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第34回 DockerによるPerlのWebアプリケーション開発(1)

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本連載では第一線のPerlハッカーが回替わりで執筆していきます。今回のハッカーは,普段ははてなでPerlで書かれたWebサービスを運用している@y_uuk1こと坪内佑樹さんで,テーマはDockerによるPerlのWebアプリケーション開発」です。Dockerを用いてPerlのWebアプリケーション開発環境を構築するメリットやノウハウを紹介していきます。

本稿のサンプルコードは,WEB+DB PRESS Vol.88のサポートサイトから入手できます。

Dockerとは何か

本題であるPerlのWebアプリケーションとDockerの話に入る前に,Dockerを初めて触る人のために,Dockerそのものについて簡単に紹介します注1)。

最近はDockerの話を頻繁に見聞きする一方,「結局,何を目的として,どのような方法で,何をするものなのかがよくわからない」という話も耳にします。「Dockerはコンテナ仮想化技術の一つである」という説明を聞いたことがあると思いますが,これは,「何を目的として」「どのような方法で」「何をするものなのか」という3つの疑問のうち,「どのような方法で」の一部を答えたものになります。3つの疑問すべてへの答えは,「Dockerは,あらゆる環境でアプリケーションを実行することを目的として,コンテナ仮想化技術を用いてアプリケーションの実行環境を構築し,配布するためのプラットフォームである」というのが筆者の理解です。

注1)
Dockerについてより詳しく入門したい人は,WEB+DB PRESS Vol.86の特集3「Docker実戦投入」第1章「Docker入門」を参照してください。

あらゆる環境でアプリケーションを実行する難しさ

あらゆる環境でアプリケーションを実行するのは,とても難しいことです。アプリケーションは,たいていさまざまなソフトウェアに依存します。動作させたいアプリケーションが依存しているソフトウェアが,さらに別のソフトウェアに依存していることもあります。これは「依存地獄」とも呼ばれます。

Web開発の現場でよく起こる具体的なケースを考えてみましょう。MySQLを扱うためのCPANモジュールであるDBD::mysqlを,Cartonでインストールすることを考えます。Cartonは宮川達彦さん作のCPANモジュールの依存関係管理ツールです。

DBD::mysql自体のバージョンはCartonが管理します。しかし,実際にはDBD::mysqlはMySQLのクライアントライブラリであるlibmysqlclientに依存します。libmysqlclientはCPANモジュールではないため,Cartonではインストールできません。libmysqlclientをインストールするためには,yumやaptなどのパッケージマネージャを利用するか,ソースコードからビルドすることになるでしょう。パッケージマネージャを利用する場合も,使用したいバージョンまたはディストリビューションのパッケージが配布されていないことがあり,自前でパッケージをビルドすることもあります。ソースコードからビルドするにせよ,パッケージを自前でビルドするにせよ,libmysqlclientが依存しているソフトウェアをすべてそろえた環境でビルドしなければなりません。

このように,言語側で専用のモジュール管理のしくみを持っていたとしても,実際にはC言語で書かれたライブラリに依存することはよくあります。依存するソフトウェアが多く依存地獄に陥ると,目的の環境でアプリケーションを実行することが難しくなります。

コンテナ仮想化技術とは何か

Dockerは,コンテナ仮想化技術を利用して,同じOS上に複数のアプリケーションの実行環境を構築することを容易にしています。Docker自体がコンテナ仮想化技術であるというよりは,Dockerは手段としてコンテナ仮想化技術を用いているというのがより正確な表現でしょう。

Dockerはコンテナ仮想化技術のうち,Linuxコンテナを用いています。Linuxコンテナは,Linuxカーネルの名前空間の機能により,プロセスをグループ化して,コンテナという隔離された空間を作成します。名前空間とは,ホスト名,プロセスID,ユーザID,ネットワークインタフェース,ルーティングテーブルなどのカーネルが持つリソースを隔離するためのLinuxカーネルの機能です。つまりコンテナの実体はプロセスグループであり,ハードウェアをエミュレートするVMVirtual Machine仮想マシン)型の仮想化技術とはしくみが大きく異なります。

コンテナを用いることにより,アプリケーション単位で隔離された環境を作成できます。したがって,複数のアプリケーションが同じソフトウェアに依存することを避けやすくなり,依存地獄を解決できます。

コンテナ仮想化技術について詳しくは,gihyo.jpの連載LXCで学ぶコンテナ入門を参照してください。

アプリケーションの実行環境を構築し,配布する

Dockerはアプリケーションの実行環境を丸ごとイメージとして構築し,構築したイメージを配布できます。構築したイメージは,Dockerの動作している環境であればどこでも実行できます。

ポイントは,実行環境を丸ごとイメージとして構築しているところです。Perlの例を再び用いると,Cartonが管理するCPANモジュール以外に,CPANモジュールが依存しているC言語ライブラリなどの環境もまとめて1つのイメージに閉じ込めるという発想です。Dockerは,実行環境を丸ごとイメージとして構築するということと,先述したイメージをコンテナとして実行するという2点の工夫により,環境に依存せずにアプリケーションを実行できるようにしています。

さらに,構築したイメージを配布するためのプラットフォームとして,Docker Hubがあります。Docker HubにDockerイメージを登録しておくと,誰もがそのDockerイメージを再利用できます。Docker HubはWeb上に公開されたSaaSSoftware as a Service)型のシステムです。プライベートな環境でDockerイメージを配布するためにはDistributionを用います。

Dockerの基本的な使い方

本節では,Dockerの具体的な使い方を紹介します。Dockerにはさまざまな機能がありますが,常用する機能はさほど多くありません。ここでは,筆者がよく使用する機能を重点的に解説します。

Dockerの使い方の流れ

Dockerの使い方の流れの基本は以下になります。

  • ① Dockerイメージの取得または構築
  • ② Dockerコンテナの起動
  • ③ Dockerコンテナの停止・削除

順に見ていきます。

Dockerイメージの取得

まず,Dockerイメージを取得する方法について説明します。

Docker Hubから構築済みのイメージを取得するには,docker pullコマンドを使います。たとえば次のコマンドにより,MySQLのイメージを取得します。

mysqlイメージをダウンロード

$ docker pull mysql

著者プロフィール

坪内佑樹(つぼうちゆうき)

京都出身京都在住。2013年に株式会社はてなに入社。

WebオペレーションエンジニアとしてMackerel,はてなブログを始めとしたWebサービスのサーバ・ネットワーク構築と運用を担当する。

計算機システムのしくみと性能,サーバオペレーションの自動化について関心がある。

Twitter:@y_uuk1

Blog:http://yuuki.hatenablog.com

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