zshで究極のオペレーションを

第5回 zshの誇る花形機能“補完”

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今回はzshの誇る機能の花形とも言える補完機能について紹介しよう。zshの補完は強大で,例示した設定の意味を略さず書こうとするとそれだけでになってしまう(約150ページ分)ので,細かい意味は読者の推測にまかせて,少し変えて便利にカスタマイズする場合のヒントを交えながら解説を進めたい。

補完の有効化

初期化ファイル,あるいはコマンドラインで,以下を入力することでzshのすぐれた補完機能が有効化される。

autoload -U compinit && compinit

補完に関するキー割り当てはいくつもあるが,最低限うまく利用するために以下の2つのキーバインドをまず覚えておけばよいだろう。

  • Tab (C-i) - expand-or-complete
    補完の実行。
  • ESC C-d (または行末のみ C-d) - list-choices (delete-char-or-list)
    マッチする候補の一覧表示。

ちなみに,正確には補完システムの機能ではないが,⁠標準では)ファイル名のみに働く以下のキーも覚えておくと有用である。

  • C-x* - expand-word
    カーソル位置に含まれる単語をシェルの展開規則によってその場で展開。
  • C-xg - list-expand
    カーソル位置に含まれる単語がどのように展開されるかを一覧表示。

Tabによる補完とESC C-dによる候補表示を使いながら標準装備されているきめ細やかな補完を確認してみよう。ただし,標準でONになっているシェルオプションautolistによってTab補完時,同時に候補一覧表示もなされる。普段OFFにしている場合で候補一覧を明示的に得る場合はESC C-dを利用することになる。 以下に,代表的な補完システムの挙動を示す。なお実行例はサンプル zshrcをロードした状態を前提としている部分がある。

1.ファイル名補完

他のシェルにもある最も基本的なファイル名補完は,基本的にはファイル名の先頭部分だけの入力を完全なものに補う機能だが,zshの場合は入力をさらに節約できる機能が備わっている。

% cd /usTab
% cd /usr/                      (/us で始まるファイル名に)

% cd /u/l/a/coTab
% cd /usr/local/apache/conf/    (/ の前に * を補ったパターンで補完)

このように,スラッシュを区切りとして直前に*があると見なして補完することで,一意に定まるパス名を極力短く指定することができる。この機能はEmacsのファイル名入力にも実装されている~/.emacsなどで (partial-completion-mode t)している場合)ので既になじんでいる人も多かろう。

tcshで `set complete=enhance' している場合も同様の部分補完ができる。tcshではピリオド,ハイフン,アンダースコアを区切りとして同様の補完をしたり,大文字と小文字を同一視して補完したりするが,zshでこれを行なうには以下のようにすればよい。

zstyle ':completion:*' matcher-list 'm:{a-zA-Z}={A-Za-z} r:|[-_.]=**'

これは,⁠a-zをそれぞれ対応するA-Zに置き換えて,A-Zもそれぞれ対応するa-zに置き換えて補完してみるのと同時に,右側にハイフンかアンダースコアかピリオドが来る場所には * を補ったかのように補完してみる」ことを指示するもので,これにより以下のような補完挙動が得られる。

% ls -F
extra/  httpd.conf  magic  mime.types  original/
% less m.tTab
% less mime.types

タイプ数削減の大きな味方だ。ところが,やみくもに部分補完を行なう文字を増やすと逆に不便になる場合もある。例を示そう。

% ls
highperformance-std.conf        magic
highperformance.conf            mime.types
httpd-std.conf                  ssl-std.conf
httpd.conf                      ssl.conf

このようなファイルがある場合にhttpd.confを編集しようと以下のように補完すると期待どおりにいかない。

% vi httpd.Tab
% vi httpd-std.conf

これは,`httpd.' までタイプすればファイル名が一意に定まると思ってそこまでしっかり打ったのに,Tabを押したら想定外の httpd-std.conf が出てがっかり,という例である。zshでは「一意に決まるファイルがあるかもしれないから,まずそのまま補完せよ」と設定しておくこともできる。これには先のzstyle例を以下のように変更する。

zstyle ':completion:*' matcher-list '' 'm:{a-zA-Z}={A-Za-z} r:|[-_.]=**'

中央付近に足した '' がそれで,マッチング規則の変更をまずなし''でやってみて,それでマッチするものがなければ次の引数の 'm:{a-zA-Z}={A-Za-z} r:|[-_.]=**' という規則適用でやれ,ということを意味している。

もうひとつ例を欲張っておこう。⁠大文字小文字を同一視」をONにしたときも,検索文字列としてわざわざ大文字をあらかじめ入れた場合は大文字にだけマッチして欲しい。その場合以下のよう設定が有用となる(大文字小文字に関する部分のみ記述)⁠

zstyle ':completion:*' matcher-list '' 'm:{a-z}={A-Z}' '+m:{A-Z}={a-z}'

これは,以下のようなルール記述を意味する。

  • まず入力された文字そのままで補完してみて
  • それでマッチするものがなければ,小文字を大文字に変えつつ補完してみて
  • それでもマッチするものがなければ,大文字を小文字に変えるルールを追加(`+')して補完してみよ

以上文字の種別を変えて補完を試みる設定を示したが,これはファイル名補完に限らずその他の補完すべてでも有効化させられる。

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