海外PyCon発表修行レポート2015

第4回 EuroPython 2015参加レポートと,Sphinxに関する発表(後編)

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Sprint

Sprintは,短期集中型のソフトウェア開発イベントです。スピーカーやその他たくさんの開発者が集まり,それぞれのチームで目標を立てて開発を行います。Sprintはカンファレンス参加者であれば誰でも参加できます。Sprintオーナーとなってチームを作るのも,チームに参加するのも自由です。初心者がオープンソースのコアコミッターから開発手順を教えてもらうこともあれば,複数人で協力してソフトウェアの開発を進めることもあります。

このSprintを紹介するオリエンテーションが,Sprint前日金曜日のLightning Talk(LT)の前に行われました。EuroPythonでのSprintオリエンテーションは,Sprintオーナーが1人30秒から1分くらいでなにをする予定かを紹介する,とても短いLTのようなものでした。筆者も昨年のEuroPythonに参加した際にはSphinxのSprintを紹介しました。今年はSphinxの作者のGeorg BrandlがSphinxチームの予定を紹介しました。

Sprintの様子。このような部屋があと2つあった

Sprintの様子。このような部屋があと2つあった

Sprintは,7月25日(土⁠⁠,26日(日)の朝9:30~18:00に開催されました。土曜日には200人以上が集まっていたようです。カンファレンスの参加者数が約1,100名なので,だいたい2割くらいがSprintに参加した計算ですね。

最初にタイムスケジュールや施設の案内といったものもなく,好きな場所で好きな時間に開始,というユルい感じで始まりました。10時過ぎと15時過ぎにはティータイム,13時頃にはランチが用意されましたが,これも特にアナウンスはなく口コミで参加者に伝わったような感じです。それでもランチタイムには大勢の人が休憩スペースに集まり,ランチを取りながらそれぞれのOSSプロジェクトの情報を交換したり,近況を伝えたりしていました。ランチがいつからいつまでだったのかはわかりませんが,終始賑やかな様子で周りの会話にまけないようだんだんと会話のボリュームも上がっていった気がします。ランチでワインやビールも提供されていたのも多少は影響していたかもしれません。

Sprintのランチ。たくさんのピンチョス,ドリンク,ワイン,ビールが提供された

Sprintのランチ。たくさんのピンチョス,ドリンク,ワイン,ビールが提供された

Sphinxチームは筆者を含め8名くらいでした,筆者とGeorgはSphinxのバージョンアップを目指して不具合の修正を行い,また,後方互換性を維持しないSphinx 2.0に向けてのアイディアを出し合ったりしました。PyCharmの開発者で,今回Type Hints関連の発表を行ったAndreyは,Type HintsとSphinxのinfo field list記法をPyCharmでよりうまく扱う検討をしていました。他にもawscliの技術者やRed Hatの技術者が,Sphinxの機能の改修や不具合の修正にチャレンジしそれぞれ成果を上げていました。

SphinxにはSphinx Developer's Guideという新しく開発に参加する人のためのガイドがありますが,Sphinxの実装は複雑なため,ガイドを読んだだけで開発を始めるのは簡単ではありません。今回のSprintのような機会があると,新しく参加する人が開発を始めやすいドキュメントや仕組みが必要だということがよくわかります。これも,Sphinx 2.0に向けての課題と言えそうです。

Sphinx Sprintに参加したみなさん:名前不明,筆者,AndreyGeorg

Sphinx Sprintに参加したみなさん:名前不明,筆者,Andrey,Georg

おわりに

今回のEuroPythonでは,スピーカーとして発表することによる効果を再認識しました。また,Sphinx Tシャツはとても有用なツールでした。

筆者は知らない人の輪に入っていくのがそれほど得意ではありません。しかし,今回のようにスピーカーとして発表する時間を持ち,Sphinxのロゴを入れたTシャツを着て歩くことで,Sphinxという共通の話題を持つ他の多くの参加者から声をかけてもらえました。日本で同じ事をしても声をかける人は少ないかもしれませんが,海外カンファレンスではとてもうまい方法だったと思います。このおかげで,多くの人が筆者の発表内容に興味を持ってくれている事がわかってとても嬉しかったですし,多くの人と知り合えました。発表ドリブンコミュニケーションですね。そういう意味で,今回の筆者の発表日時が初日の午前中だったというのはとてもラッキーだったと思います。

Petr(左)と筆者とHynek(右⁠⁠,パーティにて

Petr(左)と筆者とHynek(右),パーティにて

知り合いが増えれば,また来年のEuroPythonで会おう,という話になります。発表を聴くだけならあとで動画やスライドを見ればよいですが,その技術の本当のところを発表者に質問したり,発表者として質問を受けたりして得られる生の情報はその後の活動のモチベーションとして欠かせないものです。今回の経験は,筆者の今後参加するカンファレンスでの行動に,大きな影響を与えそうだと感じています。そのためにも,これから英語のリスニングスキルを鍛えていきたいと思います。

次は,8月21日(金)から3日間開催されるPyCon Malaysia 2015に行ってきます。PyCon.MYは今年初めて開催されるマレーシアのPyConです。どのようなイベントになるのか,そしてどのような交流を持てるのか,今からとても楽しみです。

著者プロフィール

清水川貴之(しみずかわたかゆき)

ドキュメンテーションツールSphinxのメンテナ。2003年にZope2と出会い,それがオープンソース等のコミュニティー活動を始めるきっかけとなった。

Sphinx-users.jp運営。一般社団法人PyConJP理事。株式会社ビープラウド所属。

著書/訳書:「Pythonプロフェッショナルプログラミング第2版」「Sphinxをはじめよう」「Pythonプロフェッショナルプログラミング」「エキスパートPythonプログラミング」。

運営・参加イベント:Python mini Hack-a-thon主催,Sphinx+翻訳Hack-a-thon主催,PyCon JP 2011-2014運営

サイト:http://清水川.jp/
Twitter:@shimizukawa