レポート

インターネットはどこでもつながり,それに伴いWebは変化する ~HTML5 Conference 2015基調講演レポート

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1月25日,東京電機大学の東京千住キャンパスにて,HTML5 Conferenceが開催されました。本稿では,慶應義塾大学 環境情報学部長・教授 村井純氏,Googleの及川卓也氏,html5j代表の吉川徹氏の基調講演が行われたオープニングセッションの模様をレポートします。

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まず最初に,この基調講演がHTML5 Conferenceのオープニングセッションだったこともあり,会場担当の東京電機大学 未来科学部情報メディア学科 准教授 岩井将行氏がこの後に登壇する村井氏との関わり,会場やその周辺の楽しみ方などを簡単に紹介しました。

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その後,村井氏,及川氏,吉川氏がそれぞれ発表しました。

村井純氏「WEB AND THINGS」

松葉杖をついて登場した村井氏。昨年の基調講演で話した時には熱気に圧倒されたのを覚えていて,今日を楽しみにしていたそうです。

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After Internetである“Web is Everywhere”

今回のイベントのテーマはWeb is Everywhereであり,Things(モノ)とWebというのが話題になると思っているとのこと。ちなみにCiscoはInternet of Everythingという言葉を使っています。

例えば,IoTなどの用途に利用できる開発ボードEdisonがIntelから発売されました。このようなことも踏まえ,After Internetというか,高速インターネットがどこでもつながり,なんでも交換できるとすると,どんな社会ができるのかを考えないといけない時代だと言います。

そんな社会の一例として,村井氏自身が松葉杖をつくことになった出来事を紹介しました。

「先日,PTC'15にて発表するためアメリカに行った時に,足の指を折ってしまいました。しかし,すぐに帰国する必要があったため,手術したくてもできない状況でした。そこで,ホテルの診療所で撮ったレントゲンのデータをもらい,大きなファイルサイズでしたが,すぐ日本に整形外科にメールで送りました。その結果,手術しないと直らないから準備しておくと診断医に言われ,国内に戻ってすぐ手術を受けることができました。フレッシュな状態でなかったり,アメリカで準備なく手術していれば,指を切って全身麻酔を使ってつなぐ必要があったかもしれず,もしそうなっていたらこの場に立つことはできなかった」(村井氏)

この話を,数日前に開催されたIT総合戦略本部でも紹介したとのこと。その際,村井氏は「こういうことが世界で自由にできるのが,デジタルデータが共通のグローバル基盤。今は地方創生とか言っても縦割りな物事が多い中で,横につなぐのが我々の使命だ」と話したそうです。

Internet of Thingsという言葉のもともとの由来

次に,Internet of Thingsという言葉のもともとの由来について紹介しました。

Wikipediaには,Internet of Thingsという言葉はKevin Ashtonが最初に使ったと言及されています。村井氏は当時のことを次のように話しました。

「W3Cの運営をMITと慶應義塾大学(Keio)でホストしていた経験をもとに,当時,KevinはMITで,私はKeioでそれぞれAuto-ID Labを作り,一緒に活動していました。そしてその時にinternet of thingsと最初に言ったのはKevinです。しかし,この時のコンセプトは,モノにRFIDをつけてWebのデータベース上でトラッキングできることを指していました。物流のネットワークなどでは製造者,小売り,顧客をそれぞれつなぐネットワークが全部異なります。その際,モノに対してユニークな識別子であるRFIDをつけることで,どれでもトラッキングできるという意味で,internet of thingsと言及しました。なお,ここでのinternetとはネットワークが相互接続しているという意味なので,小文字にしています」(村井氏)

この話,internetworking of thingsは,センサネットワークをプロプライエタリ・プロトコルなZigBeeでつないでおき,ゲートウェイをTCP/IPにつなぐような形になります。つまり,ここでA gateway to the Internetとなり,キャピタライズされて大文字のthe Internetになると説明しました。

そして先に触れたEdisonを再度取り上げ,EdisonはフルスペックのCPU,Bluetoothなどが入っていて,Intelのアーキテクチャが動くことに言及。つまり,イーサネットのプロトコルが動いて,TCP/IPが利用できます。そうなってくると,「Everything speaks HTML-HTTP/TCP/IP」になると述べました。インターネットによってモノがつながるようになり,すべてのモノが(サーバになりうるため)インターネットの主人公です。つまり,双方向のコミュニケーションできるようになってきます。それができるようになるのが今のInternet of Thingsだと指摘しました。これはKevinの言ったinternt of thingsとは全く違う話だと述べました。

ネットワークがつながる時代に起こりうること

以降,村井氏は,これからの社会についての考察や,最近行っていることを話しました。

TVの双方向性

村井氏自身も見てみたら夢中になってしまったという,2013年のエミー賞をとったTVドラマHOUSE of CARDS』。この番組では,Netflixが視聴者のデータをビックデータ分析しつつ製作が行われました。例えば,「視聴者がどこで止めたか」とか「何話で飽きた」といったデータをとったり,また,舞台や役者,シナリオに関するアンケートをとりました。それらをもとに番組を作った結果,エミー賞を受賞してしまったとのこと。テレビは一方向のメディアですが,ここでは視聴者と双方向性が出ています。それにより,視聴者が何を考えているかをNetflixが読めるようになると話します。

最近NetflixはPS3/PS4やAmazon Fire TV,Apple TVなどの裏側にいますが,その表側にいるAppleやGoogleなどはもっとデータをとれます。さらに,テレビ受像機などのセンサーであればよりデータをとれるはずだと話を広げ,ユーザに近づいたほうが多くのデータをとれるはずだと指摘しました。それにより,その時間にどのチャンネルを見ているのか,いつチャンネルを変えたのか,途中で見なくなったのか,といったトラッキングが行え,人間に近づいたデータをとれるようになると言います。また,いろいろな理由でTVにはカメラがついていませんが,もしTVにカメラがついてその正面のデータをとれるようになれば,ものすごい量のデータをとれること。ほかにも,家電ともつながってくることを取り上げました。

たくさんの人のデータが分かるようになると,必ずマーケティングが行われます。それに向かって,政府は今後の個人情報保護法を変えたりしているところだと言います。そのためには何を予想してるかを正確にする必要があるとし,村井氏は「何でも起こるようにしたいけれども,いずれにせよ,そういったことを分析して,新しいイノベーションを作ろうとする考え方は貴重だ」と述べました。そして『HOUSE of CARDS』は,新たなセンサーが取得した新しい情報を無限に使い,まったく新しいテレビ番組を行うことの走りみたないものだとまとめました。

新しいネットワークとのつながり

Internet of ThingsのTはモノですが,Vint CerfがJPLとNASAと行ったのがInterplanetary Internet(惑星間インターネット)です。これはInternet of Planetsと言えます。また,Vint CerfはTEDの講演で,Internet of Speciesという,動物の脳とビヘイビアをネットワーク化するようなものを話しています。後者は冗談を話しているように思うかもしれないけれどもと言及し,「いずれにしても,なんでもつながることを前提に考えたほうが良い」と述べました。

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著者プロフィール

高橋和道

gihyo.jp編集部 所属。最近では電子書籍の制作にも関わる。

URL:https://twitter.com/k_taka

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