザデータ同期の7と完全に同一です。

実際の動作では,ユーザデータとマスタデータの同期は同時に行われ,両者のスマホ側の更新は同一トランザクション内で行われます。

著者プロフィール

よねざわいずみ

合資会社ダブルエスエフ代表社員。学習塾講師やら芸能ライターやら劇団主宰やらいろいろ経て現在はよろず請負プログラマ。最近の開発はPHP,JavaScript,Java,MTプラグインなど。お仕事随時募集中。

Twitter:@yonezawaizumi

鉄道旅行ブログ:http://feelfine.blog.izumichan.com/

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