無関心な現場で始める業務改善

第5回 自分の業務を書けますか,説明できますか?

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おおよその業務改善の目的・目標などが定まり,改善の対象範囲・部門,初期の中核(コア)メンバーも決まったら,次にやることは業務の実態はどうなっているのか,つまり「己を知る」ということです。

最初に,ドキュメントがちゃんとあるかを調べます。ここで言うドキュメントとは,⁠規程⁠⁠マニュアル⁠などです。ないところは少ないでしょうが,これが後々,業務改善を進めていくと,意外な鍵になる場合が少なくありません。

規程を調べる

まず規程ですが,押さえておくべきなのは,

  • 「業務分掌に関する規程」
  • 「組織に関する規程」
  • 「決裁権限に関する規程」

の3つです。規程はほかにもありますが,最低限,この3つが初期段階では重要です。この3つは,企業によっては1つの規程に取りまとめられていたり,⁠決裁,権限に関する規程」「稟議規程」などのほかの規程に包括されている場合もあります。

「業務分掌」には,一般に部門ごとに何の業務を行うかが明記されています。言い換えれば,仕事の機能定義が内容と範囲として定められているものです。

「組織に関する規程」は,組織構造・組織(部門)の名称・役割が明記されています。

「決裁権限に関する規程」には,承認を誰が行うか,組織のヒエラルキーとして定まっていなければいけないことが書かれています。

マニュアルを調べる

会社によっては,⁠業務標準」などのマニュアルがあります。開発部門では開発用の「設計標準」「技術標準」⁠管理部門では「事務標準」などです。

これらのマニュアルは会社により,標準部門や品質管理部門が管理をしている場合がありますが,部門ごとに管理をしている場合もあります。部門においては,さらに細かな業務の運用マニュアルなどがあります。

つじつまが合わないときのために,規程やマニュアルを調べておく

業務改善の⁠現状調査⁠⁠現状分析⁠において,現状業務プロセスを業務フローとしてきちんと書いていくと,次のようなことがわかってきます。

  • 規程とのミスマッチがある(業務分掌や組織規程と異なる仕事をしている)
  • 承認,決裁が曖昧,あるいはきちんとされていない
  • マニュアルどおりに仕事をしていない(マニュアルの形骸化,更新されていない)

これは,なにも業務改善の調査や分析に限ったことではなく,ISOや内部統制でも同じ場面によく出くわします。仕事のやり方が変更になっても,規程やマニュアルが改訂されずにそのままだったり,業務フローも最初に作ったままのそれっきりでメンテナンスされずに時間が経ってしまったなどです。

業務改善のほとんどは,業務プロセスの変更を多く伴います。プロセスを変更すると,組織の役割や権限も同時に変わることが多く,最終的には規程やマニュアルに反映することが必要です。

したがって,まずは⁠現状調査⁠に入る前にきちんと,今のプロセスとミスマッチしているかもしれない「規程」「マニュアル」を,事前にしっかりと調べておくことが求められます。

さて,ここまでは無関心な現場を巻き込まなくても,事務局や改善推進担当者だけでもなんとかなります。問題はその次で,⁠実態はどうなのか?」ということです。

ヒアリングやディスカッションはやらない

通常,コンサルティング会社が行う⁠現状調査⁠は,⁠ヒアリング」形式で行う,あるいはメンバーを集めて「ディスカッション」をしながら整理をしていくなどの手法や形態がとられます。良い悪いは別として,このやり方はあくまでも社外の中立的な人が入るので,ある程度成り立ちますが,社内だけで行おうとするとインタビュアーと現場担当者の利害関係が災いし,ホンネが出てこない場合も少なくありません。

個別のヒアリングでは,ボロクソ不満が出てくるけれども,自分はちゃんとやっているという主義主張で終わる。全体のディスカッションでは,他人や上司の顔色を伺いながら言葉を選んで発言することもあり,やはりホンネがなかなか出てこない。もっともらしいことを言う人,冷めた目で「別に~」と傍観している人,ひたすら文句をぶちまける人など様々です。

「うちの会社はこんなことはないよ!」と言う人もいるでしょうが,無関心な現場では一筋縄ではいきません。批判者,傍観者は山ほどいるけど,当事者となる人がほとんどいない,改善意欲も問題意識も低い人たちは非協力的です。

「実態はどうなのか?」を検証しようとしても,ホンネが出てこないのでは,その結果は浅いものになります。

無関心な現場では業務改善に聞く耳も関心も持っていないので,社内メンバーへのヒアリングやディスカッションは,得策ではありません。

ハード&ソフト・アプローチ

改善は「継続性」が大事であると同時に,ずっとコアメンバーが旗を振り続けるわけにもいかないので,無関心な現場を自主的・主体的な現場に変えていくことが必要です。それを実際の改善活動を通じて行うことになります。

本来,時間が許すのであれば,まずは「関係性づくり」から始めるのが王道です。改善はきちんと対話をして,信頼関係を構築して,話し・相談し合える関係性ができてからとなります。連載第2回でお伝えした「ソフト・アプローチ」が必要となります。

しかし,関係性の構築には非常に時間がかかるので,関係性ができてから業務改善をしましょうなどとは,企業も世の中も待ってはくれません。そこで,やはり「ハード・アプローチ」「ソフト・アプローチ」を同時に進めることが必要となります。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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