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2017年2月16日Windowsへの再移行が決定間近? ―混沌とするミュンヘン市IT事情

欧州では2000年代から国家や地方自治体のLinux/オープンソース採用が進んでおり、そのなかでも独ミュンヘンの導入事例 ―2003年から10年をかけてWindowsからLinuxへと1万5,000台ものデスクトップ環境を移行した案件は、1000万ユーロを超えるコスト削減効果を実現した自治体の成功事例として、当時の競合だったMicrosoftのFUD(ネガキャン)も含め、大きな話題となった。そのミュンヘンに現在、今度はLinuxからWindowsへとリプレースする話が持ち上がっており、市関係者を超えて議論が拡がっている。

Why Munich made the switch from Windows to Linux-and may be reversing course - TechRepublic

今回の"Windowsへの移行プロポーサル"、そもそもの始まりは2014年にミュンヘン市長に当選したDieter Reiter氏が就任早々、⁠WindowsからLinuxへの移行は間違いだった」と公式に噛みついたことによる。その後、Reiter市長はAccentureにミュンヘン市のIT環境の調査を依頼、⁠ミュンヘン市は旧式なITに縛られており、生産性に多くの無駄が生じている」という報告に、Reiter市長は「この無駄はLiMuxの移行にもとづくもので、Windowsへの回帰を検討すべきである」と明言し、2年がかりで今回の移行へとこぎつけたようだ。予定では2021年までに現在のデスクトップ環境をWindows 10とOffice 2016へと移行するという。もっともAccentureの報告書では"無駄"の原因がデスクトップ環境(LiMuX+LibreOffice)にあるとは言及されていない。

一説によれば、Microsoftのドイツ本社をミュンヘンに誘致したがっていたReiter市長が、⁠ミュンヘンに来てくれればデスクトップ環境をWindowsに戻す」とMicrosoftに約束、その後、Microsoftは実際にミュンヘンに本社を置いており、約束をどうしても果たしたいReiter市長がWindowsへのリプレースに半ば強引に動いたとされている。少なくともReiter市長はみずから「私はMicrosoftのファン」と公言しており、Microsoftとの間で何らかの話し合いが持たれたのは確かなようだ。

この動きに対し、当然ながら各方面から反対の声が上がっている。⁠ミュンヘンにあるのはソフトウェアの問題ではない、ITの構造の問題だ」⁠緑の党の市議会議員⁠⁠、⁠LiMuxはこれまで市のIT環境としての責任を果たしてきた。なぜこれを捨てる必要があるのか」⁠ドイツ海賊党⁠⁠、⁠悪い冗談にも程がある。LiMuxを捨てることがどういうことなのか、彼らはまるでわかっていない」⁠Free Software Foundation幹部)など、オープンソース関係者やReiter市長の反対勢力は強い口調で批判している。

トップが変わればIT施策も変わる - 日本ではあまり実感としてわかないが、オバマ政権からトランプ政権に変わって大混乱を着たしているシリコンバレーのIT企業の例を引くまでもなく、IT企業は時の政権と結びつきやすい。特定のベンダによる支配を、米国よりも嫌う傾向が強い欧州の大都市で起こったリプレース騒動、来週には正式にその正否が決定される予定だ。

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