Ubuntu Weekly Topics

2013年5月10日号Ubuntu 13.04 Japanese Remixのリリース・Ubuntu 13.10のコードネーム・新しいパッケージインストーラ・『Hardware Images』・13.04用3.8カーネル・オフラインミーティング2013.05 Tokyo・UWN#314,315

Ubuntu 13.04 Japanese Remixのリリース

Ubuntu Japanese Teamでは、Ubuntu 13.04 Japanese Remixをリリースしました。13.04をベースに日本語環境特有のいくつかの修正を加えたRemixです。

利用・アップグレードの前にリリースノートを確認することを強くお勧めします。

なお、既報のとおり、今回のRemixではibus-mozcがプリインストールされています。

Ubuntu 13.10 “Saucy Salamander”

13.04が無事にリリースされ、13.10のコードネームが発表されました。13.10のコードネームは⁠Saucy Salamander⁠です。⁠Salamander」はサンショウウオやイモリのような形の、トカゲに似た生き物を指す単語です。Mark Shuttleworthの言によれば、⁠The salamander is one of nature’s most magical creatures; they are a strong indicator of a pristine environment, which is a fitting way to describe the new world emerging around Ubuntu Touch」⁠参考訳:サラマンダーは自然界でもっとも不思議な生き物の一つだ。かれらが生きていることは文明の及ばない環境であることを強く示している。Ubuntu Touchによって現れる、新しい世界とどのように向き合うべきかを示してくれるだろう⁠⁠。

また、⁠Saucy⁠「大胆な」⁠無作法な」⁠気の利いた」⁠トガった」といった意味の単語です。Ubuntuのこれまでのコードネームでは使われてこなかった、良い意味にも悪い意味にも取れるものとなっており、次バージョンではさまざまな意味で波乱が予想される、と言って良いでしょう。13.10はLTSの直前のリリースなので、非常に挑戦的な機能が投下される可能性があります。実際、Friends AppやClock AppなどのUbuntu SDKベースの新アプリケーションや、QMLベースの新実装版Unity、そしてUbuntu Touchのリリースと、現時点でも大きな変化が予想できます。実際の変化は次のUDS(UDS 13.05)と、Canonicalで行われているスカンクワークの結果が合流してから見えてくることになります。

Saucyの開発はすでに開始されており、リリーススケジュールも宣言されています。Ubuntu 13.10 ⁠Saucy Salamander⁠は10月17日にリリースされる予定です。

UDSへ向けた提案

UDS 13.05を控えて、さまざまな提案や、提案のための議論が行われています。面白そうなものをいくつか見ていきましょう。

新しいパッケージインストーラー

Ubuntu Touchを踏まえて、新しいパッケージ形式(⁠⁠Click Package⁠⁠)の検討が行われています。これはDebian由来のdpkg・aptベースのパッケージングシステムと共存する形で、⁠クリックしたらインストールされる」ソフトウェアを実現するためのものです。特にUbuntu SDKベースのアプリケーションのような、⁠Ubuntu環境であれば必ず動作する」もの、他のパッケージに依存せずに動作するソフトウェアのための、インストーラーを兼ねたパッケージ形式です。開始時点ではUbuntu SDKアプリケーションを対象とし、徐々に適用範囲を広げていく、というモデルになる予定です。

このパッケージには各アプリケーションを専用ディレクトリに格納する・メンテナスクリプトの利用は禁止とする・非rootで動作する、といった条件が課せられており、この部分だけ見るとAndroidやiOSのアプリケーションの作法に非常に近いものとなっています。この機能だけを見ても全貌は予想しきれませんが、なんらかのスカンクワークプロジェクトと組み合わさることで解釈が変わる可能性もあり、実装によっては非常に面白いものになるかもしれません。

“Hardware Images”

Ubuntuには「Cloud Images」と呼ばれる、クラウド・仮想化環境で利用するための専用のOSイメージ群があります。これらは起動するだけで利用できる軽量のOSイメージで、簡単にOS環境を整えて使い捨てる、あるいはcloud-initなどのインスタンス設定ツールを用いて一種のクラスタノードとして利用するためのものです。Hardware Imagesはこの考え方を物理マシンに逆輸入したもので、MAASで用いるFast Pathインストーラーとcloud-initを組み合わせた発展系で、⁠初回ブート時に自身を自律設定するOSイメージ」を配布することで、インストールにかかる時間を圧縮しよう、というものです。計画にはサーバー用途にはまず間違いなく不要であろう各種デバイス、たとえばBluetoothヘッドセットやオーディオ機能などを削減した専用のカーネルを用いることで、カーネルパッケージの容量を削減する、といったものも含まれています。

12.04用3.8カーネル

13.04が無事にリリースされたため、13.04で採用された3.8カーネルをベースにしたHWE(Hardware Enablement)カーネル(旧称Backportカーネル)提供が始まっています。これは、13.04のカーネルパッケージを12.04環境で利用できるようにリビルドしたもので、12.04のユーザーランドのまま、新しいハードウェアや新機能を利用するために、カーネルだけを更新したい、という用途に用いるためのものです。

基本的には、企業内等で12.04ベースで環境を整えているものの、新しく調達したハードウェアは12.04上ではうまく動作しない、といった場合に利用します。特に、ネットワークカードや無線LANモジュールなどが正常に動作しない場合に役に立つでしょう。ただし、サポート期間は13.04と同じく2014年1月までとなり、サポート期間が切れるまでにさらに新しい13.10ベースのHWEカーネルへ乗り換える必要があります。

Ubuntu オフラインミーティング2013.05 Tokyo

Ubuntu Japanese Teamでは、グリー株式会社様の会場提供のもと、Ubuntu 13.04が無事リリースされたことを記念し、久しぶりに東京でオフラインミーティングUbuntu オフラインミーティング2013.05 Tokyoを開催します。概要は次のとおりです。Ubuntuに興味のある方は是非ご参加ください。

「Ubuntu オフラインミーティング2013.05 Tokyo」概要
日時12:30~17:00(入館受付時間は12:30-13:15)
場所グリー株式会社(東京都港区六本木6-10-1)
参加費無料
参加申込みATNDのページから

会場では13.04を利用したインストールコーナーの他、次のセミナーなどを行います。

セミナー(予定)
  • アナタも書けるUbuntu Weekly Recipe(仮題)⁠まんじゅ(´ん`⁠⁠ さん)
  • 新フレーバーUbuntu GNOME概要(いくやさん)
  • WindowsでもUbuntuでもMacでも使えるエディタはこれだ!(仮題)
  • Ubuntu Server関連のなにか(hito)
  • ARMでUbuntu、ホントはどれぐらい使えるの?
  • ライトニングトーク
    • キミにもできる! 編集S軍曹の原稿ブートキャンプ(編集Sさん⁠
    • Ubuntu Magazine Japan vol.11の見どころ紹介

Full Circle Magazine #72

Ubuntuを中心にしたWebマガジン、Full Circle Magazineの72号がリリースされています。主な内容は次の通りです。

  • Ubuntu関連のニュース
  • How-To: Pythonによるプログラミング、第43回。動画一覧のためのデータベースを作成します。
  • How-To: LibreOfficeの使いこなし、第25回。数式を記述する方法を学びます。
  • How-To: Ubuntu環境でのネットワーク設定。
  • How-To: Blenderの使い方、第5回。
  • How-To: Inkscape 第12回。
  • などなど。

UWN#314・315

Ubuntu Weekly Newsletter #314#315がリリースされています。

今週のセキュリティアップデート

usn-1807-1usn-1807-2:MySQLのセキュリティアップデート
usn-1808-1:Linux kernel (EC2)のセキュリティアップデート
usn-1809-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002092.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-6548, CVE-2012-6549, CVE-2013-0913, CVE-2013-1796, CVE-2013-1797, CVE-2013-1798, CVE-2013-1848, CVE-2013-1860, CVE-2013-2634, CVE-2013-2635を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1811-1Linux kernel (OMAP4)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002093.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-6548, CVE-2012-6549, CVE-2013-0913, CVE-2013-1848, CVE-2013-1860, CVE-2013-2634, CVE-2013-2635を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1812-1:Linux kernel (Quantal HWE)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002094.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-6548, CVE-2012-6549, CVE-2013-0913, CVE-2013-1796, CVE-2013-1797, CVE-2013-1798, CVE-2013-1848, CVE-2013-1860, CVE-2013-2634, CVE-2013-2635を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1813-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002095.html
  • Ubuntu 12.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-6548, CVE-2012-6549, CVE-2013-0913, CVE-2013-1796, CVE-2013-1797, CVE-2013-1798, CVE-2013-1848, CVE-2013-1860, CVE-2013-2634, CVE-2013-2635を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1814-1:Linux kernel (OMAP4)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002096.html
  • Ubuntu 12.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-6548, CVE-2012-6549, CVE-2013-0913, CVE-2013-1848, CVE-2013-1860, CVE-2013-2634, CVE-2013-2635を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1815-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002097.html
  • Ubuntu 13.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-1959, CVE-2013-1979を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1816-1:ClamAVのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002099.html
  • Ubuntu 13.04・12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-2020, CVE-2013-2021を修正します。
  • UPX自己展開ファイル・PDFのスキャン時、ファイルに悪意ある細工が施されている場合に任意のコードの実行・クラッシュが発生する可能性がありました。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、ClamAVのプロセスを再起動してください。
  • 備考:upstreamリリースをそのまま取り込んだアップデートです。Ubuntuの通常のアップデート方針と異なり、セキュリティアップデート以外の更新も含まれています。
usn-1817-1:libxml2のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002100.html
  • Ubuntu 13.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-1969を修正します。
  • 悪意ある細工の施されたXMLファイルを処理した場合、任意のコードの実行・クラッシュが生じる可能性がありました。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1818-1:Mesaのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-May/002101.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-5129を修正します。
  • 悪意ある細工の施された入力を処理した場合、任意のコードの実行・クラッシュが生じる可能性がありました。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1819-1:OpenJDK 6のセキュリティアップデート

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