インタビュー

KDDIウェブコミュニケーションズ,大阪オフィスを開設――「ゼロからの新会社設立の気持ちで,みんなと一緒に大阪・関西を盛り上げていきたい」

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2013年5月13日,株式会社KDDIウェブコミュニケーションズが大阪にオフィスを開設します。開設にあたって,同社取締役副社長 高畑哲平氏,クラウドホスティング事業本部フィールドマーケティング部 西村謙一氏に,その狙いと展望について伺いました。

きっかけは震災

馮:貴社は先日,新体制となり新しい一歩を踏み出しました。直近ではTwilioの提供スタートなど新事業への取り組みを行っています。まずは,新体制となって1ヵ月について教えてください。

高畑:おっしゃるとおり,当社は4月1日から代表交代を含めた新体制を迎えました。代表が変わったことでの変化は当然ありますが,ただ,前代表の山瀬が取り組んできた事業や戦略を大幅に変えるための組織変更ではありません。これまでのホスティングサービスやクラウドサービスに加えて,Jimdoや,今おっしゃったTwilioなど,インフラの上で動くサービスの提供や展開を行っていきます。

この中で,今回の大阪オフィスの開設の位置付けですが,実は,これは2年前からの課題の1つでもありました。その理由が東日本大震災です。あの悲しく残念な災害のあと,さまざまな企業に影響が出ました。その中で,ホスティングサービスを提供する企業にも影響が出る中,東京に本社を置く当社は,震災の打撃を受けたこともあり,永続的にホスティングのユーザーサポートを提供できなかったのです。いわゆるBCP(事業継続計画)を実現できていなかったわけです。

そのときから,東京以外の場所にオフィスを置くという構想はありました。それから2年が経過し,さまざまな地域を見た中で,実は東京以外の場所でのIターン/Uターンを含めた就業者の動きを感じることができました。そこで,BCPとしての目的だけではなく,地方からのビジネス展開を意識して,地方オフィス開設に踏み切ったのです。

各地を回って感じた「肌感」「リアル」「オフライン」の重要性

馮:つまり,リスクヘッジを含めたBCP的な観点に加えて,東京以外の地域の盛り上がりが別拠点開設につながったわけですね。その中で大阪を選んだ理由はあるのでしょうか。

高畑:繰り返しになりますが,とにかく地方の活気についてはここ数年肌で感じていました。私自身,CSS Niteなど,地方で開催されているイベントに参加することで,現地にいるWeb制作者,Web関係者とたくさんのコミュニケーションを取ることができました。

中でも,大阪の方たちの地元を愛する気持ちを強く感じたのです。それから,別のイベントで大阪のコワーキングスペースOsakan Spaceに足を運んだときに,そこに集まった皆さんの熱量を強く感じました。そのとき,この場所を中心に盛り上げていけたら嬉しいというのが1つのきっかけでしたね。Osakan Spaceが入っている大雅ビルを拠点にできたらと。

また,このビルには税理士法人の中央会計さんが入っており,ITジャンルに強く,人のちからだけではなく経理面からのアプローチも強化できるのではと考えました。

馮:今回,大阪オフィスにはどういった方が配属されるのでしょうか。

高畑:ここにいる西村です。彼はもともと大阪の企業に所属しており,今回の立ち上げとともに大阪オフィスの責任者としてアサインしています。

西村:私は前職もホスティングサービス事業者でマーケティング・プロモーションを担当しておりました。

先ほど高畑が申したように,大阪の人間というのは地元愛がとても強いです。私自身,大阪を盛り上げる事業に関わりたいと思っていたところでの,今回のKWC大阪オフィス開設に関わることができ,大変嬉しく思っていますし,やりがいを感じています。

一方で,KWC大阪オフィスが東京の支社という認識はあまりありません。というのも,大阪に限らず,関西地区あるいはその以西は,東京と物理的に距離があり(東京の支社という考え方では)⁠ときにビジネス上の障壁となるのが1つの理由です。

ですから,KWC大阪オフィスを1つの拠点として,ここから新たに関西地区に向けた展開を行いたいです。その展開の中で,KWCが持っているJimdoやTwilioなど,協力なサービスを活用し,パートナーの皆さんとの協業を強化していくことがゴールの1つだと考えています。

高畑氏(右)と西村氏(左)

高畑氏(右)と西村氏(左)

東京を持ち込むのではなく,大阪に地に足をつけ腰を据える

馮:なるほど。一方で,IT/Webに関して言うと東京中心という見られ方,あるいは実際にそういった戦略がとられるケースを見ることがあります。その点についてはいかがでしょうか?

高畑:とくにホスティング事業に関して言うと,東京一極集中ではなくて,大阪や京都には多数のライバルがいるのが現状です。ですので,私の見方としては東京一極集中ではなく,⁠ホスティング事業については)すでに関西独自の市場が形成されていると捉えています。その中で,関西拠点がなかった我々としてはまだまだ市場を獲得できていないのでシナジーを目指すのではなくその場所,その地域からの取り組みが必要だと考えています。

加えて,先ほどもお話したように,関西独自のアツいコミュニティがあるので,まずはそこに向けて私たちから近づいていくことが大事ですね。西村の説明とも重なりますが,私たちとしては東京で行っている事業そのものを展開する支社としてではなく,関西のアンカーの位置付けとしてのKWC大阪オフィスを作り上げ,そこから,人や他の企業にアプローチしていきたいと考えています。

「中小企業の皆さんとともに市場を盛り上げていきたい」という思い

馮:開設時の大阪オフィスのメンバーはどのようになっているのでしょうか?

高畑:西村ともう1名,計2名でのスタートです。もう1名も現地の人間を採用しています。この点についても,大阪に根付いた拠点を作りたいという思いを込めています。

今後,事業を拡張していくにあたって人員強化をしなければいけない場合でも,東京の人間を大阪に送るというスタンスではなく,現地採用をすることを考えています。これは,現地の雇用の活性,ひいては現地の中小企業の活性につながると信じているからです。

西村:その点で,まず開設直後の目標としては,KWC(KDDIウェブコミュニケーションズ)という名前を,大阪の皆さんに知っていいただくことが責任者としての最重要課題となります。私は,Webのコミュニティを「村」という概念で捉えることがあるのですが,村というのは点在した家や場所がつながっていくことで発展していきます。それと同じように,私たちも大阪のWebコミュニティにおける村の中の1つの点となり,パートナーの皆さんとのつながりを強化し,コミュニケーションを図っていくことによって,地域活性に役立つ企業の1つになれればと思っています。

オンラインを突き詰めた結果のオフラインの価値

馮:最後に大阪,関西の方たちに向けたメッセージをお願いします。

西村:まずは最初の一歩をスタートすることができました。この一歩から,私が持っている地元愛を重ねながら,KWC大阪オフィスの存在価値を高め,大阪や関西の市場拡大につなげていければと考えております。

とくにJimdoやTwilioのように,サービスのうえで動かせるアプリケーションというのは,幅広い方に利用していただける可能性を持っていて,また,自分たちでは思いつかなかったアイデアを創発するきっかけになるはずです。自分たちがこれまで築き上げてきた強みを併せながら,地域に根づいたWeb,Webビジネスをしっかりとやっていきたいです。

高畑:今回のインタビューを受けさせていただき,おそらく馮さんからするとこれまでの回答と異なる印象をお持ちになったかもしれません。とくに,具体的な事業展開や事業計画などの数字に触れていないからです。通常のWebマーケティングの観点から考えても珍しいのではないでしょうか(笑)⁠

それは,先ほどもお話したように私がこれまで経験したことによる,オンラインを突き詰めた結果としてのオフラインの価値だと思っています。まずは人と人とのつながり,地域密着,そういったオフラインをしっかりと見据えることが,KWC大阪オフィスの存在意義につながっていくと考えています。ですから,短期的な数字のゴールではなくて,口幅ったいかもしれませんが,もっと長期的な視点で,未来に向けたマーケティングとしてKWC大阪オフィスを立ち上げ,ゼロからの企業のつもりで邁進していきます。

そして,何年後になるかわかりませんが,周りの方たちから「大阪,いや,関西のITやWebの盛り上がりって大雅ビル(KWC大阪オフィス所在地)から生まれているよね」と認識されるような状況になったら本当に嬉しいですね。

もちろん,東京で培ったものをすべて捨てていくというわけではなく,たとえば各サービスや既存の東京のパートナーの皆さまのお力も借りたいですし,東京のメディアの皆さんにも注目してもらえるような取り組みは強化していきます。

まだまだこれからではありますが,ぜひ地元の皆さんとの協力で市場拡大につなげていきたいです。そして,良い形で東京や他の地域と切磋琢磨することが,真の意味でのビジネスとしての成功につながるのではないでしょうか。

馮:ありがとうございました。

終わりに

これまでも,CPIやCloudCoreなど,魅力的なホスティング/クラウドサービスを展開し,JimdoやTwilioなど海外の注目サービスとの提携を進めてきたKDDIウェブコミュニケーションズ。今回大阪オフィス展開のお話を伺い,取材前まではこれらのサービスを東京から地方へ展開するのかと考えていました。

しかし,お話を伺っている中で,単に東京のコピーを広げるのではなく,地域地域の特性を掴み,その地場を盛り上げる中でサービスを最適化していきたいという高畑氏や西村氏の思いが伝わってくるインタビューとなりました。

私自身,先日Osakan Spaceで開催されたITイベントShoot from Osaka(n) vol.4を取材し,大阪ならではのアツさを体感することができました。KWC大阪オフィス開設をきっかけに大阪がどのように盛り上がっていくのか引き続き注目していきます。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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