最速の仕事術「Getting Things Done(GTD)」の提唱者David Allenさんへの独占インタビューの2回目です。
前回はウォームアップもかねてGTDの周囲から質問をはじめて,David Allenさんの考える私たちの「思考」の秘密という話題へと進みましたが,ここでいったん話を引き戻して,GTD初心者にありがちな質問を聞いてみました。
それは私がGTDを始めたときにも感じていた"「頭が空な状態」にするにはどれだけのことを書き出さないといけないのか?"という疑問です。
どこまで頭をクリアーにしないといけない?
堀(以下,MH):
「(技術評論社発行『Life Hacks PRESS』を指し示し)これがライフハックの専門誌のLife Hacks PRESSで,多分ライフハックを日本に初めて紹介した雑誌だったと覚えています。1冊目がGTDの特集で,つい先日発行された2冊目では時間管理を特集しています。私もここで執筆しているのですが,自分自身がすべてを上手にできているという自信なんてありませんから,何がうまくいく方法なのか,さまざまな模索しながら書いていたんです」
David Allen(以下,DA):
「私自身,GTDの本を書いていたときは,こんなことを思いつくのは自分が地球上で最後の人間だと思っていたよ。きっと大きな会社の頭のいい人たちは,こんなことはすでに知っているだろうと思ったものさ。しかし実はそうした人たちが最もこうした手法に飢えていたんだ」
MH:
「ではGTDを必要としていて,初めて実践する人へのアドバイスについて質問させてください。GTDを実践できるようになるためには,GTDの手法を習慣化することが必要だと思うのですが,初心者にとって最も難しい,重要な習慣はなんだとお考えですか?」
DA:
「本を読んだだけの人が今やっていることに付け加えて実践できることはいくつかあると思う。まずは何よりも,頭のなかにあるものをもっとたくさん書くようにするという習慣だ。GTDでは頭のなかで思いついた,その場でできないコミットメントはすべて書き出さないといけない。それが第一歩なんだよ」
MH:
「でも初心者にとって必ずしも自明でないのは,『何を,どこまで書き出さないといけないのか』ということですよね?」
DA:
「クリアーになるまで,すべてだよ」
MH:
「そのクリアーの状態についてなのですが,よく悩むのが『どれだけ書き出せば,頭が空になるのか』ということだと思うのです。極端な例を持ち出すと『コンピュータの電源を入れる』とかそういったマイナーなことまで,思いついたことは全部書かなきければいけないのでしょうか?」
DA:
「まず理解しないといけないのは,君の脳が気になって仕方がないものというのは,君の周囲にあるものが念を押してくれないものだということだ」
「たとえば人生には『未完了』なものなんていくらでもあるけれども,周囲のものが思い出させてくれると信頼しているものに関しては,君は気に留めていないはずだ」
Kathryn Allen(Davidの奥様):
「洗濯物をしなきゃとか…そういうたぐいのものとかね」
DA:
「そうそう。例えばキャサリンと私がスーパーに買い物に行く時に,『買い物リスト』をわざわざ作ったりするようなことはないのさ。ただ二人で店にいって,品物が並んだ棚の横を歩けば,品物自体がリマインダになってくれて何を買えばいいのか思い出させてくれるんだ。私たちが今ここに座って『ああ,あれを買わなきゃ』なんて気に病んでいないのは,店に行きさえすれば店の棚がそれを思い出させてくれると,棚を信頼しているからなんだ」
「コツとなるのは,同じことが2度以上気になった場合だ。なにかが気になるのが一度きりだったら,思考をはんすうしているだけかもしれない。『あれやろうなあ,これやろうかな』と頭の中で散歩をしているだけという場合だ」
「でも同じことを2度考えたなら,それは今はまだ完了していないことについて『私は○○をしなければいけない,したいと思っている,する必要がある』と気にしているというシグナルで,それが私のいうオープン・ループなんだよ。脳が『きみ,これをやると約束したよね』『これを実行すると決めたよね』という具合に心理的なリマインダを繰り返し君自身に向かって発している状態なんだ」
「あそこの壁の色や,あそこに立っている人についてとか,この建物について考えようとしているときは,意識的になにかに焦点をあてた思考をしているわけだけれども,オープンループが生じている状態というのはそれとは決定的に違うものだ。言うなれば,建物について集中して考えようとしている最中に『くそっ,そういえばパンを買わなきゃいけないんだった』と思いつくような,そんな考え事のことを指しているんだよ」
「集中しようと思っていたのに,横からやってきて僕の集中を奪ってしまうもの。これがオープン・ループというもので,こうした考えがゼロになるまで,すべてをキャプチャーすることができればそれで十分なんだ」

