確実に身につける!メモ術基本レッスン

第10回それでもメモが取れないときは

この連載もいよいよ最終回を迎えることになりました。

メモを取る練習をしてメモが取れるようになった人も、練習をしたけれどメモを取れるようにならなかった人も、面倒臭くて練習をしなかった人もいると思います。

そこで最後に、練習をしたにせよしなかったにせよ、どうしても思ったようにメモを取ることができない、という人のために、いくつかのアイデアを紹介しておきます。

正直にいうと、これから紹介するアイデアは、必ずしもメモが取れるようになる方法ではありません。どちらかというと、メモが取れないままで済ませるための言い訳や、ごまかすための姑息な手段と言った方が良いかもしれません。そのつもりで読んでください。

開き直ってしまう

メモを取る、という作業は、基本的にはメインになる作業ではありません。本来は、他に何か目的があって、そのためにメモを残したり、本来の作業を順調にこなすためにメモを取ったりするのです。あるいは、ふと思いついたことや気になったことを、いつまでも頭の中に残しておいて、今やっていることの邪魔にならないようにするために、とりあえずメモの方に残しておく。つまり、メモは補助であったり予備であったり一時的なものであったりするはずです。

仮にそれがうまくできなかったとしても、本来の目的や作業がある程度順調にこなせているならば、無理してメモを残す必要はないのです。

極端な話をすれば、メモとして残すべきことがすべて記憶できて、必要なときに必要な情報を頭の中から引き出すことができるのであれば、メモを取る必要はない、ということです。今不要な情報は頭の中の引き出しの奥にしまいこんで、それが必要になったときに自由に取り出せる記憶力をもっていれば、メモは必要ないのです。

第二回の時に「メモを取れない理由」の中で「まあいいかと思ってしまう」というのを紹介しました。 メモを取らなければいけない場面で、意識的にしろ無意識にしろ「まあいいか」と考えてメモを取らないで済ましてしまう、というパターンです。

いっそのこと、これをはっきりと意識してしまうのです。 ⁠ここはメモを取るべき場面だ。でも俺は自分の意志でメモを取らないぞ」と開き直ってしまうのです。そう考えて行動することで、自分の考えと行動が一致します。自分できちんと考えて行動する。これが大事なことなのです。

やろうと思っているのにできないとか、やろうと思っていたことを忘れていたことに後になってから気がついて後悔する、というのは大きなストレスです。自分の意志で「メモを取らない」と決めれば、それはストレスになりません。

もちろん、そのために後で困ることがあるかもしれません。しかしそれは自分が選択した行動の結果です。それを認識した上で意識してメモを取らないようにしてみると、逆に本当に必要な時にはメモを取るようになれるかもしれません。取れない可能性もかなりあると思いますが。

シャドーメモ

中には、他人がしょっちゅうメモを取っているのを見て「なんだか格好いいなぁ」と思って、自分もやってみよう、と思ったふとどき者……いや、見た目重視の方もいらっしゃるかもしれません。そうではなくて、気に入ったペンや"メモ帳"を手に入れたから、それを頻繁に使いたい、という発想の方もいらっしゃるでしょう。

そういう人は動機が少々弱いので、基本的には長続きしなかったりなかなか実行できなかったりするとことが多いでしょう。ユビキタス・キャプチャーをやろうと思ったけれど、いったい何をメモすればいいのか、さっぱりわからない、という人もいると思います。前回その練習方法を紹介しましたが、いざとなるとどうしてもメモが残せない、という人もいるでしょう。

そういう人には、とりあえずシャドーメモをお勧めします。 これは、メモを取っているふりだけするという、ある意味最低のものです。

たとえば、あまり混んでいない電車の中や、喫茶店などでくつろいでいるときに、何かを思いついたような顔をして"メモ帳"をサッと取り出し、そこに何かを書き込む「ふり」をするのです。もし周囲にあなたを見ている人がいたら、きっと何か思いついてメモを取ったんだな、と思ってくれます。

仕事中や会議中でもかまいません。何か大事なことをメモするように、"メモ帳"にペンを走らせるふりをするのです。実際に何か書く必要はありません。どうしても何か書きたかったら、日付と時刻でも書いてください。

そんなことがいったい何の役に立つのか、と思うかもしれません。たしかに、最初のうちはポーズだけでしょう。しかし、何度も繰り返しているうちに、それが体に染み付いてきます。ある意味素振りをしているようなものです。

ことあるごとに"メモ帳"を取り出して何かを書いたり、書いてあるものを読んでいるふりをしているうちに、その行動が自分にとって当たり前になってくるのです。

そのうち、たまたま本当に何か思いつくことがあるかもしれません。そうなったらしめたもの。それをメモすればいいのです。

いたずら書きをしてみる

とはいえ、いくらなんでも書いたふりだけ、というのはイヤだという人もいると思います。そういう人は、いたずら書きでもしてみてください。へのへのもへじでも、ドラえもんでもかまいませんし、最悪、丸だの三角だの四角だのでもかまいません。⁠そんなことでいいのか?」と思うかもしれませんが、面白いことに、いたずら書きでも役に立つことがあるのです。

何かの時に書いたいたずら書きを後から見返してみると、その時の状況が思い出せることがかなりあるのです。 たとえば、電話をしながら手元の"メモ帳"にいたずら書きをしていると、あとでそのいたずら書きを見たときに、電話で交わしていた会話を思い出すことがあります。

さすがに、会議の内容が理解できなくて、退屈だったために書いたいたずら書きを見返しても、思い出せるのは会議の内容ではなく、⁠会議の内容が理解できなくて退屈だった」ということだけですが。

そういう意味では「記憶を引き出すきっかけ」としては、いたずら書きでもいくらかの効果はあるのです。ただし、これは必ずしも期待通りの効果が出るものではありませんので、気をつけてください。

最初から欲張らない

もっと仕事の効率をあげたいとか、もっと充実した生活を送りたい、と思ってメモを取ろうと考えている人もいると思いますが、欲張ってはいけません。 もう一度現状を見直してみてください。そのメモは、あなたにとって本当に必要なものですか?そのメモを取らないと、なにか大きな問題が起きますか?

思うようにメモが取れない、と悩んでいる人の中には、メモを取らなければいけない、という考えが強迫観念のように頭にこびりついている場合があります。むしろそれがストレスになって、メモが取れない場合もあるのです。

大事なことは、いざというときにメモが取れることであって、なんでもかんでもメモに残せることではありません。

それではユビキタス・キャプチャーにならない、という考えもあるかもしれません。しかし、何事も最初からうまくいくとはかぎりません。最初のうちは、むりをせずに。気づいたときにだけメモを残す。そして少しずつ、その「気づいたとき」を増やしていけば良いのです。

そのために、ひたすらペンと"メモ帳"を持ち歩いてください。でも、それができなくても気にしないでください。

できれば何度も"メモ帳"を開いてください。でも、それができなくても気にしないでください。

メモが取れないからといって、思い悩まないでください。

本当に大事なことは「メモを取ること」でも「取ったメモを使うこと」でもありません。 大事なことは、自分の目標や目的を達成することなのです。 メモを取るのは、そのための手段のひとつでしかないのですから。

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