テストリーダへの足がかり,最初の一歩

第6回 テスト設計(後編)

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

【今回の登場人物】

大塚先輩:
入社10年目。5年前に柏田マネジャーと一緒にソフトウェアテスト事業を立ち上げた。カメラが趣味で,暇さえあれば写真を撮りに出かける。

中山君:
入社5年目。本連載の主人公。入社以来ソフトウェアテスト一筋で経験を積んできた。そろそろ大きい仕事をしたいと考えている。

小川君:
入社2年目。新人研修後,その有望さから半年間顧客先に常駐。テスト業務の他,設計作業も経験を積んできた。趣味はベースで,定期的に仲間とライブを行うなど仕事と趣味を両立している。

新しいメンバー

テスト設計の成果物をテストケースの雛形と解釈した中山君。でき上がったもの前回参照)を大塚先輩に持って行くと……。

大塚先輩:
中山君のチームに今年2年目の小川君を入れようと思っているけど,小川君を知ってるかい?
中山君:
いえ,知りません。今までどのチームにいたんですか?
大塚先輩:
お客様先常駐のSUBARUプロジェクトだよ。
中山君:
あの噂に聞く……。大変なプロジェクトにいたんですね。
大塚先輩:
そうだ。いろいろと経験してきたみたいだけど,中山君もしっかりと小川君を指導して欲しい。
中山君:
わかりました。

リーダとして部下を指導するのは,初めてです。身が引き締まる思いです。

大塚先輩は内線電話で小川君を呼びました。3分程度して,コンコンとドアを叩く音が聞こえました。その後に爽やかな青年が入ってきました。さっそく大塚先輩が小川君を紹介してくれます。

話によると,その年の新人では特に優秀で,新人研修が終わったらすぐに最前線に駆り出されたとのこと。そういえば,どことなく若々しさの中に自信があふれているように見えます。

小川君:
小川です。今までSUBARUプロジェクトにいました。詳細設計からシステムテストまで一通り経験いたしました。よろしくお願いします。
中山君:
中山です。SAKIGAKEプロジェクトのテストリーダをやっています。こちらこそよろしくお願いします。
大塚先輩:
小川君,急ぎの仕事を抱えている?
小川君:
いえ,今は引き継ぎ中なので大丈夫です。
大塚先輩:
これからテスト設計のレビューなんだ。せっかくだから一緒にいてもらおう。
小川君:
わかりました。ではノートなど用意する必要がありますね。一旦席にもどって準備してきますのでしばらくお待ちいただけますか?

テスト計画を見直す

小川君は5分程度で戻ってきました。大塚先輩は外部の意見を取り入れるという狙いで,まず小川君に話を振ることにしました。

大塚先輩:
さっそくだけど,小川君。このテスト設計を見て欲しいんだけど。
小川君:
はい,わかりました。え~と,このホワイトボードを使ってもいいですか?

小川君はすっと立ち上がり,自前のマーカーを手に持ち,ホワイトボードの前にたちました。

小川君:
中山さんは,今回のシステムテスト全体をこのように考えているんですよね。

と,図1のマインドマップを書き始めました。

図1 ホワイトボードに書き始めたマインドマップ

図1 ホワイトボードに書き始めたマインドマップ

大塚先輩:
ほお,小川君はマインドマップを描けるのかね。
小川君:
はい,前のプロジェクトで使っていました。

中山君は目を白黒しています。マインドマップという言葉を聞いたことはあっても,読書記録をつけるものだと思っていて,仕事に使うとは考えたこともありませんでした。

小川君:
システムテストを大きく分けると3つになりますね。この3つで十分ですか?
中山君:
大塚先輩がレビューしていていただいたテスト計画では,業務シナリオテスト・性能テスト・セキュリティテストの3つをやることにしてます。
大塚先輩:
テスト分析が終わった段階で見直す必要は無いかな?
中山君:
えっ,どういうことですか?
大塚先輩:
テスト計画を書くときに,すべての情報を持っているわけではないよね。限られた情報に基づいて書いているわけだ。当然,工程が進むにつれ情報量が増えてくると,見なさなければいけないだろう。
中山君:
確かにそうですね。

テスト計画の見直し

テスト計画を作るときには,さまざまな情報を収集し検討を尽くして書きます。ですから,それほど後になって見直す必要はないと考えてしまうかもしれません。しかし,スケジュールが進むにつれ,プロジェクトの実態が見えてきて,さまざまな情報が入ってくると,見直しが必要になる場合があります。もし,見直しが必要ないとしても,見直しが必要ないことを確認するために,見直しという作業自体は行う必要があります。

特にテストは開発の最終工程にあたり,プロジェクトの歪みをすべて引き取る工程になります。計画段階では知らされていなかった実態を知ることにより,方向修正が必要になることも少なくありません。

テスト計画を見直さなければならない可能性が常にあることを,リーダは意識しておくべきです。

著者プロフィール

鈴木三紀夫(すずき みきお)

1992年,(株)東洋情報システム(現TIS(株))に入社。複数のエンタープライズ系システムの開発に携わり,現在は社内のソフトウェアテストに関するコンサルタントとして活動中。ASTER理事,JaSST実行委員,JSTQB技術委員,SQiPステアリング委員 他。

著書


池田暁(いけだ あきら)

2002年日立通信システム(現日立情報通信エンジニアリング)に入社。設計,ソフトウェア品質保証業務を経て,現在は開発に関する設計/テストツールの導入や,プロセス改善に関する業務に従事。ASTER理事,JaSST実行委員,品質管理学会・ACM正会員。

著書

コメント

コメントの記入