モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第3回 「降参~!描けませーん」その理由

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

こんにちは。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこ,です。議論を絵にする仕事をしていますが,今回は「描こうと思っても,描けないんです!」という話をします。

「筆が,進まない」

「何でも絵にしてくれるんでしょ」と言われることがあります。しかし,残念ながら「“必ず絵にします」とお約束できません。なぜなら,「“どーしても筆が進まないっ!」というときがあるんです。

たとえば第2回で紹介したカスタマーを描く。毎回毎回,最初からいきなりスラスラと描けるわけではないんです。

  • 「“カスタマーに我々が提供できる価値とは…」
  • 「“ユーザー視点でもっと良質なサービスを…」

そんな言葉で終始する議論のとき,たぶん,私のうしろ姿はこんな感じです。

筆を持つ手が動ず,壁の前で固まってます。つまり,何も描き出せていません。さて,なぜでしょう?

“耳に聞こえてきた「“カスタマー…」「“ユーザー…」という言葉を,私の筆先「どんな髪型で,どんな雰囲気の人かな」「どんな生活を送っている人かな」と考えて,《絵》に変換していくわけですが…,

カスタマーユーザーをもっと具体的に想起させる情報が議論の場にそれ以上出てこないと,「え?それは若いカップル?それとも老夫婦?それとも???」が迷って,固まってしまっている,というわけです。

格闘相手は 《ぼんやりワード》

「筆が進まない」理由には,いくつかパターンがあります。その1つがカスタマーユーザーのように,聞き手によって《いろいろな捉え方ができてしまう言葉》を多用する議論のときです。

他にも,例をあげてみると,

  • 「“顧客ニーズ多様化していて…」,
  • 「個社の課題に最適なソリューションを提案するには…」
  • 「“マーケットの生の声をもっと拾っていかないと…」

などなど。

もし,「“小学生が通学時にこの商品を使うと…」という言葉なら悩むことなく描けます。でも「“カスタマーに当社製品を使ってもらうには…」という言葉のままでは,まだ《ぼんやり》していて,すぐには筆が動かないんです。

「あの人の話,なんだか横文字ばっかりでわかりにくいな」なんて経験,ありませんか?マーケット,ニーズ,ポテンシャル,顧客課題,価値提供…。議論の場ではとても便利で,私も無意識のうちに使っています。でもじつはみんなが《曖昧な認識のまま使っている言葉》が,《絵》にするという行為にはとてもやっかいな相手なんです。

"つるつる頭"

議論でそれほど重要な言葉でなければ,私もこだわりません。カスタマーと聞いても,つるつる頭に描いて先に進みます。でも,その言葉が重要なポイントであった場合,曖昧なまま議論を進めていくと,後に必ず《ズレ》を生じて議論が進まなくなったり,堂々巡りになってしまったり。

配布資料(文字)と発言(音)だけの会議の場なら,気にならなかったことでも,《絵》に変換するという行為は,嫌でもこうした《曖昧なイメージのまま使われている便利な言葉》に,つまづくんです。語られている言葉が《ぼんやり》したままだと,「どう描こうか?」と,どうしても筆が止まってしまいます。

「筆が進まない」とき,そこには必ず《理由》があります。筆が迷う多くの場合は,こんな《ぼんやりワード》と出あったとき。だから,その「迷った」箇所をきちんと伝えるということも,グラフィックファシリテーションの1つの業務として行なっています。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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コメント

  • 会議は踊る

    あるある!こういうことって!

    議論がかみ合ってないことって、自分の経験でもよくあります。

    抽象的な言葉のやり取りで、具体的な中身が議論されていなかったり、様々なネタのお披露目合戦になったり、こんなことがあった あんなことがあった と果てしもなく話しが拡散していったり。

    これを読んで、ああ、あのイライラはこういうことだったんだ、と納得しました。

    会議の生産性とか、ファシリテーターの役割とかの本も最近、多いけれど、まともな議論をすることってなかなか難しいことですよね。

    私も日常的に感じていることです。

    Commented : #2  くろめがね (2007/08/13, 17:31)

  • 抽象と具象

    これ、とっても面白いですね!

    例えば顧客を「M1層」なんていうくくり方で呼ぶことが
    ありますよね。でも、店頭で実際に商品を買うのは
    「M1層」ではなく、「鈴木太郎さん」だったり
    「田中一郎さん」という、具体的な人っつうわけです。
    そういう具体的な顔をイメージせず、
    抽象論だけで議論をするのは危険なんですよね。

    ゆにさんがビジュアル化できない会議は、
    机上の空論にとどまっていて、
    具体的なレベルへの落とし込みができてない。
    そういうベンチマークになっているわけですねえ!

    Commented : #1  白谷 (2007/08/03, 12:28)

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