Ubuntu Weekly Topics

2012年2月17日号Ubuntu Business Desktop・PreciseのFeature Freezeとデザイン更新・Ubuntu Server Survey 2012・Full Circle Magazine 11.10+Unity特集・UWN#252

Ubuntu Business Desktop Remix

Ubuntuの「企業デスクトップ向け」Remixとして、Ubuntu Business Desktop Remix登場しました。これは、FlashやOpenJDK、VMware View(VMware Infrastructure環境向けのクライアント)など、企業内でUbuntuを利用する際に必要なソフトウェアをあらかじめ追加したものです。これにより、企業内でのUbuntuの利用が促進されることが期待されます。

なお、あくまで「エンタープライズ向けリリース」でしかなく、⁠エンタープライズ向けサポート付き有償版(無償版はない⁠⁠」ではありません。Business Desktopは「通常のUbuntuに、Canonicalのpartnerリポジトリから導入できるパッケージを初期状態で追加したもの」で、⁠サポート契約がなければ手に入らない」パッケージはありません。通常のUbuntuを用いて同じ環境を作ることもできますし、同等のISOイメージを作成して活用することもできます(ただし、partnerリポジトリにあるパッケージを追加するとRemixの標準ルールから外れるので、Ubuntuの名前で配布するには許諾を得ないといけません⁠⁠。

実際の入手は、ubuntu.comから行えます(要登録⁠⁠。

Preciseの開発

Precise(12.04)の開発はFeature Freezeを迎えて、⁠リリースのためのフェーズ」に移りつつあります。ここから2ヶ月ほどかけて、すでに搭載された機能のブラッシュアップ・モックアップ的な機能の実装・テストが終了した新機能のマージと、大きな作業を行った上でQAが実施され、リリース版に至ります。Preciseのリリーススケジュールはwiki.ubuntu.comの記載を参照してください。

Preciseのデザイン

UIまわりがフリーズされるのはまだ先なのですが、この1週間ほどの間に、12.04のUIデザインが変化しています。システム設定画面もリファインされています。

Before:
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After:
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GNOME ClassicのIndicator

12.04では、⁠どうしても昔のGNOMEがいい」という人も幸せに作業ができそうです。11.10ではUnity 2Dが導入されるとともに、GNOME2時代の「パネル」ベースのデスクトップは利用しにくい状態となっていました。gnome-session-fallbackを追加すれば「パネル」ベースデスクトップを利用できるものの、一部のIndicatorが正常に表示されないため、事実上デスクトップとしては使えない状態になっていたためです。

12.04ではこの状況は改善され、⁠OSインストール後にgnome-session-fallbackをユーザーがインストール必要がある」という状態は変わらないものの、Indicatorの問題は解決した状態になりそうです。

Ubuntu Server Survey 2012

Ubuntu Serverの利用状況調査である「Ubuntu Server Survey」の結果が公開されています。

きちんと解釈するには実際のPDFや質問を見ながら考える必要がありますが、特に興味深い解釈が可能な部分を列挙しておきます。

  • P.4: Ubuntu Serverといえども、主な利用用途はWebやファイルサーバー、データベースサーバーやバックアップサーバーが中心で、⁠プライベートクラウド」的な使われ方は少ない。ただし、仮想化のホスト環境としてはよく使われている。
  • P.5: ⁠クラウドコンピューティング」⁠グリッドコンピューティング」は他の要素、バックアップやセキュリティ対応・システム管理等に比べると「必要である」と考えていないユーザーが多い。
  • P.6: 8.04 LTSのユーザーのかなりの部分は10.04 LTSに移行している。その一方で、⁠最新のUbuntu Server」を追いかけているユーザーが一定率で存在する。
  • P.7: タワー型サーバーやデスクトップPCの転用ケースがそれなりに多い。⁠それなりに」というか、シェアNo.1がタワー&デスクトップ。
  • P.8: 大抵の問題はUbuntu Doc+Wiki+Forumと「ググって出てきたサイト」で解決してしまっている。
  • P.9: 仮想化ではVMware大人気。
  • P.12: ユーザーを地域別に見ると、ヨーロッパと南北アメリカでほぼ85%強。
  • P.13: Ubuntuの利用を拡大する計画はあるか?」という質問に対して20%強のユーザーがNoと答えている。

Ubuntu Algorithms Team

Ubuntuでは、さまざまな作業を「チーム」に分けて行なっています。チームは複数人で構成され、特定の分野の作業を行います。たとえば我々Ubuntu Japanese Teamは、⁠日本におけるLocal Community(LoCo⁠⁠」という位置づけの、Ubuntuの日本語サポートをより良いものにすること・Ubuntuの使い方を広めることを目的とした「チーム」です。

この「チーム」は、非公式な(=CanonicalやUbuntuコミュニティによる支援のない)ものであれば、数名の賛同者がいれば、比較的容易に作成できます[1]⁠。こうした背景の中で、 ⁠Ubuntu Algorithms Team』というものを作ろうと思うのだけど、これは役に立つだろうか?」という提案が行われています。このチームは、Ubuntuに関するさまざまな「アルゴリズム的な問題」を解決するためのものです。

現在は「こういうチームを作ったら役に立つかな?」という問いかけの段階で、実際にチームとして結実するか、また、どのようなアウトプットが出せるかという部分は未知数ですが、プログラミングの一領域として「アルゴリズムに集中したい」という人材は常に一定数存在するはずなので、そうした人を惹きつけることができるかもしれません。

アルゴリズムやデータ構造だけでなく「複雑性の高い問題」全般を解決する、ということを目的としているようで、⁠起動中・実行時のボトルネックの解析」もターゲットに含められています[2]⁠。

Full Circle Magazine "Ubunty 11.10 and Unity" Special Edition

Ubuntu専門の月刊Webマガジン、⁠Full Circle Magazine」Ubuntu 11.10 + Unity特別版がリリースされています。

UWN#252

Ubuntu Weekly Newsletter #252がリリースされています。

その他のニュース

  • GTDをGNOMEアプリで実現するGTGについて。Twitterなども駆使して、GTDをデジタル機器で実現する方法を支援します。
  • LibreOffice 3.5を既存のUbuntu環境で利用する方法。なお、動作はしますがアップグレード等で問題を起こす可能性があり、お勧めはしません。
  • 「Android環境にUbuntuを入れる」簡単な方法について。rootを取ったAndroid端末に、Android MarketからインストーラーをダウンロードしてUbuntuを導入することができます。TeXliveやGimp・Emacsなどまで入っている「本気」の環境です。
  • Banshee以外のメディアプレイヤーにも対応したMusic Lensについて。
  • Launchpadのアクセス制御の更新について
  • Software CenterからダウンロードされたソフトウェアのTop10情報、2012年2月版
  • TomsHardwareによるUbuntu 11.10のレビュー(Windows 7とのベンチマーク比較を含む⁠⁠。
  • OpenStackをJujuを用いて自動テストできるようにした話。
  • Ubuntu 12.04をサポートするUbuntu Tweak 0.6.1がリリースされました。

今週のセキュリティアップデート

usn-1357-1:OpenSSL のセキュリティアップデート
usn-1358-1usn-1358-2:PHP のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001582.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001585.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.10・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-0441, CVE-2011-4153, CVE-2011-4885, CVE-2012-0057, CVE-2012-0788, CVE-2012-0830, CVE-2012-0831を修正します。
  • 備考:usn-1358-1としてリリースされたアップデータは、ini_get()関数の呼び出し時、magic_quotes_gpcの設定値が正しく反映されていませんでした。usn-1358-2として公開されたバージョンへの更新が必要です。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1359-1:Tomcat のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001583.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-3375, CVE-2011-4858, CVE-2012-0022を修正します。Tomcat 6.0.35相当のセキュリティ修正です。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1360-1:Firefox のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001584.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。Firefox 10.0.1のUbuntuパッケージ版です。CVE-2012-0452を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、Firefoxを再起動してください。
usn-1361-1:Linux kernel のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001586.html
  • Ubuntu 10.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-3353, CVE-2011-4622, CVE-2012-0038, CVE-2012-0044を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1362-1:Linux kernel のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001587.html
  • Ubuntu 11.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-3353, CVE-2011-4622, CVE-2012-0038, CVE-2012-0044を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1363-1:Linux kernel のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001588.html
  • Ubuntu 11.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4622, CVE-2012-0038, CVE-2012-0055, CVE-2012-0207を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1364-1:Linux kernel (OMAP4) のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001589.html
  • Ubuntu 11.10用のアップデータがリリースされています。 CVE-2012-0038}, CVE-2012-0055, CVE-2012-0056, CVE-2012-0207を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1365-1:Puppet のセキュリティアップデートト
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-February/001590.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-0528を修正します。
  • Puppetのアクセス制御が不完全なため、認証済みユーザーが本来の権限を超えた範囲のノードの設定値を閲覧/修正することが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

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