Ubuntu Weekly Topics

CUDAツールキットとランタイムのUbuntuリポジトリ経由での配布⁠Ubuntu 25.10(questing)開発; Test RebuildとRust版Coreutilsの改善

CUDAツールキットとランタイムのUbuntuリポジトリ経由での配布

Canonicalが、CUDAツールキットとランタイムのUbuntuリポジトリからの配布が可能になったことをアナウンスしています。

CUDAはNVIDIA GPUを用いたGPGPUワークロードのためのC言語ライクなプログラミング環境で、現在のAIワークロードの事実上の標準となっています。たいていのGPGPUワークロードがライブラリ経由で呼び出すGPUへの命令はCUDAを経由します[1]

これまでのCUDAの利用シナリオでは、⁠まず最初にUbuntuをセットアップし、適切なバージョンのNVIDIAドライバを導入した上で」⁠NVIDIAの公式サイトから、ドライババージョンに合わせたCUDAのツールキットとランタイムをダウンロードして導入する」という作業が必要でした。

この「ドライババージョンに合わせた」という部分がこの発表のメリットを読み解くためのポイントです。CUDAツールキットとランタイムはそれぞれ、⁠特定のバージョンの」ドライバを前提としているため、⁠使いたいドライバ」「使いたいCUDAバージョン」を合わせるという配慮が必要でした。またNVIDIAのリポジトリを追加するか個別にダウンロードする作業も必要で、それなりにハマりどころがありました。

Ubuntuの公式リポジトリにCUDAが含まれるようになることで、この問題のかなりの部分が解決します。少なくともユーザーとしては「CUDAをインストールする」⁠つまりapt install cuda-toolkitといった操作を行うだけで)セットアップを完了できるようになります。ドライババージョンとツールキット&ランタイムの組み合わせ表を見て、適切なバージョンを選定する作業からは(おそらく)解法されることになります。

この変更により、Ubuntu上でのCUDAワークロードの実行はそれなりに簡単になるはずです。なお公式リポジトリでのCUDAの配布はSUSEとRocky Linuxでも行われる方向となっており、Ubuntuだけのメリット、というわけではありません。

questing(Ubuntu 25.10)の開発; Test RebuildとRust版Coreutilsの改善

Ubuntuの開発の中盤~終盤にかけてのお約束、Test Rebuildが実施されています[2]。これそのものは「いつもの」光景の一種なのですが、今回はその横で、⁠Rust版のCoreutils由来のリグレッションがいくつか存在する」という問題が発生しています。

このリグレッションのうち、性能面でのものはPhoronixが何件かを取り上げており⁠base64が遅かった(ので高速化された⁠cksumがこれまでと比べて17倍ぐらい遅い(ので高速化されそう⁠⁠」といったものが挙げられています。これらは「実際に広く使われないと気付かれないし直らない」という性質のものなので、Ubuntuが本格的に採用したことによるメリットが出てきていると捉えることができるでしょう。

またこれとは別に、unameの-p,-iオプションが動かないといった報告が挙げられており、こちらの面での改善や整理が進められていくことになるでしょう。問題なのはこれによって盛大に壊れるイメージビルドのためのコードやテストコードもあるため、あと一ヶ月弱の間、これらをモグラ叩き的に直していく光景が続くことになりそうです。

今週のセキュリティーアップデート

usn-7741-1:PostgreSQLのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-September/009736.html
  • Ubuntu 25.04・24.04 LTS・22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-8713, CVE-2025-8714, CVE-2025-8715を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoS・本来秘匿されるべき情報へのアクセス・dump実行時に任意のSQL可のでしの実行が可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、PostgreSQLを再起動してください。

usn-7740-1:LibEtPanのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-September/009737.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 ESM・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2022-4121を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7742-1:GnuTLSのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-September/009738.html
  • Ubuntu 20.04 ESM・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-32988, CVE-2025-32990, CVE-2025-6395を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、メモリ破壊を伴うクラッシュを誘発することが可能でした。任意のコードの実行・DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7743-1:libxml2のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-September/009739.html
  • Ubuntu 25.04・24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 ESM・18.04 ESM・16.04 ESM・14.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-9714を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7739-1:Bindのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-September/009740.html
  • Ubuntu 14.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2021-25214, CVE-2021-25215, CVE-2021-25216を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7744-1:QEMUのセキュリティアップデート

usn-7745-1:CUPSのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-September/009742.html
  • Ubuntu 25.04・24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 ESM・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-58060, CVE-2025-58364を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoS・認認のの迂回が可能でした。

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