Ubuntu Weekly Topics

2012年2月10日号「fatrace」・Multi Monitor Greeterのモックアップ・Zeitgeistの履歴収集範囲の調整・eglibc-2.15・ALSA 1.0.25の投入・Kubuntuの微妙な体制変更・GSoC・UWN#251

Preciseの開発

fatrace

Ubuntuのデバッグのためのツールが増えました。fatracefile access traceは、⁠各種trace系コマンド(strace等)と同じ感覚で利用でき、かつ、ファイルへの入出力のみを報告してくれる」ツールです。

strace等は引数に実行コマンドを取りますが、fatraceはroot権限で単に実行するだけで、システム全域のファイルアクセスを、プロセスごとに報告してくれます。fatrace本体は小さなCのプログラムで、ライセンスはGPLv3(orそれ以降)です。

この原稿を書きながらfatraceを実行すると、以下のように情報が拾えます[1]⁠。

$ sudo ./fatrace -p `pidof gnome-terminal`
mozc_server(3341): O device 8:1 inode 3278002
monitorzc_server(3341): W device 8:1 inode 3278002
gvim(7786): W /home/hito/Dropbox/Private/Genkou/20120209_ubuntu_weekly_topics/.ubuntu_weekly_topics.txt.swp
gvim(7786): W /home/hito/Dropbox/Private/Genkou/20120209_ubuntu_weekly_topics/.ubuntu_weekly_topics.txt.swp
dropbox(2296): R /home/hito/.dropbox/filecache.dbx
dropbox(2296): R /home/hito/.dropbox/filecache.dbx
dropbox(2296): O /home/hito/Dropbox/Private/Genkou/20120209_ubuntu_weekly_topics/.ubuntu_weekly_topics.txt.swp
dropbox(2296): R /home/hito/Dropbox/Private/Genkou/20120209_ubuntu_weekly_topics/.ubuntu_weekly_topics.txt.swp

開発の主な動機は、⁠省電力化のために、あきらかに不要なディスクアクセスを行なっているプロセスを見つけ出す」注2作業を行う上で、適切なツールがなかったことだ、と作者であるMartin Pittが説明していますが、簡易デバッグや、⁠GUI操作後にどのような設定ファイルが更新されているか」といった調査にも応用が効きそうです[3]⁠。

Multi-Monitor Greeter

12.04の大きな開発目標として、省電力以外に「マルチモニタサポート」があります。複数モニタを「使いやすく」サポートするためには多くの作業が必要で、12.10までをターゲットにした長丁場の作業[4]です。

マルチモニタ環境を踏まえると、⁠どれかのモニタにだけログイン画面が表示される」という動作はダメだ、ということで、マルチモニタ環境におけるログイン画面のプロトタイプが開発されています。このプロトタイプ通りに動作するのはまだ先の話ですが、マルチモニタ環境がある方は試してみると楽しいはずです(モニタが一枚しかない環境で試すととても悲しい気分になれるので、少なくともデュアルディスプレイ環境で試してください⁠⁠。

Zeitgeistの履歴収集範囲の調整

現在のUnityの「履歴」関連の機能は、バックエンドにZeitgeistを用いています。UnityのLensで最近使ったファイルやアプリケーションを呼び出せるのは非常に便利なのですが、一方で、⁠最近使ったファイル」が常に履歴に残ってしまう、という問題も残っています。

12.04世代では、Zeitgeistの収集範囲を「システム設定」から設定できるようになりそうです。

eglibc-2.15・ALSA 1.0.25の投入

12.04で利用されるeglibc-2.15パッケージ群のテストと、ALSA 1.0.25ベースのパッケージの投入が行われています。

KubuntuとCanonical

KubuntuがXubuntuやLubuntuなどと同様の、⁠Canonicalが直接作業を行わず、コミュニティベースの作業で提供される」ステータスに変更されます。

ただし、これによってKubuntuに起こる変化はほとんどないでしょう。

あくまでCanonicalからの直接的なコミットが止まるだけで、Ubuntuコミュニティに提供されたサーバーリソースの利用等、間接的な支援は変わらず提供されますし、⁠そもそもCanonical従業員がKubuntuに対して割けていたリソースは極小なので、⁠直接的なコミット」が失われた状態は、今にはじまったことではありません(Kubuntu開始時点からコミュニティベースの作業で提供されてきているので、これまでと大きな差はありません⁠⁠。

Google Summer of Code 2012

今年もGoogle Summer of Code(GSoC)の時期がやってきました[5]⁠。GSoC 2012に向けて、Ubuntuでもテーマ/参加学生の公募が行われています。

現時点でのテーマ一覧はwiki.ubuntu.com上にまとめられています。現在学生であり、かつ、腕に覚えのある方はチャレンジを検討してみてはいかがでしょうか。なお、2月9日時点でのテーマは以下となっています。このうちいくつかは採用され、Ubuntuのベテラン開発者の支援のもと、学生が腕を振るう形で成果物が作られることになります。

  • Improving Harvest
  • Implement syslog namespace
  • Improved multiple devpts mounts support
  • Implement cgroup fake root

UWN#251

Ubuntu Weekly Newsletter #251がリリースされています。

その他のニュース

今週のセキュリティアップデート

usn-1354-1:usbmuxdのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001574.html
  • Ubuntu 11.10・11.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-0065を修正します。
  • usbmuxdがUSBデバイスのSerialNumberフィールドを読み取る際、適切な境界値チェックを行なっていませんでした。悪意ある細工を施したUSBデバイスをマシンに装着することで、usbmuxdユーザー権限で任意のコードを実行できるおそれがあります。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1355-1usn-1355-2usn-1355-3usn-1353-1:Firefox・Mozvoikko・ubufox・webfav・xulrunnerのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001576.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001575.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001577.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001579.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-3659, CVE-2012-0442, CVE-2012-0443, CVE-2012-0444, CVE-2012-0445, CVE-2012-0446, CVE-2012-0447, CVE-2012-0449, CVE-2012-0450を修正します。
  • Firefox 10のUbuntuパッケージ版と、それに伴う関連パッケージの更新です。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、Firefoxを再起動してください。
usn-1356-1:Linux kernel (OMAP4) のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001578.html
  • Ubuntu 11.04用のOMAP4カーネルのアップデータがリリースされています。CVE-2012-0038, CVE-2012-0044, CVE-2012-0207を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1350-1:Thunderbirdのセキュリティアップデート

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