Drastic? Dramatic? Tumblr!!

第4回Tumblrの世界にハマる―ReBlogの使い方とソーシャルネットワークの活用

今回はTumblrの最大の武器「ReBlog」の使い方、そして、ソーシャルネットワークとしての活用について紹介します。

A面:Tumblr最大の魅力・ReBlog/ふじかわまゆこ

いよいよTumblrの最大の特徴であるReBlogについてご紹介します。ReBlogなくしてはTumblrは語れないというくらい最も特徴的で、楽しい機能ですが、とても説明が難しい機能でもあるのです。できるだけ皆さんに理解していただけるようにがんばって書きたいと思います。

そもそも、ReBlogってなに?

図1 ReBlogのしくみ
図1 ReBlogのしくみ

「ReBlog」という単語は「Re」「Blog」に分けることができます。⁠Re」は、直感的には「繰り返す(Repeat⁠⁠」や「返事(Response⁠⁠」のような印象がありますが、まさにそんな感じの機能です。ReBlogすると、他人のTumblelogの内容をそのまま自分のTumblelogで「繰り返す」ことができます。前回TumblrでのいろいろなPostの方法をご紹介しましたが、そのようにして誰かがPostしたものをそのまま、自分のTumblelogにPostするのです。たとえば誰かがお気に入りの写真をPostしたとすると、それをそのまま自分のTumblelogにも表示させる機能のことを「ReBlog」と呼びます。

図2 自分がPostした写真(下)と、他の人からReBlogした写真(上⁠⁠。違いは下のほうにあるリンクだけ
図2 自分がPostした写真(下)と、他の人からReBlogした写真(上)。違いは下のほうにあるリンクだけ

ReBlogされた内容は通常のPostと同様に自分のTumblelogに記録されるので、まるで自分が実際にPostしたかのように見えます(誰のPostをReBlogしたかは自動的に付加されるようになっていますが、あまり目立ちませんし、実は内容の編集もできます⁠⁠。

他の人が見つけたいい写真、サイト、誰かが書いた文章でさえ、ReBlogをすれば自分のもののように見せることもできてしまいます。これは、解釈によってはネタを盗むようにも見えますが、Tumblrではこれが重要なコミュニケーション手段なのです。

ReBlogすると、何が楽しいの?

Followした人のReBlogの様子を見ていると、⁠Re」のもう1つの側面である「Response(返事⁠⁠」の要素もあることがわかってきます。ReBlogするとコメントを追加することもできますが、ほとんどのReBlogされたPostにはコメントが一切なく、誰かがPostしたものをそのまま自分のTumblelogに記録しているだけです。ただ黙々と(?)何百個もReBlogする人もいます。おそらく、私のDashboardに上がっているPostの7~8割がReBlogによるものだと思いますし、おそらく他の人もその状況に大きな差はないと思います。

「なぜ人はReBlogするのか」という問いに答えるのは本当はとても難しいのですが、あえて言うと「自分自身の心と、他人の関心に反応するため」なのではないかと思っています。Dashboardに集まるPostは、いわば「関心の集合体」です。少なくてもPostした人にとっては何らかの価値を持つものであるはずです。価値のあるものが自然に集まっているDashboardから、自分にとっても価値のあるものを拾い出していく作業がReBlogと呼べるのかもしれません。

私自身の経験で言うと、自分でReBlogをして、他人のReBlogを見ているうちに気が付いたことが2つありました。

ひとつは「自分が関心を持つものに気が付いた」ということ。今まで目にすることもなかったものが目に入るようになり、⁠私ってこういうものにも興味があったんだ」と気づかされることが多くありました。もう1つは「自分と興味関心が似ている人がわかる」ということ。何も言葉を交わしていないけれど、多分この人は私と感覚が合う人だというのはしばらくやっているとすぐ気付きます。

自分がPostしたものが同じ人にReBlogされたり、自分も同じ人のPostをReBlogしたりしていると、なんとなくTumblelogの傾向が似てくるんですね。気が付くと、そういう「趣味が近い人」と妙に近い距離感を持つようになったりします(一方的かもしれませんが⁠⁠。

  • 「こんなのに興味があるんだ」⁠うんうん!私も興味ある」
  • 「この意見が気になるなあ」⁠なるほどそんな意見もあるのね」
  • 「こんなおもしろいものを見つけたよ」⁠わあ、それおもしろいね!」

ReBlogだけで、こんなやりとりが見えますし、自分でもできます。

そんな「言葉のないコミュニケーション」が成り立ってしまうのが、ReBlogのすごいところなのです!

ReBlogはどうやるの?

操作方法は本当に簡単。2クリックです。

  1. 自分のDashboardでFollowしている人たちのPostを眺める
  2. その中に自分が興味のあるPostがあったら、ReBlogマーク図3をクリック
  3. 編集画面に切り替わるので、問題なければ(または編集したら)⁠ReBlog Post」をクリック

これでReBlog完了です!簡単なので、直感的にガンガンReBlogをしていくのも楽しいですよ。もちろん「誰かがReBlogしたものをReBlogする」ことも可能です。

図3 ⁠リサイクル」のマークにも見えるReBlogのアイコン
図3 「リサイクル」のマークにも見えるReBlogのアイコン

ReBlogを見て楽しもう

図4 たくさんの人にReBlogされたPostの場合、リストを表示できる
図4 たくさんの人にReBlogされたPostの場合、リストを表示できる

自分でReBlogするだけではなく、他人のReBlogしたものを見るのもまた楽しみの1つです。Dashboardでは、誰かがReBlogしたPostの場合、⁠Postしたユーザ名 reblogged ReBlogされたユーザ名」といった説明が表示されます。同じものをReBlogした人の数が複数になると、Postしたユーザ名の横に「and ReBlogした人の人数」と表示されます。このリンクをクリックすると、ReBlogした人のリストや付いたコメントを見ることができます。

ReBlogの数を見ればTumblrユーザーの関心が高いものが一目瞭然ですし、自分が関心を持ったものに誰がReBlogするかということもわかるので、趣味の合う人をすぐに探し出すこともできます。Followerの数を増やすと、なんとなくネット界隈で流行しているものなども見えてきたりしますので情報収集に役立ったりもします。人間観察と情報収集のどちらの意味でも、ReBlogは興味深い機能だと思います。

ReBlogの雰囲気を少しはお伝えできたでしょうか。Tumblrをやるなら、ReBlogをやらない手はありません!そのためにはFollowerを増やすことは不可欠(1人ではReBlogはできませんので⁠⁠。SNSのような承認作業などもありませんので、気になった人はどんどんFollowしてみるとよいと思います。ぜひReBlogを通じてTumblrを堪能してくださいね!

B面:ソーシャルなつながりツールでもあるTumblr/中野宗

海の向こうには、Internet ArchiveのText ArchiveAmazon.comのSearch Inside the BookそしてGoogle Book Searchなど大掛かりな書籍のデジタル化プロジェクトがあります。以前、こういう動きがもたらす変化について⁠books read one another(本が本を読む)⁠という表現で洞察している人がいました。

本の電子化の「あちら側」 - bookscanner記

> まぁ、まだまだ原始的な段階だろうけど、電子図書館ってのは、本が本を読んでいるんだよね。そんで、人間の脳なんてものとは関係なく、作業を進めているんだよ。

情報にちゃんとした意味づけ(セマンティクス?)が具備され、情報と情報が勝手につながっていき自己組織化がはじまるようになる? 情報技術の未来はすごいことになりそう。

なぜこの話を冒頭に持ってきたかというと、ぼくはTumblrのDashboardを眺めていると、写真やquoteたちが勝手に感応しあい自律的にチェーンをつくっているような錯覚に陥ることがあるからです。

袖触れ合い、横目で見合うネットワーク

でもポストやReBlogは人がやっているもので、そこにはわずかでもパーソナリティが滲み出しています。だからTumblrのDashboardは、どんなに希薄ではあってもやはりソーシャルネットワークだと言えるのです。

nakano.tumblr.com

> tumblrユーザは「そんな不可視のメタデータでも人はネットで繋がりあえる」という衝撃の事実にぶちあたる。言外の意味による高度なコミュニケーションはとても日本的であり、tumblrが日本人受けする理由もそこらへんにあるんだと思う。

(ReBlogが繰り返されていて引用部分をどなたが書いたのかわかりません。⁠自分だよ」という人、よければ修正するので連絡ください)

ぼくはこれをReBlogしつつ「袖触れ合ってる」とコメントしました(⁠⁠袖触り合うも多生の縁」から⁠⁠。これはリアルでいえば、中古CD屋で同じジャンルの棚を漁っている他人を横目で見るぐらいの感覚に近いかも。Dashboardでの人との関係はこのように、ノンバーバル(非言語的⁠⁠、暗示的と言えそうです。

Tumblrでは他人をFollowできるけど、mixiの「マイミク」のように相互承認による友達機能ではありません。followは『RSSリーダーに登録する』だし、removeは『RSSリーダーでの購読を辞める』ぐらいでしょ。⁠otune氏)というのがまっとうな感覚だと思います。

nakano.tumblr.com

> it’s like myspace for independent minds. we’re not messaging each other, we’re bearing witness to each other’s lives. it’s like how good relationships are about turning outward rather than to each other.

“ミニサイズのブログ+スクラップ帳⁠的に使いこなす守旧派が根強い英語圏でも、このSam Reich氏のようにTumblrに生まれた新しいソーシャル性を見抜いている人はいます。⁠Tumblrは)独立心を持った人のためのMySpaceだ」⁠メッセージを送り合ったりしない代わりに、互いの生活を目撃し合う」⁠関係は二者間でなく、外に向かっている」⁠いずれも超訳)という表現は、実に的確だと思います。

Dashboardの雑音を聞き分け、偶然を目撃する

Dashboardを流れてくるのは、自分がFollowしている人たちがいろんな強弱レベルで感応しキャプチャし得た写真やquoteたちです。Twitterユーザのさえずりを「生活雑音」ネットを介した生活雑音Twitter - REstructuringと表現した人がいましたが、TumblrのDashboardでは、ユーザは砂の嵐の中で⁠見分けることができた⁠ものをReBlogしていくのです。ショーウィンドウを眺めたら自分の欲しいものだけが目に飛び込んできた、そんな選択行為です。皆が感応(ReBlog)し、繰り返し流れてくるアイテムを何度めかでReBlogしてしまうこともあります。反復にはきっと意味があると感じるからかもしれません。

2人のポストが楽しいチャット風になっている様子を目撃したり、1人遊びを覗いたりといった偶然も起こります。

見通しが悪いコミュニティの“あたたかさ”

あるブログ記事のはてブコメント欄にあったほとんどのサービスで繰り返されてきたことだけど、この手の『検索システムが整備される前の、私の大好きなあったかいコミュニティ』状態というのは、Tumblrのコミュニティとしての魅力についてもあてはまる良いフレーズです。

何人のユーザがいて、つながりはどうなっていて、どんな話題で盛り上がってきたかなどが可視化されているSNSやネットコミュニティと比べて、TumblrのDashboardは恐ろしく見通しが悪い場だといえます。歴史や物語が積み重なっていくようにも見えません。時折⁠歴史的⁠なコメント付きquoteが掘り起こされたとしても、それはすぐ流れてしまいます。

が、見通しが悪い場は単純性を保ち続けることができ、新参者には優しいのです。いや正確にいえば、冷たくはないだけで優しくもないのかもしれませんが。

このようにTumblrは、普通のSNSなどと比べると異色ではあるものの、ユーザーのつながり欲もちゃんと満たすことができるサービスなのです。

次回はいよいよ最終回。Tumblrの⁠万能ナイフ⁠⁠、ReBlog機能のすごさについて語ってみます。

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