Ubuntu Phoneについて知っておくべきこと
Ubuntu Phoneについて知っておくべきこと(原題:Things You Should Know About Ubuntu Phone)という記事に興味深かかったため、この記事を解説してみます。
記事中のインタビュー回答者はUbuntuのコミュニティマネージャーであるJono Baconです。また、engadgetの記事から多数の引用があります。
なお、前提知識として、1月11日号を今一度読んでおくといいでしょう。
- 従来のUbuntu appは動作する?
特にロックするようなことはしないものの、サポートはしない。画面サイズなど従来のアプリケーションのことは全く考えていないので、実りのある作業はできないのではないか、とのことです。
確かに、例えば5インチのフルHDの解像度でLibreOfficeやGIMPがマトモに使えるのか、と言われるとかなり厳しいはずです。誰かがLibreOfficeやGIMPのQMLフロントエンドを書けば動作するだろうとのことです。
- App storeは?
最初の段階では用意はされるものの、あまり注力はしない、ということのようです。「これが基本的なアプリケーションで、使えるのはこれだけです」ということはしないものの、キャリアと製造メーカー次第だそうです。
- コミュニティを巻き込んだ核となるアプリケーション
Canonicalは積極的に核となるアプリケーションの制作者を探しています。これは別にCanonicalが人材不足というわけではなく、コミュニティに対してできる限り明確に、そしてシンプルに巻き込む筋道を作りたいのだそうです。それに対して、現状まだソースコードが公開されていないではないか、という質問があり、ソースコードは可能な限り早く公開するし、アプリケーションを作るのならSDKがあればよく、これはすでに公開していると回答しています。すでにJono自身がネタになっている題材になっている、核となるアプリケーション[1]であるところJonoBoardが公開されています。
- コントロールするのはユーザーあるいはOEM?
要するにユーザーにrootは開放されるのかという質問ですが、OEMとキャリアはよりプラットフォームに影響力を持つ、という玉虫色の回答をしています。現状ではこういう回答にならざるを得ないと思いますが……。
- フラグメンテーション
OEMやキャリアによって独自のカスタマイズが加えられたAndroidは、フラグメンテーション(分断)しているとよく言われています。確かに事実ですが、この記事の著者はUbuntu Phoneにもフラグメンテーションが起こるのではないかということを、ことさらに危惧しており、事実そのとおりになりそうです。例えばアップグレードに関して、具体的には14.04から16.04へのアップグレードはOEMがコントロールすることになるだろうという回答があります。
- Ubuntu PhoneはUbuntuデスクトップではない
Ubuntu Phoneはデスクトップとは完全に異なるものの、(画面サイズをカスタマイズした)Unityやデスクトップのたくさんの基本となる部分は共有している、とJonoが回答しています。リソースの分散を危惧しているのでしょう。
そのほか、Ubuntu Phoneはどこで買えるのだろう(アメリカでも買いたい)、でもインストーラもあるし、という話がされています。
まとめとして、CanonicalはMicrosoftに支配されているプラットフォームで成功して、AppleやGoogleに支配されているマーケットでも強力なプレイヤーになってくれるに違いない、と締めくくっています。
GVFSのMTPサポート
Android 3.x以降の内蔵NANDメモリー、または(Micro)SDカードにアクセスする場合、MTP(Media Transfer Protocol)を使用するのが通常の方法になりました。Ubuntuに限らずLinuxディストリビューションでは、libmtpというライブラリで各アプリケーション(Rhythmboxなど)のMTP対応を行うのが一般的ですが、2つの大きな問題がありました。
- libmtpにはデバイスIDがハードコーディングされており、ここにない機種は認識しない
- MTPデバイスを統一して扱える仕組みがない
後者についてですが、例えばWindowsだとMTPデバイスを接続しただけで認識し、即座にファイルのやり取りが可能になります。しかし、Ubuntuでは何かのアプリケーションないしfuseを使用しないと可能になりませんでした。GNOMEではGVFSというローカル/リモートのファイルアクセスを抽象化する仕組みがあり、道理としてはここにMTPサポートが加わるべきでした。そうすると、Nautilusからアクセスできるようになります。
そして長い議論と開発を経て、ついにGVFSに実装され、Ubuntu 13.04からはNautilusでマウントできるようになりました。そればかりか、12.04/12.10用のPPAもあります。WEB UPD8にはインストール方法の解説がありますので、必要に応じてお読みください。
一方前者の問題は未だに解決していません。例えば筆者の所有するXperia VLはXperia Vと同じデバイスIDですが[2]、ソニーモバイルコミュニケーションズによりlibmtpに取り込まれているものの、これを含んだ新バージョンはリリースされていないので認識しません。
Full Circle Magazine #69
Ubuntuを中心にした月刊Webマガジン、Full Circle Magazineの69号がリリースされています。主な内容は次のとおりです。
- Ubuntuニュース
- How-To: Pythonでのプログラミング、LibreOffice、Ubuntu GNOME 2スタイル
- グラフィックス: BlenderとInkscape
- レビュー: Sony Google TV
UWN#301
Ubuntu Weekly Newsletter #301がリリースされています。先週お伝えしたローリングリリースについて言及があり、Canonicl CEOのJane Silber曰く「一つのアイディア」だそうです[3]。
その他のニュース
今週のセキュリティアップデート
- usn-1705-1:Libavのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001973.html
- Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10用のアップデータがリリースされています。
- 特別に加工されたファイルを開いた場合、クラッシュさせるかプログラムの実行を許可してしまう問題がありました。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
- usn-1706-1:FFmpegのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001974.html
- Ubuntu 10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
- 特別に加工されたファイルを開いた場合、クラッシュさせるかプログラムの実行を許可してしまう問題がありました。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
-
- 備考:FFmpegをフォークしたのがLibavです。
- usn-1707-1:libsshのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001975.html
- Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
- 特別に加工されたネットワークトラフィックを受信した場合、リモートからクラッシュさせ、結果としてDoSを引き起こす問題がありました。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
- usn-1708-1:libvirtのセキュリティアップデート
https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001976.html
Ubuntu 12.10・12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
CVE-2012-4423(12.04のみ)とCVE-2013-0170を修正します。
対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1709-1:OpenStack Novaのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001977.html
- Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10用のアップデータがリリースされています。
- Novaボリュームが正く認証できず、認証されたほかのユーザーから見えてしまう問題がありました。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1710-1:OpenStack Glanceのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001978.html
- Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10用のアップデータがリリースされています。
- Glanceにネットワーク経由で匿秘すべき情報を露出する問題がありました。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1712-1:Inkscapeのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001979.html
- Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
- CVE-2012-5656とCVE-2012-6076(10.04には影響なし)を修正します。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1713-1:squid-cgiのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-January/001980.html
- Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
- CVE-2012-5643とCVE-2013-0189を修正します。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。