8月27日(米国時間)、Red Hatは同社のCTOであったブライアン・スティーブンス(Brian Stevens)氏の辞任を発表した。辞任の理由は明らかにされていない。Red HatのCEOであるジム・ホワイトハースト(Jim Whitehurst)氏は「ブライアンのRed Hatに対する長年の、そして数々の貢献に我々は心から感謝する。彼の今後の発展を祈りたい」と短いコメントを出すに留めている。技術面だけもビジネス面からもRed Hatを支えてきた有名CTOの辞任に、Red Hat関係者だけでなく、業界全体にも大きな衝撃が広がっている。
スティーブンス氏は2001年にRed HatのCTOに就任、以来、Red Hat Enterprie Linux(RHEL)の開発やGluster、Ceph、OpenShiftといったオープンソース企業の買収などを指揮/統括してきた人物だ。RHELのクローンOSであるCentOSをRed Hatエコシステムに取り込んだのもスティーブンス氏の決断による。また、話題になったRHEL 7へのDocker搭載や、同社のクラウド戦略におけるOpenStackの選択も、スティーブンス氏のリーダーシップによるところが大きい。Red Hatは2012年に10億ドル企業の仲間入りを果たしているが、同氏の貢献なくてはその栄誉は望めなかったはずだ。
文字通りRed Hatの顔として、オープンソースコミュニティとエンタープライズ業界の橋渡しをしてきた同氏が、なぜ突然辞任するに至ったのか、業界ではさまざまな憶測が流れている。Red Hatはスティーブンス氏の辞任に伴い、一時的なCTOとしてプロダクト&テクノロジ部門プレジデントのポール・コーミア(Paul Cormier)氏の就任を発表しているが、一部ではコーミア氏との間に確執があったのではないかという噂もある。オープンソース界隈の自由な空気を好むスティーブンス氏と、エンタープライズ寄りの戦略を重視しがちな経営トップ陣との間に大きな意見の相違があったとしても不思議ではない。
いずれにしろ、Red Hatの"オープンソース企業"としてのブランドはスティーブンス氏の実力によって確立された部分が大きいだけに、同氏が去ったRed Hatが今後どうやってそのブランドを維持していくのか、業界の注目が集まるところだといえる。