モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第45回 未来の「スマートハウス」に暮らすのは「メタボな人間」?! [ネガポジ設計]しないと,じつは不幸せな未来を語り合っている(会議あるある)

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明るい未来を語っているはずが,
ちょっと困った会議の現場[GFあるある]

グラフィックファシリテーター,やまざきゆにこです。今回は,多くの会議で共通して起きている⁠ちょっと困った現象⁠をご紹介します。みなさんの会議室でも,次のような絵が描けてしまう議論を,知らず知らずのうちにしてはいませんか。

⁠GFあるある①]
⁠スマートハウス」を描いていると,人間がどんどん「メタボ」になる絵

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「スマートハウス」⁠スマートシティ」⁠スマートコミュニティ」⁠未来を語りあう会議からよく聴こえてくる言葉です。本来「スマート」の意味は「賢い」です。⁠賢い機能」のおかげで,⁠人は安心して効率よくエコな暮らし」ができるという話です。ですがそれを絵にしていくと,どうも「人間は動かなくてもいい暮らし」が描けてきます。家や街は健康的で贅肉のない「スリム」な姿に描けていくのに,人間はどんどん「メタボ」な身体に描けてくる。

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  • 「この未来は人間にとって本当に幸せ?」
  • 「これって本当に心から望む未来のありたい姿?」

ここ数年,目の前の課題を議論するのではなく,⁠まずは未来のありたい姿を語り合おう」という場が,企業でも行政でも増えています。しかし,技術革新や機能の進化を語るほど,絵巻物の上に度々「描けてしまう」のは「人間がダメになっていく」という絵です。

次のような絵もよく描くようになりました。⁠ウエラブル端末が健康管理をしてくれる」⁠車が家に近づくとエアコンが自動で快適な温度を設定しておいてくれる」といった「人が健康で快適に生活できる未来」の話から描ける絵です。

⁠GFあるある②]
知能をもった「インテリジェント」な機能に囲まれて,人間がどんどん「頭を使わなくなる」

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⁠頭を使ってどんどん賢くなっていく」のは電子機器たち。人間はどんどん「何も考えなくていい」姿に描けてきます。もはや五感を働かせる必要すらない絵になっています。

「理想の地域の暮らし」「豊かなライフスタイル」といった未来を語り合うとき,⁠人を主役に」⁠人間中心設計で」デザインしようという新しい試みが増えています。その背景の一つには「技術革新や進化した機能から発想する,これまでの議論の方法ではイノベーションは生まれない」という危機感があります。そこで最近よく聴く「人間中心設計」⁠ユーザーエクスペリエンス」⁠デザイン思考」といった手法で,⁠良い未来」を語っていたはずなのですが,度々「描けてしまう」のが上の絵です。この絵を見ると次のように思えてきませんか?

  • 「これのどこが人間中心設計?!」
  • 「賢くなっていくのは…だれ?」
  • 「やっぱり技術が主役に見える…」

心から望む未来は「ネガティブ」な未来から語り合わないと

多くの会議室では,じぶんたちがまさか「人間がダメになっていく」未来を語りあっているとは思っていません。しかし同時に「ビジョンがぼんやりしている」⁠みんなもどこか腹落ちしてない」といった共通のモヤモヤを感じています。

  • 「ビジョン策定会議を重ねてきたけれど,まだモヤっとしている」
  • 「一人ひとりがイメージしている未来が違う」
  • 「言葉ではビジョンを語っているけれど,目指す未来がはっきり見えてこない」

なぜ「モヤっとしている」のか,⁠腹落ちしない」のか。そうした会議を見直してみると,その原因は共通して「問い」にありました。

「ポジティブな問い」かけで「良い未来の話」ばかりをしていました。

これまで第40~44回も言ってきましたが,メンバー一人ひとりが自ら未来行動を起こすために大事なのは,⁠ネガティブな気持ちを吐き出す」ところから議論を始めることです。話し合いたいことは同じ「良い未来」なのですが,ポイントは[ネガポジ設計]です。

「良い未来」を語り合う前に,⁠ネガティブな気持ち」を語り合えるような問いかけを挟むのです。劇的にアウトプットが変わります。実例を1つご紹介します。

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この問1は,ある企業の「未来検討会」という会議の最初の問いです。この問いから,当日,どんな会話がされるか。だいたい想像がつきませんか。

  • 「センシング技術で常に見守り。安心安全。犯罪を未然に防ぐ。災害発生を予知」
  • 「自宅でも海外に居てもパソコン1つで仕事ができる。通勤ラッシュとも無縁な暮らしを実現」
  • 「スマートハウスが,電気代を節約し,快適な空調を設定してくれる」
  • etc.

「豊かなライフスタイルとは?」とか「理想の未来とは?」といった「明るい未来」を議論させる「ポジティブな問い」から聞こえてくるのは,どうしてもどこか新聞やテレビで聴いたことのある「ありきたりな未来」になりがちです。

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そこで,次の「未来検討会」では,この問1の前に,次のような[ネガ]を語り合う時間を設けました。

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もう1つ,次のような問いも考えました。

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実際このときは,この後者を問1に採用しました。

[ネガポジ設計]するうえで大事なポイントは,普段の会議でするような「意見」を交換するのではなく,もっと曖昧な,普段は言葉にしたこともないような,⁠モヤモヤした気持ち」を吐き出してもらうこと。

「ネガ」と言うと,よく言われるのは「わたしたちもネガティブなこと=社会課題から話し合っています」⁠けれど「課題」と言った途端,多くは顕在化している問題を語りがちです。これまでいくら「課題」を話し合っても劇的な解決策が見つからなかったとき,普段の会議では語りあわない「モヤモヤした気持ち」を吐露する曖昧な会話の中に,本当の問題が見えてきます。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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