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2011年7月27日カーネルコードへの貢献にアニバーサリーメッセージ… Microsoftの"Linux愛"をどう受けとめる

古くからのLinux関係者、とりわけ「オープンソース」という言葉が世に出る前から活動しているGNU/フリーソフトウェア関係者にとって、Microsoftという企業はLinuxやコピーレフトなソフトウェアを潰そうとする敵以外の何物でもなかった。⁠ハロウィン文書事件」に象徴されるような露骨なLinuxつぶしも含め、Microsoftがあの手この手でLinuxの評判をおとしめるためにさまざまな策を弄してきたことは、Linuxユーザの記憶と記録に鮮明に残っている。実際、Microsoftの幹部は今でもときどき「LinuxはMicrosoftに対し、数多くのパテント違反を侵している」と口にする。

そのMicrosoftが最近微妙に、いや、むしろ大胆に、Linuxへの態度を変化させてきている。ここ数週間のうちに目立ったニュースを3つ上げてみよう。

SUSEへの4年間/1億ドルの追加投資発表(7/25)

旧Novell時代の2005年からおもに仮想化環境における相互運用性を高めるため、MicrosoftはSUSEと提携をしてきたが、現在のAttachmateグループに経営が変わってからもそれが継続/強化されることが明らかになった。Red Hatを強く意識した企業どうしの提携ではあるが、Linuxをメインビジネスとする企業に対し、"あの"Mircosoftが1億ドルもの大金を投資するなんて…と驚いた向きも少なくない。

Microsoft and SUSE Renew Successful Interoperability Agreement
URL:http://www.microsoft.com/Presspass/press/2011/jul11/07-25MSSUSEExtensionPR.mspx

Linuxカーネル3.0のコードライティングに最も貢献したのはMicrosoftの開発者(7/13)

あまり知られていない事実ではあるが、MicrosoftはLinuxカーネルコードの開発にかなり積極的に参加している。先日リリースされたばかりのLinux 3.0、全部で1,100人の開発者が参加し、9,000を超える変更が加えられたが、この中で最もアクティブに活動した開発者、つまり最もコードに変更を加えた人物がMicrosoftのK. Y. Srinivasan氏だ。

同氏は主にHyper-V関連のドライバに関する変更を行ったのだが、その数は343、2位以下にダブルスコア近い差をつけてのダントツトップである(2位はDavid S. Miller氏の173⁠⁠。もちろんチェンジセットの数だけで評価することはナンセンスだが、Microsoftに所属するSrinivasan氏が多くの時間と労力を割いてLinuxコード開発に参加したことはまぎれもない事実だ。

なお、組織別で見ると、Red Hatが1,000でトップ、その後にIntel、Novell、IBMと続き、Microsoftは361で第7位(コード全体の4%)となっている。ほぼSrinivasan氏の稼いだ数字とはいえ、OracleやGoogle、富士通よりも上位にいるのだ。余談ではあるが、Ubuntuを擁するCanonicalの名前はこのランキングにまったく上がってこない。

Who wrote 3.0 - from two points of view [LVN.net]
URL:http://lwn.net/Articles/451243/

Linux20周年に寄せたMicrosoftからのアニバーサリーメッセージ(7/14)

以下のビデオがLinux Foundationから公開されたのを目にした人も多いだろう。MicrosoftがLinuxの20周年記念に寄せて贈ったメッセージである。

なんとなくGoogle ChromeのPVにも似た雰囲気のライトハートな映像だ。ペンギンはTux、メガネの人物はおそらくBill Gates氏を模したものだろう。"Microsoft vs. Linux"ではじまり、"Microsoft and Linux"で終わるこのビデオ、⁠過去のことは過去のコトとして、そろそろ新しい関係をつくっていこうよ」とMicrosoftからLinuxに提案しているかのようなメッセージを感じる。それにしても会社のアイコンであるGates氏をキャラにして、自らハロウィン文書をネタにするとは、Microsoftも変わったと思わざるをえない。


この一連の"Linuxシフト"とも見えるMicrosoftの姿勢をLinuxユーザはどう受けとめればよいのか、正直、とまどいを隠せない関係者のほうが多いだろう。以前からの根強いアンチMS派からは「こんな動きにだまされるな。今までMicrosoftがやってきたことを思い出せ!」と警戒心と対抗心をあらわにしたコメントも多く上がっている。MicrosoftはAndroidメーカに対して次々とパテント訴訟を起こしており、その矛先がいつLinuxコミュニティに向けられるかわからない、とする意見も少なくない。

本心はわからない。いつまた巨大な敵として襲ってくるかもしれない。だが、20年前と現在ではLinuxもMicrosoftも、そして両者を取り巻く環境も明らかに変わった。環境が変われば関係も変わる。Microsoftは明らかにLinuxとの関係を変えたがっている。とりあえず、今後どう転んでいくのかを気にするよりも、いまは"Happy Birthday Linux!"のメッセージに"Thank you."と軽く返すくらいの余裕をLinuxサイドがもっていることのほうが重要なのかもしれない。

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