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2012年12月20日何もかもが燃え尽きた─とあるディストロ開発者を襲った年末の悲劇

文字通り、身も心も凍りつくような寒さが一段と厳しくなってきた年末であるが、もしこんな時期に突然、寝起きする場所、コードを書く場所を失ってしまったら…そんな事態に、ある開発者が直面している。

2012年は数多くのユニークなLinuxディストリビューションが登場した年でもあった。仮想マシン上でアプリを稼働させることでセキュリティを強化したQubes OSや、使いやすさにこだわった初心者向けのLinux Lite、発売以来、大人気で入手が困難になっているカード型コンピュータ「Raspberry Pi」の専用OSであるRaspbianなど、バラエティに富んだディストロの名前をいくつも挙げることができる。

そして数あるLinuxディストロの中でも、GNOME 2ライクなインターフェースを使えるSolusOSは、Ubuntu UnityやGNOME 3にアレルギーをもつ多くのユーザから絶大な支持を受けた。SolusOSはDebianベースであり、GNOME 3を採用しているのだが、GTK2と完全互換を実現しており、GNOME 2から離れられないユーザにはもってこいのディストロである。もちろん、Linux初心者にも使いやすい設計となっており、どんなレベルのユーザにとっても満足度の高いLook&Feelを提供するモダンなディストロとして、リリース以来、人気を博してきた。

そのSolusOSを作ったロンドン在住の開発者Ikey Doherty氏がいま、非常に困難な状況にある。

12月15日ごろ、自宅アパートで作業をしていたDoherty氏は部屋の中で何かが焦げている臭いと白煙に気づく。部屋の暖房用のヒーターユニットが発火していたのだ。Doherty氏は燃え始めたユニットを素手で取り外して急いでバスルームに運び、バスタブに投げ込んで蛇口から大量の水を注いだ。ほどなくして火は収まったものの、Doherty氏は溶けたプラスチックで手足にやけどを負い、さらに煙の吸入で喉も痛めてしまう。

だが身体に負った傷よりもさらに過酷な事態がDoherty氏を待ち受けていた。アパートの大家はこの火事がすべてDoherty氏の過失によるものと主張、賠償の請求などを行うとしている。ヒーターは部屋に備え付けのものであり、安全スイッチが正しく稼働しなかったなどの責任はDoherty氏にはないと主張することもできるが、それを証明するには当然ながら時間がかかる。Doherty氏がすばやく行動しなければアパート全体が火に包まれていたかもしれないと言っても、大家はまったく聞く耳をもたなかった。

「とにかく、このアパートに二度と戻ってくることは許さない⁠⁠─大家からアパートを叩き出されたDoherty氏は文字通り、住むところをなくしてしまった。もちろんコードを書く場所もない。このままではSolusOSプロジェクトは宙に浮いてしまうことにもなりかねない。

The Blog of Helios: Burnin' for You....A Developer's Nightmare

Doherty氏自身は今回のことに関し、とくに支援を要請するコメントは発表しておらず、SolusOSコミュニティも具体的な対策を見い出せていない。現在、一部の支援者がSolusOSの寄付金受付のページからの寄付を呼びかけている。いずれにしろ、Doherty氏の去就が落ち着くまで、ユーザ待望のSolusOS 2の開発は若干遅れることになりそうだ。

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