業務改善の最初のキーとなる「見える化」ですが、「言える化」の環境がないと、組織としての“問題の顕在化”が機能しません。今回、お話をする“組織風土”は「言える化」に影響を与えるだけでなく、「無関心な現場」となる「言えない要因」を作り出します。企業不祥事などの温床となるのもまた組織風土です。
無関心以上の改善の妨げ=組織風土
第20回で「業務改善には特効薬はない」とお話したように、会社の組織風土、体質、価値観などはどれ1つとして同じところがないので、改善手法や方法論をまねるだけでは、うまくいきません。
これまでに「ハードとソフト」「見える化と言える化」といったキーワードをお伝えしたことを覚えていますか?忘れてしまった方は、第2回と第3回をご覧ください。
我々はコミュニケーションや組織風土を総括して、“ソフト”と読んでいます。組織風土改革について、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
「いいことだと思うけど、余計なことには巻き込まないでくれ」といった「無関心」な状態なら、これまでの記事で書いてきたように、それなりに仕掛けを作っていくことで、自発的な業務改善の動きを作り出すことは可能です。
問題はなぜ、無関心になってしまったかということです。無関心の引き金となっているものは、個人的な要因を除けば組織風土や企業体質です。
職場で見られる組織風土の一角
図1に組織風土が良くない職場のイメージを示します。目に見えない組織風土の縮図は、図1で示すように職場で目に見えるものとして出現します。「ギスギス職場」とでも名付けておきましょう。
皆さんの職場や社内を振り返ってみて、思い当たることはありますか?
このような職場で、トップから「生産性を高めるために業務改善に取り組め!」など言われても、このギスギス職場のイメージが脳裏を横切り、できれば関わりたくないと思うこともあるでしょう。仮に、問題だらけで業務改善が必要だとわかっていても、「まずは、このどうしようもない職場を何とかしてくれ!」と思うに違いありません。
「ギスギス職場」で始める業務改善
業務改善の前に、「改善に取り組むことができる風土にしないといけない」「改善が継続できる体質にしないといけない」「個人の意識改革をしないといけない」など、業務改善に取り組める組織風土のレベルまで持っていかなければならなくなります。これでは、業務改善をするのか、組織風土改革をするのかわからなくなってしまいますよね。
「ギスギス職場」に見られるように、組織・体質的な課題を抱えた現場では、足の引っ張り合いはごく当たり前、人事や組織ぐるみで「見て見ぬふり」がまかり通ります。「臭いものには蓋をする」ような組織風土の職場、会社において、「改善が必要だ!」と言うには、よほどの勇気と、相当の根回しや作戦がないとできません。トップの支援があるか、相当の影響力のある人からの情報発信がない限り、「改善が必要だ!」と言い出した本人が討ち死にすることは目に見えています。「上からつぶされる」羽目になります。
組織風土とコミュニケーション
組織風土はコミュニケーションと密接な関係があります。しかし、コミュニケーションと言っても、人により定義や解釈は様々です。図2をご覧ください。
図2ではコミュニケーションを、大きく「双方向コミュニケーション」と「上意下達型」に分けています。これらは組織の特性(自律分散型/階層型)によっても変わります。
また、新入社員教育などで「報連相」を学んだ方もいらっしゃるでしょうが、「報告」「連絡」「相談」が、それぞれ図2のどこに位置するのかを確認してみてください。
業務改善で必要なコミュニケーションは「相談」「協働」「創知(創造知恵)」であることは、もうおわかりのことでしょう。
コミュニケーションで伝わるもの
気を付けて見ていただきたいところが、「やり取りをして伝わるもの」の部分です。
「思い・信頼感」「志・エネルギー」「知恵」が伝わるコミュニケーションがとれる組織では、部門や立場を超えて一緒に考えて改善を行う、大きな共通の目的の達成のためにお互いに協力をするようになります。これが「双方向コミュニケーション」です。
上からの指示や命令にしたがって、下がこなすという「上意下達型」とは大きく異なります。コミュニケーションの質が上がることは、組織そのものが成長を遂げることです。業務改善の目指すところは、このような領域ではないでしょうか。
次回は、今回の続きとして、「業務改善を通じた場づくり・業務改善のための場づくり」ついてお話します。