Ubuntu Weekly Topics

2013年11月29日号vUDS 13.11(3)・ASUS製教育市場向けノートPC・UWN#344

vUDS 13.11(3)

前回までに引き続き、今回もUDSで話された内容を見ていきましょう。今回はUbuntu Desktop・Touchを対象とする、Clientトラックです。

なお、UDSの場ではいまひとつ明示的な宣言は行われませんでしたが、あらためて、Desktopでは14.04 LTS時点ではMirは採用されず、XorgベースのUnity7にとどまる(Ubuntu Touch側はMirになる)旨が宣言されています。

  • designing-icons-for-ubuntu:Ubuntu DesktopとUbuntu Touchで、統一したアイコンを用いるようにしよう。デスクトップとスマートフォン・タブレットのいずれでも、十分に見やすいアイコンを使う必要がある[1]⁠。
  • client-1311-desktop-webapps:Ubuntu Desktopで利用できるWeb Appsを、単に専用のブラウザインスタンスを起動するモデルから、コンテナに格納するモデルに変更しよう。
  • client-1311-mobile-print-dialog:Ubuntu Touch向けの印刷環境を検討しよう。iOSのAirPrintを始めとしていろいろなソリューションがあるが、そもそもモバイルにおける「印刷ダイアログ」がどうあるべきかを考えておく必要がある。ひとくちに「印刷」と言ってしまっているが、出力DPIやカラー設定・用紙選択・一枚あたりに印刷するページするなどなど、ユーザーが設定したい項目は無数に存在する。iOSのようにこうした項目を割り切ってしまい、そもそも選択させないというデザインもありえるが、あまり望ましいものでもないと思われる。
  • client-1311-user-data-encryption:Ubuntu Touchにおけるデータの暗号化を検討しよう。Ubuntu Desktopではディスク全体の暗号化・ホームディレクトリの暗号化をサポートしているが、モバイル環境ではどんな暗号化機能が必要で、また、どのような実装が選択できるだろうか? dm-cryptやecryptfsそれぞれの挙動を整理しつつ、ARMのような非力なCPUでどこまで現実的な暗号化ができるか検討しよう。
  • client-1311-trust-store-and-sessions:モバイルデバイスでは、個人情報やクレデンシャルを扱うために、⁠他のアプリケーションから覗き見ができない」モードで動作すべき瞬間がある。たとえば住所やクレジットカード番号などを入力する瞬間であったり、あるいは位置情報を扱うような場合だ。これをUbuntu Touchで適切に実現するには、どのようにすれば良いのか検討しよう。
  • client-1311-xorg-general :14.04において、X環境はどのようなものを提供するべきか検討しよう。最新版のmesaを使うためにはDebianを更新してくるべきだし、単に14.04への搭載を考えるだけでなく、12.04へのバックポートもきちんと計画しておかなければならない。
  • client-1311-go-for-client-side-development:Go言語をクライアントで簡単に扱えるように、コンパイラを含めた環境の整備を行おう。
  • client-1311-activedirectory:14.04におけるActive Directoryサポートの方法を考えよう。今のADインテグレーションはパスワード認証こそ流用できるが、そもそもタイムアウトに1分かかってしまったり、きわめて多くの問題がある。マシンをADに参加させる手順も複雑で、難易度が高すぎる。

『教育市場向け』ASUS製Ubuntu搭載ノートPC

Ubuntu搭載PCを積極的に販売するベンダのひとつ、ASUStekから教育市場向けのUbuntu搭載ノートPCが投入されたというニュースリリースが出ています。

製品としては日本でも販売されているVivoBook X201Eと、Eee PC 1015シリーズに属する1015E(こちらは日本未発売)です。どちらも一般市場向けモデル(Windows 8搭載版)が$300前後で販売されていましたが、Ubuntu搭載教育市場向けモデルは1015EがUSAのAmazon.comで$199[2]と、非常に安い金額で販売されています。

1015Eはハードウェア的には次の構成です。

  • 10.1inch(1366x768)モニタ
  • Celeron 847
  • 2GB Memory
  • 320GB HDD
  • 802.11n対応無線LAN(2.4GHz帯のみ)
  • 約1.2kg

X201Eはモニタが11.6inchに変更され、メモリが4GBに拡張されたモデルです。いわゆる「MacBook Airに似た薄型&小型ノートPC」のデザインで、上位モデルに搭載されているタッチパネルは省略されています。重量は1.2Kgとなります。

いずれのモデルも、⁠廉価なノートPCとして十分に使い物になるレベル」で、1年間のグローバル保証+「Accidental Damage Protection」⁠落としたり、火事にあったり、濡らしたり、といった自損のたぐいへの保証)が提供されます。

製品ラインとしては最廉価モデルでしかありませんが、Canonicalいわく「As Ubuntu, and all the software bundled on it is free, there’s no licence fees in the purchase price which significantly reduces cost. This is perfect for students and institutions, both of whose finances can be hard pressed.」⁠この製品に搭載される、Ubuntuをはじめとする同梱ソフトウェアは「フリー」なもので、ライセンス費用はかからず、これによって販売価格を大きく引き下げている。これは学生や教育機関にとって素晴らしい選択となる。全体費用を大きく引き下げることができるだろう)とのことです。また、単にコスト的なメリットだけでなく、学生がコンピューターを通じて触れるだろうさまざまな分野、たとえば学業で利用するLibreOfficeや、日常的なやりとりをするWebブラウザやEメール環境、のみならず3Dアニメーションや画像処理などといった、さまざまな分野で利用できるだろうとも述べています。

日本の市場特性や各社の販売戦略上、同種のモデルが販売される可能性はあまり高くありません。送料が本体価格の何割かになってしまいますが、気になる方は個人輸入にチャレンジしてみても良さそうです。

UWN#344

Ubuntu Weekly Newsletter #344がリリースされています。

その他のニュース

  • Ubuntu TouchのReminderアプリケーション(Reminders)が、Evernoteへの保存に対応しました。実装を含めた簡単な解説が付いているため、手持ちのソフトウェアをEvernoteに対応させたい場合にも一読しておくと良さそうです。
  • 自宅サーバーとして、Raspberry PIからCubieBoardへ乗り換えたという話。

今週のセキュリティアップデート

usn-2031-1:Firefoxのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-November/002319.html
  • Ubuntu 13.10・13.04・12.10・12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-1741, CVE-2013-2566, CVE-2013-5605, CVE-2013-5607を修正します。
  • Firefox 25.0.1のUbuntuパッケージ版です。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、Firefoxを再起動してください。
usn-2032-1:Thunderbirdのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-November/002320.html
  • Ubuntu 13.10・13.04・12.10・12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-1741, CVE-2013-2566, CVE-2013-5605, CVE-2013-5607を修正します。
  • Thunderbird 24.1.1のUbuntuパッケージ版です。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、Thunderbirdを再起動してください。
usn-2033-1:OpenJDK 6のセキュリティアップデート
usn-2034-1:OpenStack Keystoneのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-November/002322.html
  • Ubuntu 13.10・13.04・12.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-4477を修正します。
  • KeystoneをLDAPバックエンドで利用している場合に、あるユーザーからロールを削除する処理をテナントから実行した場合に、⁠ユーザーがそのロールを本来持っていなかった場合」に、誤ってロールを付与してしまう問題がありました。これにより、意図とは異なるアクセス権限を付与してしまう可能性があります。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

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