Drastic? Dramatic? Tumblr!!
第5回 FirefoxでTumblrをパワーアップ/ソーシャルメディアの価値を高めるReBlog
B面:「ReBlogはソーシャルメディアをざわつかせる新たな流儀(最終回)」/中野宗
最近一部で流行っている,超小型(マッチ箱サイズ)でローテクなデジカメ「VistaQuest VQ1005」にハマっています。
このカメラ,たとえばAmazon.comのレビュー欄では「子どもに買い与えたが低性能すぎる」と憤慨する人がいる一方,写真好きの間では写真のローファイ加減が人気。FlickrのGroup「Flickr: Vistaquest VQ1005 & Genie III Keychain Cameras」も盛り上がっているし,mixiのコミュニティ「VQ1005/Genie III」(要ログイン)も活気があります。
ソーシャルメディアとともに目覚め,つながり,爛熟もしてきた表現者(撮り手)たちの嗜好というニッチな土壌に咲いたあだ花のようなデジタルカメラかもしれません。
実際に使ってみると,シャッターを切るのに数秒かかり,小さな白黒液晶しかないので画像はプレビュー不可,電池は全然もたず,各種設定は毎回リセットされてしまう,とすごい低性能なんですが。
なぜこの話を最初に持ってきたのかというと,このカメラが流行りはじめのころ「これはTumblrに似ているんじゃないかな」と思ったのです。もっと言えば,使ってみたうえで「ReBlogってノーファインダー(ファインダーを覗かずに撮ること。和製英語らしい)だよね」って言ってみたかったのです。
が,実際のVQ1005は動作がトロすぎ,たとえノーファインダーでもTumblrの快適さとは比べ物にならない,という体感でした。
せっかくなので,このアナロジーをもう少し引っ張ってみます。
ぼくらはTumblrで,Webで興味を惹かれたことにシャッターをパシャパシャ切っていく。それはblog記事のようにフォーマルな体裁ではないので解像度は高くない。でもそのぶん気楽に撮りまくれる。というわけで,TumblrはWebの(ソーシャル・)トイカメラと呼んでもいいかもしれません。
「ReBlog」はそもそもどこから来たのか
TumblrのDashboardで人のアイテムをそのままコピーできる「ReBlog」という機能は,そもそもオリジナルではありません。元祖は「reBlog.org」だと,Tumblr, Inc.のMarco Arment氏(Chief Scientist)は語っています。
extraview Marco Arment
> Reblogging is not a new idea (see http://www.reblog.org/), but it doesn’t fit very well with traditional blog software, interfaces, and expectations. Fortunately, tumblelogs are a perfect fit for reblogging with their blend of original and referential content.
[超訳:Reblogというのは前からあったアイディアなんだけど(http://www.reblog
.org/を見て),伝統的なブログソフトウェア,そのインタフェース,期待されるものにはフィットしなかったんだ。でも幸運にもTumblelogには完璧にフィットしている。オリジナルと引用のコンテンツが自然に混在できるという点で。]
reBlog.orgを見てみると,「reBlog」(表記は「ReBlog」ではない)はたくさんのRSSフィードの中から関心がある情報をフィルタリングする仕組みのこと。オリジナルの記事を書くよりもコンテンツを取り仕切る(curate:美術館のキュレータの動詞形)ことを好む人に向いている,という興味深い説明がありました。そして「reBlog」というソフトウェアのパッケージは,「reFeed」というWebベースのRSSアグリゲーターと,それをMovable TypeやWordPressなどの有名ソフトウェア向けにReBlog(パブリッシュ)するためのプラグインのセットになっています。
reBlogを配布しているEYEBEAMは,芸術とテクノロジーについての研究,ワークショップ,アワードなどのプロジェクトを行う団体のようです。
ReBlogは金づち? 万能アーミーナイフ?
Twitterには,気に入ったつぶやきに星印が付けられるFavorites機能がありますね。この機能は,とくに日本では「ふぁぼったー」の登場でTumblrのReBlogっぽいフレーバーが付いたのかもしれません。で,TwitterのFav機能についての
Twitter / ishikawa: FAVには,そうそう,おもしろ,あほかの3つがあると思う。
> FAVには,そうそう,おもしろ,あほかの3つがあると思う。
というtweetは,ReBlogを考える上でも役立ちそう。ぼくはこの呟きをTumblrにクリップしつつ,「でもTwitterのFavoritesってそのラベリングからしてある偏向を背負っちゃってるな。その点“ReBlog”は単に“Re”であり,無着色で自由だ」とコメントしました。
Tumblrにハマってからのぼくは,たとえばFlickrでは写真をコメントなしでFavoritesにバシバシ入れることに躊躇がなくなりました(以前はなんとなくマナー違反だと思ってました)。また,人のmixi日記のコメント欄で,気に入ったフレーズだけ“quote”してみたくてウズウズすることも。
「金づちしか持っていない人は,すべての問題を釘と見なしがちだ(If the only tool you have is a hammer, you tend to see every problem as a nail.)」(エイブラハム・マズロー)という言葉があります。
多くの日本人ユーザは,黙々とReBlogという“釘叩き”に勤しんでいます。対して英語圏では「皆が同じコンテンツをTumblrにポストしまくってるが,どんな意味があるんだ?(What's the point of everyone posting the same content on their Tumblr?)」などと疑問を投げる人も結構います。
彼らは古い認知フレームに縛られているのでは? ニュートラルであり,マニュアル不要,同調や空気読みの圧力もないReBlogという手段があるからこそTumblrは面白いのに! そういう意味で,含意の多義性があるからこそ“使える”ReBlogは,金づちではなく多機能なアーミーナイフだと考えるべきでしょう。
ReBlogは“エゴ益”と“コミュニティ益”を合致させる
この連載の2回目(意見未満・判断以前のキャプチャツールとしてのTumblr)で「解釈できかけ,判断未満,『!』や『!?』を感じたもの,『;^)』や『:'<』を付けたいものといった,これまでマージナルな領域にあったり,無意識に表明をためらっていたような関心ごとに至るまで,『ついうっかり』クリップする」と説明したように,ファーストポストであれReBlogであれ,Tumblrユーザーがやっていることは,自律的でエゴイスティックな行為です。
しかし同時にReBlogは,“エゴ益”を満たしながらソーシャルな場(Dashboard)をかき回します。
多数のユーザがReBlogするという行為が,上と下だけの単純構造のDashboardに同じネタを何度も遡上させ,それがサービス接触頻度がまちまちなユーザを巻き込んでいく。ReBlogは「場をざわつかせる」のです。
そして一番すごいところは,他ユーザのポストをピン留め(ReBlog)するという“エゴ益”アクションが,そのまま相手への「返礼」や「報酬」になっていること。「一個人の宝物」集めが,同時に他ユーザへの「目くばせ」程度の経済的な挨拶になっていることです。
それは,ソーシャルな場に参加するユーザなら当然もっている「他者からの承認」という欲求を叶えることになるのです。
最近,「クラウドソーシング」や「ゲーム内労働」など,ネットユーザの自律分散活動をサービスに取り込もうというアプローチが本格化しつつあります。そこで実現すべきエコシステムを考えるうえでも,ReBlogという仕掛けは示唆に富んでいると思います。
ユーザのPCのクリップボードの内容を吸い上げてソーシャル化しようという「ControlC」は,Tumblrよりさらに下のゾーンを狙ったのかもしれません。現時点で盛り上がってはいませんか。
ReBlogはblogやmixiの「うまくいっていないこと」を照らす
ソーシャルメディアの代表と言えば,たとえばblogが思い浮かびます。blogの双方向性を担保する重要な機能の1つ,コメント欄ってちゃんと使われているでしょうか? そこそこ有名なblogでもコメントは皆無というケースが多いでしょう。あったとしてもシンパ,強硬な反対派,質問君,通りすがりの勘違い,または記事を読んでさえいないspammerなどが大半でしょうか。
mixiで日記を書いたユーザが,自分の日記への反響を知る方法は「コメント」と「足あと」だけです。日記を読んだユーザが「へぇ~」や「いいなぁ」と思うことはたくさんありますが,「コメント未満」のそれらは押し込められます。
「意見未満・判断以前」の感想を押し殺して去る,アクセス解析では「1UU(ユニークユーザ)」に還元されてしまうマジョリティの姿を顕在化させるという点で,ブログやmixiはうまくいっていません。これは,5年後のネットユーザが見たら「そんな野蛮な時代もあったの!?」と驚く未開ぶりかもしれません。
ネットユーザが表現しそこねていたエモーションを鮮やかに見える化し,現在のソーシャルメディアの未熟ぶりを照射したという点で,TumblrのReBlogは1つの事件ではないかとぼくは思います。
Web 2.0をしのぐバズワード「Web 3.0」を担ぐ人たちによると,新しいパラダイムの視点の1つは「(もっとすごい)パーソナライズ」だそうです。誰もが心地良い「エコーチェンバー」(自分共鳴装置)を求めはじめるとき,そこにソーシャルな仕掛けを不可分なかたちで組み込むことは,より重要なテーマになってきます。
ネットって,まだまだ進歩しますね。
「Drastic? Dramatic? Tumblr!!」のB面は,これで終わりです(ふじかわさんのA面はもうしばらく続きます)。
今後は,TumblrのDashboard他,Webの先っちょのほうでお会いしましょう。;^)
Drastic? Dramatic? Tumblr!!
- 第5回 FirefoxでTumblrをパワーアップ/ソーシャルメディアの価値を高めるReBlog
- 第4回 Tumblrの世界にハマる―ReBlogの使い方とソーシャルネットワークの活用
- 第3回 Tumblrの世界にハマる
- 第2回 Tumblrを覗いてみよう―Tumblrのおもしろさ・楽しみ方
- 第1回 著者が感じるTumblrの魅力


