こんにちは。“グラフィックファシリテーター”のやまざきゆにこ,です。議論を絵にする仕事をしていますが,今回は「描こうと思っても,描けないんです!」という話をします。
「筆が,進まない」
「何でも絵にしてくれるんでしょ」と言われることがあります。しかし,残念ながら「“必ず”絵にします」とお約束できません。なぜなら,「“どーしても”筆が進まないっ!」というときがあるんです。
たとえば第2回で紹介した“カスタマー”を描く。毎回毎回,最初からいきなりスラスラと描けるわけではないんです。
- 「“カスタマー”に我々が提供できる価値とは…」
- 「“ユーザー”視点でもっと良質なサービスを…」
そんな言葉で終始する議論のとき,たぶん,私のうしろ姿はこんな感じです。

筆を持つ手が動ず,壁の前で固まってます。つまり,何も描き出せていません。さて,なぜでしょう?
“耳”に聞こえてきた「“カスタマー”…」「“ユーザー”…」という言葉を,私の“筆先”が「どんな髪型で,どんな雰囲気の人かな」「どんな生活を送っている人かな」と考えて,《絵》に変換していくわけですが…,

“カスタマー”や“ユーザー”をもっと具体的に想起させる情報が議論の場にそれ以上出てこないと,「え?それは若いカップル?それとも老夫婦?それとも???」と“筆”が迷って,固まってしまっている,というわけです。
格闘相手は 《ぼんやりワード》
「筆が進まない」理由には,いくつかパターンがあります。その1つが“カスタマー”や“ユーザー”のように,聞き手によって《いろいろな捉え方ができてしまう言葉》を多用する議論のときです。
他にも,例をあげてみると,
- 「“顧客ニーズ”が“多様化”していて…」,
- 「個社の“課題”に最適な“ソリューション”を提案するには…」
- 「“マーケット”の生の声をもっと拾っていかないと…」
などなど。

もし,「“小学生”が通学時にこの商品を使うと…」という言葉なら悩むことなく描けます。でも「“カスタマー”に当社製品を使ってもらうには…」という言葉のままでは,まだ《ぼんやり》していて,すぐには筆が動かないんです。
「あの人の話,なんだか横文字ばっかりでわかりにくいな」なんて経験,ありませんか?マーケット,ニーズ,ポテンシャル,顧客課題,価値提供…。議論の場ではとても便利で,私も無意識のうちに使っています。でもじつはみんなが《曖昧な認識のまま使っている言葉》が,《絵》にするという行為にはとてもやっかいな相手なんです。
"つるつる頭"

議論でそれほど重要な言葉でなければ,私もこだわりません。“カスタマー”と聞いても,“つるつる頭”に描いて先に進みます。でも,その言葉が重要なポイントであった場合,曖昧なまま議論を進めていくと,後に必ず《ズレ》を生じて,議論が進まなくなったり,堂々巡りになってしまったり。
配布資料(文字)と発言(音)だけの会議の場なら,気にならなかったことでも,《絵》に変換するという行為は,嫌でもこうした《曖昧なイメージのまま使われている便利な言葉》に,つまづくんです。語られている言葉が《ぼんやり》したままだと,「どう描こうか?」と,どうしても筆が止まってしまいます。
「筆が進まない」とき,そこには必ず《理由》があります。筆が迷う多くの場合は,こんな《ぼんやりワード》と出あったとき。だから,その「迷った」箇所をきちんと伝えるということも,グラフィックファシリテーションの1つの業務として行なっています。


