Perl Hackers Hub

第34回 DockerによるPerlのWebアプリケーション開発(2)

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4.5 分

前回の(1)こちらから。

WebアプリケーションをDocker化するときの考え方

Dockerの基本がわかったところで,(2)では,WebアプリケーションをどのようにDocker化していくのか,なぜDocker化するのかについて説明します。

WebアプリケーションのDocker化の方針

Webアプリケーションを動作させるためには,中心となるWebアプリケーションサーバに加えて,データベースサーバ,KVSKey-Value Storeサーバ,プロキシサーバなどが必要なことが多いでしょう。

まず,これらのサーバすべてをDocker上で動作させるという方針と,一部のサーバ,たとえばWebアプリケーションサーバのみをDocker化するという方針があります。次に,すべてのサーバを1つのDockerコンテナ内で動かすという方針と,各サーバをそれぞれ別のDockerコンテナ内で動かすという方針があります。さらに,開発環境,CIContinuous Integration継続的インテグレーション)環境,ステージング環境,本番環境のそれぞれの環境でDocker化する対象を限定するという方針があります。たとえば,本番環境ではWebアプリケーションサーバのみDocker化する,といったものです。

Dockerによる開発において,あらゆる状況に対応できるベストプラクティスは依然として確立されていないと筆者は考えます。そのような状況下で方針を決定するためには,Dockerにより解決したい課題を明確にする必要があります。

Dockerは非常に有用なツールです。しかし,Dockerを導入することにより,開発基盤のしくみは複雑になりがちです。解決したい課題が明らかでないと,Docker導入のメリットに対して割に合わないコストを支払うことになります。

Docker導入により解決したい課題

解決したい課題は状況により異なるため,一般化して話を進めるのは困難です。そこで,筆者が抱えている課題を例に話を進めていきたいと思います。筆者が抱えている課題は次のようなものです。

課題1:本番環境とローカル開発環境のOSが異なる

本番環境はLinuxサーバ上で動作しています。一方,ローカル開発環境では多くの開発者がOS Xを使用しています。現在のプロジェクトではLinux固有のシステムコールを用いるため,ローカル開発環境でも本番環境と同じLinuxを使いたいと考えています。

課題2:生成されるcpanfile.snapshotが異なる

CPANモジュールの管理にCartonを利用しています。しかし同じ内容のcpanfileであっても,OS X上で生成するcpanfile.snapshotと,Linux上で生成するcpanfile.snapshotが異なることがあります。したがって,本番環境であるLinux環境に統一してcpanfile.snapshotを生成したいと考えています。

課題3:プロジェクトごとにミドルウェアのバージョンが異なる

複数プロジェクトの開発を並行して進めています。しかし,各プロジェクトが依存しているPerl,MySQL,nginxなどのミドルウェアのバージョンが異なるため,ローカル開発環境においてプロジェクトごとにミドルウェアの環境を用意したいと考えています。

課題4:DevとOps間のコミュニケーションコストがある

開発環境はアプリケーションエンジニア(Dev)が,CI環境とステージング環境と本番環境はオペレーションエンジニア(Ops)が管理しています。そのような状況で,アプリケーションエンジニアがオペレーションエンジニアに対して必要なソフトウェアの追加を依頼するためのコミュニケーションコストをなくしたいと考えています。

課題の解決

これらの各課題について,先述した方針のうちどれを選ぶかを考えてみます。課題1については,ローカル開発環境でOS Xを使用していることが問題なので,ローカル開発環境のWebアプリケーションサーバのみをDocker化すれば解決できます。課題2については,課題1と同様にローカル開発環境で使用するOSの問題です。課題3については,ローカル開発環境でミドルウェアを含めてDocker化することにより解決できます。課題4については,すべての環境における差異が問題なので,すべての環境でミドルウェアを含めてDocker化する必要があります。

1つのコンテナに複数のWebアプリケーションやミドルウェアを詰め込むのか,1つのコンテナには1つのWebアプリケーションもしくはミドルウェアを割り当てるのかについては,基本的にDockerでは後者が想定されています。したがって,以降では後者を前提として話を進めます。

以上により,ローカル開発環境でWebアプリケーションサーバとミドルウェアをDocker化することで,課題1~3を解決できることがわかりました。本番環境でのDocker運用についてはまだまだこれからノウハウを蓄積していく段階であると考えているため,今回は課題4に関する議論は割愛します。次節以降では,Dockerを用いたローカル開発環境の構築に焦点を当てます。

著者プロフィール

坪内佑樹(つぼうちゆうき)

京都出身京都在住。2013年に株式会社はてなに入社。

WebオペレーションエンジニアとしてMackerel,はてなブログを始めとしたWebサービスのサーバ・ネットワーク構築と運用を担当する。

計算機システムのしくみと性能,サーバオペレーションの自動化について関心がある。

Twitter:@y_uuk1

Blog:http://yuuki.hatenablog.com

コメント

コメントの記入