[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第十九回「地元限定の逸品」

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ゼリーフライを知っていますか?

自転車にまたがってあちこち出かけると,地元ならではの食べ物や地元ならではの食べ方に出会う。

ネーミングが意外だったり,おもわず引いてしまうような食材だったり,「美味しいですか」と聞かれて,口の中でもごもごするしかない食べ方だったりする。

ゼリーフライは旨い。
そしてもう一品,フライも旨い。

和田竜著『のぼうの城』を読んで,はじめて忍城の存在を知った。豊臣秀吉の関東攻めの時に唯一落城しなかった城だということもさることながら,沼沢地を埋め立てず,そのまま沼の中に城を築いていたということにぐっと心を惹かれた。

更に更に,この城を攻略したのが石田三成で,湖面に浮いた城に対して大将秀吉張りの水攻めを仕掛けたというのだから面白い。

忍城址は水城公園として残っているし,天守閣(は,本来は無かったようだけど)も郷土資料館として再建されている。三成の築いた石田堤も一部保存されているという。

歴史ごとは大好きなので,同好の士を誘って出かけた。

そこで出会ったのが,ゼリーフライとフライである。

行田市をあげて売り出し中のアイドルらしく,市内のあちこちに点在するフライ・ゼリーフライ取扱店を載せたフライマップも配布されている。

まずは車を停めた駐車場に隣接する,食べ物屋……ではないお土産物屋の一画で受注生産してくれるゼリーフライを食した。

まあ,なんというか,ソースにどっぷりと浸した柔らかいコロッケ。

生地に豆腐が練り込んであり,ふわっとしていて,なんとなくゼリーを思わせるからゼリーフライ。

という説と,形が昔の銭に似ているので,銭フライと言っていたのが,ゼニーフライ,ゼリーフライとなった,という説があるそうな。

漢字で書くと「銭富来」。ほんとかね。

まあ,由来はともかく,一個数十円だし,味が濃いので少量で口が満足するから,ちょっと小腹が空いたときやおやつに丁度いい。お土産に買って帰ったけど,やっぱり揚げたての方が旨い。こういうものは出かけていって食べなくてはいかんのだ。

では,フライとは何か。

もったいつけずにいこう。

薄いクレープ状の生地の間に,ドロッとしたソース味の豚肉やキャベツを炒めた具を挟んで半月状に折り畳んだもの,だ。

こちらは味が濃い上,ボリュームたっぷり。プレーンなタイプでも大きな皿からはみ出さんばかりに広がっている。その存在感は圧巻だ。自転車で行動中だから平らげることが出来たのだと思う。

同行者は数百円というワンコイン以下の値段から分量を甘く見つもり,焼きそば入りなぞという無謀な選択をして,目を白黒,腹を丸々させていた。

地元の高校生達は,一人で2枚くらい放課後のおやつとしてぺろりと平らげていくとのこと。この値段でこのボリューム。こんな素敵な食べ物があるというのは,ぺろりと平らげる胃袋と共にうらやましい限りだ。

ゼリーフライとフライ。

続けて食べれば一日中体からソースのにおいが立ち上る。

ああ,ソースのにおいが思い出されて,また食べたくなってきたなあ。

著者プロフィール

杠聡(ゆずりはさとし)

イラストレーター,ライター。東京都日野市在住。技術評論社刊の単行本カバーなど広告,出版でのお仕事をベースに,自転車旅行で出会った風景や人を題材にした作品づくりを続けています。

URLhttp://www.yuzuriha.com