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2017年10月6日Oracle、連邦政府に「オープンソースは民間企業で使われなくなっているから利用を再考すべき」アドバイス ―炎上に

「オープンソースソフトウェアの活用は民間企業において急激に落ち込んでいるという事実がある(the fact is that the use of open source software has been declining rapidly in the private sector⁠⁠ - 9月20日(米国時間)付けでOracleのシニアバイスプレジデントが米国技術評議会(ATC: American Technology Council)に提出したパブリックコメントの内容が「あまりにもオープンソースへのFUDに満ちている」としてTwitterなどのソーシャル上で話題となり、やや炎上ぎみとなっている。

Liddell letter temp -ATC-Response-1(PDF)

ATCはその名の通り、米連邦政府のIT化を促進するための評議会で、今年5月にトランプ大統領がその設立を決定し大統領令に署名、6月には大統領上級顧問のJared Kushnerが主催者となり第1回目の会合が開かれている。議長(ディレクター)は元MicrosoftのCOOであるChristopher Liddellが務め、メンバーにはAppleのTim Cook、AmazonのJeff Bezos、MicrosoftのSatya Nadellaなど世界的IT企業の大物が名を連ねており、サイバーテロへの対策や行政サービスの効率化などを議論する。Oracle共同CEOのSafra Catzもメンバーのひとりだ。

ATCには設立時からいくつか重要なタスクが課せられている。そのひとつが「連邦政府のITモダナイゼーションに関する大統領へのレポート(Report to the President on Federal IT Modernization⁠⁠」で、米国国土安全保障省(DHS)や米国連邦調達庁(GSA)など関連する政府機関の意見や状況を取りまとめ、連邦政府のITシステムを改善するための施策につなげるレポートを作成することが求められている。このレポート作成の一環としてATCは一般からの意見をRFC(Request for Comment)として募集、RFCはすでに締め切られたが、その回答はすべてGitHub上のGSAのリポジトリから一般公開されている。

GSA/modernization -GitHub

一覧を見るとわかるように、このRFCにはMicrosoftやGoogle、Akamai、VMware、CiscoなどATCのメンバー企業も含む大手IT企業からの提言も多い。そしてOracleもまた、同社のシニアバイスプレジデント Kenneth Glueckが代表してコメントを送付しており、その中で「現在の政府機関がとらわれている(とOracleには思える)3つの間違った物語(false narrative⁠⁠」として以下の項目を挙げている。

  1. 政府はシリコンバレーの急速なイノベーションを真似しようと試みるべきである(Government should attempt to emulate the fast-paced innovation of Silicon Valley)
  2. 政府におけるIT開発の内製化のノウハウはITモダナイゼーションにとって重要である(In-house government IT development know-how is critical for IT modernization)
  3. オープンソーステクノロジの活用を義務付けることは必要である。なぜなら納税者の税金によって開発されたテクノロジは納税者が利用可能でなければならないからだ(The mandate to use open source technology is required because technology developed at taxpayer expense must be available to the taxpayer)

オバマ政権時代、米国では政府機関でのオープンソース活用が進み、GSAやその下部組織である18Fなども開発とデリバリにおけるアジリティを重視し、内製化とそのノウハウの蓄積を推進、その実現のためにオープンソースとパブリッククラウドによるシステム構築を積極的に行ってきた。しかしGlueck、というよりOracleの提言を読むと、前政権のそれらの施策が"間違った物語"であることを印象付けようとしているようにさえ思える。

Glueckはこのコメントで"open source"というキーワードを12回使っているが、いずれもネガティブな文脈で語られており、たとえば「カスタムソフトウェアをオープンソースライセンスのもとで開発し、さらにそのコードをオープンにすることは(政府機関に)不必要なセキュリティリスクを招く」とオープンソースのセキュリティリスクを強調、その例として9月に米国で大きな問題となった米信用情報機関大手のEquifaxにおける情報漏洩事件を挙げ、漏洩の原因を「オープンソースのApache Strutsフレームワークのエクスプロイトに由来している」と指摘している。またコメントの最後のほうでは「cloud.gov(AWSが連邦政府専用に提供しているリージョン)とオープンソースのようなテクノロジプリファレンスに関しては直ちにその利用について再考すべき」と強調、オープンソースとAWSへの疑義を明確に示している。

このOracleの提言に対し、当然ながらオープンソース関係者からは強い批判の声が上がっている。

Oracleは10月第1週、サンフランシスコにおいて同社最大の年次カンファレンス「Oracle OpenWorld 2017」を開催した。このカンファレンスの名前に付けられてる"Open"とはいったい何を意味する言葉なのか、いつかLarry Ellisonにコメントしてほしい気がする。

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