買収戦略で知られるOracleは、Sun MicrosystemsやBEA Systemsといった大型買収のほかにも、ある技術やインダストリに特化した比較的小さな企業の買収も年に数社の頻度で行っている。先日、買収を発表したマサチューセッツ州ケンブリッジのプライベートカンパニーKspliceもそういった戦略の一環で手にした企業だ(買収金額は非公開)。
- Ksplice
- URL:http://www.ksplice.com/
Oracleが欲しがったKspliceの技術とは、ダウンタイムなしでOS(Linux)のセキュリティアップデートを可能にする"ホットパッチ"機能をもつ「Ksplice Uptrack」だ。
OSの更新/再起動という作業は、デスクトップにおいても面倒で実際よりも長く感じるものだが、ミッションクリティカルなシステムの場合はそれだけでは済まない。基本、止めてはいけないシステムであるため、たとえ緊急のセキュリティアップデートであっても、オンタイムにシャットダウンすることは、その企業の活動に大きな支障をきたす。かといって、たとえ短い時間でもセキュリティホールを放置しておくことの危険性はいまさら言うまでもない。
このトレードオフを解決するソフトウェアがKsplice Uptrackで、システムを再起動することなく、セキュリティアップデートやバグフィクスを完了させることが可能になる。同社のサイトによれば、これまで700社/10万サーバの導入実績があるという。
OracleはKspliceの技術をOracle Linuxのプレミアサポートの一環として提供していく予定だ。Red HatやSUSEとの差別化を図るためのテコ入れ策と見ていいだろう。Ksplice UptrackはFedoraおよびUbuntu用の体験版を提供しているが、こちらは当面の間は続けていくようだ。ただしOracleは「Red HatおよびSUSEをサポートする予定はない」と明言しており、Ksplice UptrackはOracle LinuxのUnbreakable Enterprise Kernel(RHELベース)のみに適用されるサービスとしている。
Kspliceを手にしたことで、Oracleが「ダウンタイムゼロを実現できるのはOracle Linuxだけ」を標榜し、Red Hat追撃を強めていく姿勢であることは間違いない。エンタープライズLinux事業の大幅強化は同社の事業戦略の中でも最重要課題であり、今後もKspliceのような技術をもつ企業の買収を展開していく可能性は高いと見られている。