レポート

世界のクリエイティブを体感する「FITC Tokyo 2011」レポート(後編)

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「TRON+GMUNK+YOU」

FITC TOKYO 2011最後のセッションを努めたのはディズニー映画「TRON: LEGACY」のオープニングや各GFXエフェクト,UIを担当したGMUNKだ。彼はFlashやイラストレーターとして活躍していたが,最近ではハリウッド映画のエフェクトまで担当しているということで,憧れる人も多いデザイナーの1人だ。来場者の中でも,このセッションを聞くのを楽しみにした人が多くいたようだ。

GMUNK

GMUNK

スキルのダイバーシティー(多様性)

「様々なスキルやツールを使い,ユーモア表現できるのがデザイナーとしてかっこいいよね!」というGMUNKの言葉からセッションはスタートした。彼のセッション中はその都度,多様性やユーモアという言葉が出てきたのが印象的だった。

イラストレーターでありFlashクリエイターでもあったGMUNKは自分に興味のあるインタラクティブや3Dなどを常に取り込んで作品を作りつづけていたが,2001年のニューヨークでTRON: LEGACYのディレクター Joseph Kosinski氏に出会ったそうだ(そのとき,GMUNKはMandingoという男優さんの作品を作っていたという⁠⁠。

Joseph Kosinski氏はGMUNKのユニークな作品に興味を持ち,これをきっかけに,その後車HUMMERのCM,そしてTRON: LEGACYも一緒に手がけることとなる。

TRON: LEGACYについてGMUNK曰く,最初は一部のGFXエフェクトだけだったのだが最終的にはオープニングエフェクトまでやってほしいといわれて巨大なプロジェクトがスタートしたと話す。

チームもダイバーシティー(多様性)

常に多様性を重用視するGMUNKは,TRON: LEGACYのエフェクトを作る際のチーム編成も多様性を重要視した。5人で結成されたチームの内訳をみてみよう。

  • クリエイティブディレクター: GMUNK
  • チーフデザイナー:Jake Sergeant
  • リードアニメーター(CINEMA4D⁠⁠:David Lewandowski "dlew"
  • Houdiniアーティスト: Adam Swaab/Joseph Chan
  • コードアーティスト(openFrameworks):Josh Nimoy

クリエイティブディレクターとしてチームを率いたGMUNKが考える,ディレクターとして重要なこととはレファレンス,資料集め。良いデザイナー,ディレクターになるには「レファレンスをきちんとライブラリーとしてもっているように!」とステージ上から来場者に訴える。

最初に制作したのは競技場の看板

最初に制作したのは競技場の看板

彼は事例に沿って紹介なぜ資料集めが必要なのかを紹介していく。例えばTRON: LEGACYの競技場のシーンを作るためには競技場の円形はどのようなものが良いのかを徹底的に丸や球を調べ尽くし,また,円形を作るための専用アプリをopenFrameworksで作ってトライアンドエラーを繰り返し,自分が表現したいGFXエフェクトを追求したそうだ。映像内の印象的な花火のシーンもopenFrameworksを使ってエフェクト作られたという。

また,映画内の悪役がフリンからディスク情報を抜き出すシーンやヒロインのコアDNAを抜き出すシーンなどは,遠近法を用いてZ深度が重要になると考えCINEMA 4D & Mographeを使うなど,それぞれのシーンにあわせて使うツールを変えたとのこと。スキルもツールも適材適所に使いこなす「多様性」が重要とし,GMUNKのディレクターとしての敏腕さが目立つエピソードだ。

資料集めが重要

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いくつかのパターンを作る

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実際のシーン

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非常に印象的なTRON: LEGACYのオープニングも彼が手がけたが,GMUNKとしてはオリジナルの1982年作の「TRON」へのリスペクトも込めてもっとクラシックなSF感が漂うエフェクトにしたかったそうで,⁠ディレクターにミニマルな作品に仕上げて欲しいといわれて現在のオープニングにした。しかし,俺はもっと原作に忠実でありたかった!」と。著者としてはGMUNKの手がけた「TRON: LEGACY」のオープニングが数倍クールだと考えているが,読者の方もぜひご自身の目で「TRON: LEGACY」をエフェクトメインで観てみて独自の感想をもってもらいたい。

“シェア”“ネットワーキング”を大切に

最後に,ハリウッド映画,ディズニーのエフェクトを作るという素晴らしい仕事を成し遂げた彼が,成功への近道として来場者に伝えたのは⁠シェア⁠⁠ネットワーキング⁠を大切にすることと語る。

彼は人と交流する(=ネットワーキングをする)ことにより,獲得した仕事が多いそうだ。そして,多くの人に出会い,より多く自分の作品をシェアするのが重要と続ける。

また,デザイナーとして一流でいつづけるためには自分の感性,ユーモアを研ぎすます必要があるが,それにはクライアントワークばかりではなく,自分の作品をずっとシェアしつづけることが大事であるとした。そして,⁠デザイナーは,呼吸するように日々の活動として自分の作品を外に出して行かなきゃいけない」と,背筋がぴんとするアドバイスを残し,彼のセッションは終了した。

取材を終えて

デザイン,開発の現場で仕事をする方には,様々な示唆や視点,気付きを与えてくれたFITC TOKYO 2011の2日間のセッション。まだ体験していない方は2月にはアムステルダムで,4月には本拠地カナダ・トロントで行われる当イベントに一度参加してみるのは,自分を次のステージに引き上げる良いチャンスかと思われる。

また,そのような世界レベルのカンファレンスに挑戦する日本人がより増えて行くことを楽しみに自分も精進したい。

著者プロフィール

西村真里子(にしむらまりこ)

株式会社 バスキュール号 プロデューサー

日本IBM,アドビ システムズのWeb製品マーケティング担当を経て現職に至る。外資企業での経験を活かし日本発の良質のクリエイティブ,サービスを海外に展開する施策を前職,現職ともに行う。TEDxスピーカー経験&特許保持者。国内,国外問わずに人と出会うのが大好き。

URLhttp://twitter.com/mariroom