4月5日にUbuntuファウンダーのマーク・シャトルワース(Mark Shuttleworth)が発表したUnity 8開発中止のアナウンスは多くのLinuxユーザ/開発者に衝撃を与えた。とくにスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでLinux環境を構築したいと願っていたユーザにとって、Unity消滅にともなうUbuntu Touchの開発中止のニュースはかなり大きなショックだったようだ。
これまでUbuntu Touch以外にもいくつかのモバイルLinux ―Maemo、Meego、Mer、SailfishOS、Plasma Mobileなどのプロジェクトが立ち上がり、そして消えていった。厳密に言えば細々と続いているものもあるが、どれもこれもAndroidの対抗になりえる可能性はきわめて薄い。エコシステムを構築できる気配がまるでないからだ。そうした中、Ubuntu Touchはそこそこ認知された、しかも企業からのバックアップを得られている数少ないプロジェクトだったが、その灯も消えようとしている。
それでもやはり、オープンソースな活動をしている人たちは"標準化"ということに強くこだわる傾向がある。オープンで標準化された基盤の上でこそ、多様性は生まれる。それはモバイルLinuxについても同じ ―そう考えた開発者グループが立ち上げた新たなモバイルLinuxへの取り組みが「Project Halium」だ。
- Halium is in the air! -Halium Project
Project Haliumはまだ構想段階で、実際に開発が開始されている状況ではないが、プロジェクトメンバーのBhushan Shahによれば、Haliumのスタックには以下が含まれる予定だという。
- Linuxカーネル
- Android HAL(Hardware Abstraction Layer)および関連インタフェース
- Libhybris
- センサー
- カメラ
- RILd(Radio Interface Layer daemon)
- ビルド環境およびスクリプト
- GPS(MozillaのAGPS)
- Pulseaudio
- メディアコーデック
- oFono(テレフォニーアプリ開発プラットフォーム)
一方でQtやWaylandといったディスプレイサーバは含めないとのこと。ツールキットやユーザインタフェース、アプリケーションも含めず、そうした部分はそれぞれのディストリビューションに任せ、HaliumはOSの基盤となる部分を構築することを目的とする。なおsystemdの採用は検討中のようだ。
これらのスタックを含めた理由としてShahは「AsteroidOS、LuneOS、Mer、Plasma Mobile、SailfishOS、そしてUbuntu Touch、これらのモバイルOSはいずれもLinuxカーネルにAndroid HAL、そしてLibhybrisを実装している。それならハードウェアへのアクションを制御するミドルウェアをこれらで標準化したプラットフォームを提供すればいい」としている。過去のモバイルLinuxプロジェクトが乱立しては衰退したのも、互いに共通化し、協力できるはずの部分で協力することができなかったから、というのがHaliumの主張だ。"標準化"に徹底的にこだわることでProject Haliumは過去のモバイルLinuxプロジェクトとは違う道をめざしていく。