Linuxユーザを含む多くのOSSユーザにとって、OpenOffice.orgは欠かせないオフィススイートである。高価なMS Officeとは違い、文書、表計算、プレゼンテーションといったツールがすべて無料で利用できる。バージョンアップごとに機能も拡張/改善され、個人ユーザだけでなく、全社規模で利用している企業も多い。
このOpenOffice.orgに対し、Officeの本家本元であるMicrosoftはこれまで完全無視を決め込んでいた。知ってのとおり、MicrosoftはLinux/OSSに対して好意的な企業ではない。Linuxユーザに対して同社トップが示威的な発言をしたり、パテントをめぐってOSSベンダに訴訟を起こしたりと、OSSユーザから見るとあまり愉快ではない話題をこれまでいろいろ提供してきた経緯がある(もっともMSにもまれにOSS好きがいたりする)。だが、ことOpenOffice.orgに関しては、圧倒的なOfficeのシェアを背景に、これまで歯牙にもかけなかった風がある。
ところがどうもその読みは間違っていたようだ。10月6日、MicrosoftはOpenOffice.orgのアンチキャンペーンとも受け取れる動画「A Few Perspectives on OpenOffice.org」をYouTubeに投稿した。
「OpenOffice.orgがタダだって!? サポートサービスもないOSSを使って、トラブルが起きたらかえって高いコストが付くんですよ、みなさん!!」的なメッセージが2分50秒間、文字と音声で矢継ぎ早にたたみかける。「OpenOffice.orgからMicrosoft Officeに変えてビジネスがうまく行くようになった」というどこかの企業のC系パーソンのコメントもふんだんに盛り込まれている。ちなみにこの動画へのコメントは現在付けることができないようだ。
このようなキャンペーンを英語では"FUD(Fear, Uncertainty and Doubt)"というそうだ。恐怖、不確かさ、そして疑念 - そういった感情をオーディエンスに植え付けるのが狙いの戦術である。
Linux/OSSユーザの間でも話題になっているこの動画だが、大方は「どうやら、MicrosoftはOpenOffice.orgをビジネス上の脅威としてみなしているようだ」という認識で一致している。