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オープンソースのオフィススイートといえばいまではLibreOffice以外考えにくいが,そのLibreOfficeが誕生するきっかけとなったプロジェクトに「OpenOffice.org」があったことをご存知の方も多いだろう。実はApache Foudation配下の「Apache OpenOffice」として細々とプロジェクトが継続していたのだが,ついにその寿命が名実ともに尽きる瞬間が刻一刻と迫っているようだ。
「私は定点観測を続けてきたが,Apache OpenOfficeプロジェクトは,プロジェクトとしてエネルギッシュな活動を続けるにはそのキャパシティに限界がある」―こんな書き出しで始まるメールが9月1日,OpenOffice開発者メーリングリストに投稿された。投稿したののはOpenOfficeプロジェクトのチェア(代表)を務めるデニス・ハミルトン(Dennis Hamilton)氏である。ハミルトン氏は続けて,OpenOfficeプロジェクトが深刻な開発者不足に直面しており,このままではApacheプロジェクトとして存続してくために必要な「The Apache Project Maturity Model(Apacheプロジェクトの成熟モデル)」の要件を満たせない現状を述べている。
- [DISCUSS] What Would OpenOffice Retirement Involve? (long) - Dennis E. Hamilton
とくにハミルトン氏が指摘しているのは,クオリティに関わる部分のQU20「プロジェクトはソフトウェアをセキュアにしてくいことに高いプライオリティを置かなければならない」とQU50「プロジェクトは迅速にバグレポートに対応していかなければならない」について,OpenOfficeがプロジェクトとして対応しきれなくなっているという点だ。少なくとも3人は必要なPMC(Project Management Committee)メンバーも現状ではひとりもいない状態であり,新しいリリースはおろか,セキュリティフィックスすら困難な状況に陥っている。これ以上Apacheプロジェクトとして存続させていくのは難しいと判断したハミルトン氏は,コミュニティに対しOpenOfficeプロジェクトの終了を提案したというわけだ。
ちなみにOpenOfficeの最新アップデートは2015年10月28日に公開されたOpenOffice 4.1.2である。LibreOfficeの最新版がつい先日,8月29日に出ていることを考えると,いかにプロジェクトとしての活性度に差があるか,一目瞭然である。
もっともすべての開発メンバーがハミルトン氏の提案に賛成しているわけではなく,一部には「Mac版のサポートを一時的にやめるなど開発者の負荷を軽減して続けるべき」という声も上がっている。だがOpenOfficeがそんな状態にある一方で,LibreOfficeはいまも活発な活動を続けており,これ以上,OpenOfficeの存続に意義を見出すことは難しい。
思い返せば7年前の2009年,OracleがSun Microsystems買収を発表し,その後主要メンバーのほとんどがLibreOfficeへと移ったときから,OpenOfficeはこうなることが決まっていたといえる。死亡宣言までにこれほどかかったのはやや長すぎる気もするが,むしろOracleに飼い殺しにされたままの状態でいるよりは,Apacheプロジェクトとしてリタイアできるだけ幸運だったのかもしれない。