Ubuntu Weekly Topics

2012年4月27日号Ubuntu 12.04 LTS “Precise Pangolin”リリース・12.10 “Quantal Quetzal”・Juju jitsu・12.04の注意点(2)・70ドルのARMデバイス・UWN#262

12.04のリリース

Ubuntu 12.04が最後のFreezeを越え、無事にリリースされました(裏方的にはいろいろな問題があったのですが、無事にリリースされてしまえばすべてよし、と⁠⁠。

なお、推奨は今回も32bitに留まっています。新しいリリースにおいて導入された機能・注意点等は次のリリースノートをご覧ください。ただし、リリースノートの日本語訳は現在作業中です。

Ubuntu 12.10 “Quantal Quetzal”

12.04のリリースの一方、12.10(Q)のコードネームが宣言されました。12.10のコードネームは「Quantal Quetzal」⁠量子的なケツァール)です。ケツァール(カザリキヌバネドリ)の実物はwikipediaを確認してください。非LTS初の鳥類の採用となります。

12.10の目標その他については、Mark Shuttleworthのblogを参照してください。

なお、Markによる明確な宣言として『systemdは利用しない、我々はUpstartを使う。Upstartには競合と違って、十分なテストケースを持っている。そしてUpstartは十分に「どうすべきか」を盛り込んだ設計となっている』というものが含まれており、想像を超えた展開がない限り、14.04 LTSまでの4リリース(12.10・13.04・13.10・14.04)はUpstartベースで行われ、Native Jobへの全面的な切り替え等、これまでの積み残し作業が処理されていくはずです。

12.04の注意点(2)

アップグレード前のチェックリスト

12.04のリリースはちょうとゴールデンウィークの前なので、長期連休の間にアップグレードを、と考えている方も多いでしょう。今回はそんな方に向けて、簡単なチェックリストを準備しました。Ubuntuのアップグレードを行う前にチェックしてみてください。

  • □ バックアップは取りましたか?
  • □ 十分な時間はありますか?
  • □ リリースノートは読みましたか?
  • □ 利用しているPPAは信頼できるものですか?
  • □(11.10からのアップグレードの場合)11.10に満足していますか?
  • □(10.04からアップグレードする場合)LiveCDを触ってみましたか?

各項目の解説は次の通りです。

バックアップは取りましたか?
アップグレードは十分に検証されたプロセスで実施されますが、導入しているソフトウェアや設定の問題で、うまくアップグレードできないこともありえます。バックアップを取っておかないと、⁠元に戻す」こともできなくなるので注意しましょう。
十分な時間はありますか?
アップグレード後に、なんらかの不具合が見つかる可能性もあります。十分な時間をとってアップグレードを行いましょう。
リリースノートは読みましたか?
リリースノートを読まずにアップグレードしてしまうと、既知のバグで時間を無駄にしてしまう可能性があります。
利用しているPPAは信頼できるものですか?
もしも十分なクオリティに達していないPPAを利用していると、アップグレードを阻害してしまう可能性があります。
(11.10からのアップグレードの場合)11.10に満足していますか?
もし満足しているなら、まだアップグレードの必要はないかもしれません。十分にバグ報告が出そろってから更新しても良いはずです。
(10.04からアップグレードする場合)LiveCDを触ってみましたか?
デスクトップはUnityに変更になります。gnome-session-fallbackパッケージを導入することで、⁠これまでのGNOME風」デスクトップを利用することもできますが、大幅な操作の変更を伴うことになります。事前にLiveCDを触ってみましょう。

また、通常、Ubuntuのアップグレードはリリースから数日のあいだは極端にアクセスが集中し、デフォルトの「日本のサーバー」を選択したままだとダウンロードにかなりの時間がかかります。

次のいずれかの対策を行うと、快適にアップグレードできるでしょう。

  • Alaternate CDをダウンロードし、CD経由でのアップグレードを行う。
  • Desktop CDをダウンロードし、Ubiquity経由でのアップグレード(自動的な再インストール)を行う。
  • 「日本のサーバー」以外のサーバーを選択しておき、update-managerを用いてアップグレードする。

Juju jitsuのリリース

11.10~12.04世代の目玉の一つ、⁠Juju」の周辺ツール、Juju-jitsuがリリースされました。⁠jitsu」コマンドを呼び出すことで、Jujuをより簡単に扱うことができます。

なお、明言はされていませんが、おそらく⁠Jitsu⁠これです[1]⁠。

HPのUbuntuサポート

HPのProliantサーバーシリーズの公式なUbuntuサポートが開始されるようになりました。Canonical側もアナウンスを出しています。これにより、Proliantシリーズ上でUbuntuをより簡単に、そしてより安心して使うことができるようになります(要するに「メーカー動作保証」な状態になります⁠⁠。

もっともこれはあくまでworld wideレベルで、日本国内のHPがどのようなサポートやコミットを提供するのか、という点についてはまだ不明確です。

このサポート宣言により、これまでの「Canonical/Ubuntu側がProliantをハードウェア互換性の面で認定する」モデルからさらに踏み込んで、⁠HPからCanonical/Ubuntuにドライバが提供される」という経路も追加されることになります[2]⁠。

Proliantに内蔵されたRAID HBA(SmartArrayシリーズ)はLinux Kernelレベルでサポートされていましたが、HPから直接ドライバの提供を受けることで、⁠リリースされた直後のProliant」をUbuntuで利用しやすくなる、と言えるでしょう。

Cloud Summit

UDSの横で行われるUbuntu Cloud Summitの登壇者情報が公開されています。

70ドルのARM Ubuntuデバイス

70ドルで購入できるARMデバイス、Mele 1000Ubuntuを動かした話とその動画が公開されています。

日本からもEMSによる配送で購入可能で、一万円弱で「おもちゃ」を入手することができそうです。興味のある方は手を出してみてはいかがでしょう。

UWN#262

Ubuntu Weekly Newsletter #262がリリースされています。

その他のニュース

  • Valve Softwareのオンラインゲームソフトウェア配信システム、SteamのLinux版と、さらにSourceエンジンのLinux版の動作について。
  • Googleによるオンラインストレージサービス、Google DriveをUbuntu上のNautilusから利用する話。
  • Universal USB Installerを用いて、Windows環境でUbuntuインストール用USBメモリを作成する方法。
  • Android用Ubuntu Oneクライアントがアップデートされました。
  • オレゴン州政府の事例
  • LightDMのKDE環境向けGreeterについて。
  • 12.10におけるPython3マイグレーションについて。

今週のセキュリティアップデート

usn-1424-1:OpenSSLのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001662.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2006-7250, CVE-2012-1165, CVE-2012-2110を修正します。
  • S/MIMEルーチンにおけるNULLポインタ参照・DERデータファイルの処理における任意のコード実行の危険を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1400-5:GSettings desktop schemasの更新
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001663.html
  • Ubuntu 11.04用のアップデータがリリースされています。usn-1400-1の更新に伴い、GSettingsに格納された不要なProxy設定を削除します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、Firefoxを再起動してください。
usn-1425-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001664.html
  • Ubuntu 10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4347, CVE-2012-0045, CVE-2012-1090, CVE-2012-1097を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1426-1:Linux kernel (EC2)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001665.html
  • Ubuntu 10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4347, CVE-2012-0045, CVE-2012-1090, CVE-2012-1097を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1427-1:MySQLのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001666.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。MySQL 5.1.625.0.96に相当するアップデータです。
  • 備考:リリース方針の変更により、MySQLは最新版リリースに更新されます。セキュリティ更新だけでなく、動作上の変更も服含まれるので注意してください。なお、11.10・11.04・10.04は5.1.62へ、8.04は5.0.96に更新されます。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1428-1:OpenSSLのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001667.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2131を修正します。
  • X509証明書・RSA鍵に含まれるデータの検証時、任意のコードの実行が可能な問題を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。

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