米国のカリフォルニア州やワシントン州などには「SPC(Social Purpose Corporation) 」という法人格を名乗る企業が存在する。その名の通り、社会貢献や社会的価値の向上を事業の目的にする企業が多いが、決して非営利組織ではなく、製品やサービスの提供を通して利益を得ており、事業方針の意思決定の際に必ずしも社会的な目的が織り込まれていなくてもかまわない。利益の追求よりも、事業を通した公共の利益の最大化を第一義に掲げる企業に使われており、テクノロジカンパニーの中にもSPCを名乗る企業は少なくない。
かつてPurism, Inc.と名乗っていたPurism も2017年からSPCを名乗るIT企業のひとつだ。カリフォルニア州サンフランシスコを本拠とする同社は「フリーダム、プライバシー、そしてセキュリティがほかの何よりもつねに優先される製品/サービスを提供することが我々のミッション」と公言しており、SPCとして自社の利益よりも公共の利益を優先することを謳っている。
Purismは「Librem」というブランドの下でノートPCの「Librem 13」やデスクトップの「Librem 15」 、USBセキュリティトークンの「Librem Key」などを展開しているが、これらのハードウェアはオープンソースのPureOSをベースにしている。DebianベースのPureOSは「セキュリティやプライバシーに対してもっとも厳格に対処した、フリーダムなOS」であり、プロプライエタリなソフトウェアをパッケージに含まないことが採用の大きな理由としている。
7月29日(米国時間) 、Purismは同社のブログで新製品となるスマートフォン「Librem 5」を2019年度第3四半期中に出荷することを明らかにした。OSはもちろんPureOSで価格は699ドル、すでに事前注文を受け付けている。
Librem 5 Smartphone – Final Specs Announced -Purism
Librem 5 -Purism
おもなスペックは以下の通り。
5.7インチ IPS TFTスクリーン、解像度720×1440
i.MX8M(クアッドコア) 、最大1.5GHz
3GB RAM
32GB内蔵ストレージ + microSD
802.11abgn 2.4 Ghz / 5Ghz + Bluetooth 4
フロントカメラ: 8Mピクセル、バックカメラ: 13Mピクセル + LEDフラッシュ
Librem 5(Purismのサイトより)
Librem 5のリリースにあたり、Purismは「我々はスマートフォンがユーザのデジタルライフを追跡してはならないと信じている(We believe phones should not track you nor exploit your digital life.) 」というポリシーを強調しており、ユーザの行動や習慣を記録/追跡するサービスやアプリケーションを排除するため、Androidではなく100%オープンソースで透明性の高いPureOSを選んだことをあらためて強調している。
「Librem 5は誰にも追跡されないデジタルライフの実現に向けての最初の一歩に過ぎない」 ―Android以外のLinuxベースのスマートフォンとして、SPCというパブリックなイメージを強調するテクノロジカンパニーの製品として、セキュリティやプライバシーの担保を"Social Purpose"として追い求めていく。