Red Hatは3月28日(米国時間)、2012会計年度(2011年3月-2012年2月)の業績を発表した。通年での売上は前年比25%増の11億3,000万ドルを達成、創立から16年でついに念願のビリオンダラー企業の仲間入りを果たした。オープンソースをメインビジネスにしている唯一の成功企業の偉業に、OSS界隈ではともに喜ぶ声が多く聞こえてくる。
同社社長兼CEOのJim Whitehurst氏はこれを受け、「この勝利はRed Hatだけのものではない。すべてのオープンソース推進者、コミュニティによる勝利だ」とするコメントを発表、今後も多くのソフトウェアのソースコードを「オープンに、フリーに、透明に」していくことに注力していくと宣言している。
他のOSS企業と異なり、なぜRed Hatだけが成長を続けることができたのか。最大の要因は顧客企業のロイヤリティの高さだろう。一度Red Hatのユーザとなった企業はほぼ毎年更新する傾向が強い。2012年度は取引額の多い100企業のうち、99企業がサブスクリプションアカウントを更新したとされている。これによる売上増は130%におよぶのを見ると、顧客企業のリピート率の高さが10億ドル超えを支えたと言っても過言ではない。
さて、長い間の念願だった目標を果たし、Red Hatが次に向かう目標は何か。具体的にはクラウドビジネスでのシェア向上に注力していくと見られている。その一環として、4月30日から米サニーベールで開催される「Open Cloud Conference」において、PaaS基盤の「OpenShift」のソースコードを公開すると宣言している。
買収企業のアーキテクチャをOSSとして公開するのはRed Hatの得意技だが、今回は1年以上の時間がかかってしまった。これに対する疑問の声も出ているが、クラウドへの戦略がまだ固まっていないとの見方もできる。「10億ドル達成は、野球で言えばまだ3回表くらい」というWhitehurst氏の言葉をそのまま受け止めるのであれば、2013年度はクラウド事業でより積極的な攻めの姿勢を見せていくはずだ。まずはOpenShiftのソース公開後の動きに注目したい。