Ubuntu 10.10の開発
Ubuntu 10.10 “Maverick Meerkat” Alpha3
8月3日に予定通りに フリーズがかけられ、少なくともMilestone bug は非常に順調にクリアされているため[1] 、この原稿が公開されている頃には、Ubuntu 10.10のAlpha3がリリースされているはずです。
この後、最後の「開発フェーズ」であるBeta1トラックが始まり、「 仕上げ」に属するRCトラックを経由してUbuntu 10.10が10月10日にリリースされる予定 です。
なお、Alpha3タイミングのLucid に比べるとバーンダウンチャートの見た目は非常に厳しめ に見えますが、Lucidとは開発ポリシーが異なる[2] こともあり、現状では大きな問題とはなっていません。また、Linux Kernel 2.6.35のリリース 後、Ubuntu独自の変更点を加えたubuntu-kernelのパッチ作業はほぼ完了 しており、以降は大きな変更なく開発が進められるはずです[3] 。
[1] 8月4日深夜時点で、LP#605488 ・LP#605739 などのlinux-meta-ti-omap(Ti OMAP系SoC用カーネル)に属するバグが妙に目立つ上、Upstream(Tiの開発しているスペシャル版カーネル)とのマージ作業が進んでいます。アップデートした瞬間に不安定になる等、全体としてTi OMAP用カーネルの状況はあまり良くありませんが、Ti OMAPを利用する環境はそれほど多くなく(BeagleBoardやIGEPv2など)一般的なUbuntuの利用には問題はないはずです。もっとも、10.10の開発テーマの一つは「ARM向け対応の強化」なので、動かないことそのものはあまり良い状態ではありません。
決済可能なソフトウェアセンター
Ubuntu 10.10を目標に、software centerで「何か」( 注4 )を買えるように する拡張が準備されています。Whiteboardの記述から、『 有償専用のリポジトリを追加し、「 購入した」何かを複数のコンピューターで利用できるようにする、「 購入者専用」機能はPrivate PPA機能(user/password対で認証してアクセスするリポジトリ)で実現する』といった要素を見て取ることができ、かなり本格的な有償ソフトウェア(?)販売の仕組みが準備されるように見えます。Milestone targetはAlpha 3ですので、遠からず詳細が見えてくるでしょう。
[4] 原文では「In Maverick we will offer *one thing* for sale to end users.」や、「 Something, at least one thing, is available for purchase from the software center」などといった、非常にあいまいな記述となっています。単に「何でもいいから何か」というニュアンスも見て取れますが、OEMの都合で公開できないのかもしれない、といった深読みも可能で、何が出てくるのかは非常に予測しにくい状態です。
Ubuntu Fontのベータテスト
Ubuntu Font(2010月7月16日号 参照)の、事実上の公開ベータテスト が始まっています。これは、Open Team(誰でも参加できるチーム)であるKubuntu Users向けにUbuntu Fontのベータテストが開始されたため、「 Ubuntu Fontを試したければKubuntu Usersにjoinすればよい」という状態になったためです。Kubuntuを利用していて、Ubuntu Fontのマッチングを確認したい方は、ベータテストに参加してテストしてみるのが良いでしょう。
なお、あくまでKubuntu Users向けの公開ですので、Kubuntuを実際にお使いの方で、なんらかのフィードバックを返しうる(返せる可能性のある)方だけが参加すべきです。Kubuntuのユーザーでない場合は、8月8日の公式Public Beta をお待ちください。
音楽プレイヤーと一体化した音量インジケータ
Mark Shuttleworthのblogに、10.10で採用される(予定の)新しいsound-indicator(音量アプレット)のモックアップ が掲載されています。画像はRhythmboxの操作パネルやトラック表示・アートワーク表示を兼ねたものとなるため、「 わざわざ音楽プレイヤーをアクティブにしなくても、選曲等の操作が音量アプレットから可能」というものになる予定です。なお、本文の記述通りに実装されるなら、MPRIS(Media Player Remote Interfacing Specification)経由でさまざまなメディアプレイヤーとの連携が可能になるはずです。
M+1の開発
Ubuntu 10.10の開発フェーズがまだ完了していないものの、すでに「M+1」( 推定:「Nで始まる何か」 )に向けた動きも始まっています。
AppArmorのsecurity-next入り
Ubuntuで利用されている強制アクセス制御機能であるAppArmor[5] のフルセットが、2.6.36 Kernelのsecurity-nextブランチに含まれました 。LKMLでの議論では一時は強制アクセス制御を提供するためのフックすら除去され、各ディストリビューションごとに「大手術」を施さないと利用できない状態になるおそれもありましたが、紆余曲折[6] の末にLinux KernelのMainlineに含まれる機能となりました[7] 。
UbuntuではすでにAppArmorを利用できる状態が維持されていますので[8] 、Mainline化は直接Ubuntuのユーザーに影響を及ぼすものではありませんが、各種アプリケーション向けプロファイル(AppArmorの設定ファイル)の作成など、間接的に良い影響を与えるはずです。
[5] もともとはSuSE Linux用(「 SUSE」ではなく「SuSE」だった時代)でしたが、SuSEのNovellによる買収を経て、主要開発者の一人であるJohn JohansenがCanonicalに入社、Ubuntuの主要セキュリティ機能として取り込み、という歴史を辿っています。
起動音変更
Ubuntuの最初期からのトレードマークの一つだった、「 ログイン効果音」( 太鼓による「ぽこぽん」という音)と別れる日がやってきそうです。効果音や外観のデザインを担当するCanonicalのDesign Teamのblogで、M+1世代(11.04)に向けた新しい効果音の募集 が開始されています。〆切は2010年10月18日です。
効果音作成や、短いテーマの作曲に自信のある方は、応募してみてみてはいかがでしょうか。
Full Circle Magazine issue 39
Ubuntuに関する記事を集めた月刊のWebマガジンであるFull Circle Magazineの39 号がリリースされました。主な内容は次の通りです。
ターミナル操作のすすめ。wgetとcurlでHTTPリクエストを扱う方法を学びます。
Pythonによるプログラミング入門。Pythonを使ってCursesライブラリを扱う方法を学びます。
仮想化入門。VirtualBoxによる仮想化環境にFedora 13を導入します。
HowTo: /proc/meminfo の読み方を学びます。
などなど。
Ubuntu Weekly Newsletter #204
Ubuntu Weekly Newsletter #204 がリリースされています。
その他のニュース
root権限でアプリケーションを実行するショートカット をメニューに登録する方法。
Dell OpenManage(Dell製サーバーの管理ツール)のUbuntu版に関するアナウンス [9] 。OpenManage Server Administratorが利用できる ようになっています。
[9] 『Dell uses a private instance of the OpenSUSE Build Service (http://build.opensuse.org) to compile all of our OpenManage code』などという興味深い記述もあります。
今週のセキュリティアップデート
usn-964-2 :Likewise Openの再アップデート
usn-964-1 の再アップデートです。LP#610300 で報告されたアップデート不能なバグを修正します。
対処方法:アップデータを適用することで、問題を解決できます。