Ubuntu Weekly Topics

Steam SnapのCore24版のテスト開始⁠Dell PowerEdge XR8000を中心にしたエッジAIやネットワーキング, Azure VM utils

Steam SnapのCore24版のテスト開始

近年のLinuxにおける「新しい常識」として、⁠Steamのゲームは(DRMや非互換なアンチチートプログラムがないなら)それなりに動作する」というものがあります。これはSteam DeckがLinuxベースであること、そしてProtonによる互換性が相応以上に提供されていることによります。

Ubuntuでもこの恩恵を受けており、SnapベースのSteamパッケージを利用することで、かなりの数のゲームを動作させることができます。このパッケージはUbuntuのLTSリリースをベースとしており、これまではCore22(Ubuntu 22.04 LTSベースのもの)が最新でした。この流れにおいて、Core24すなわちUbuntu 24.04 LTSベースの新しいパッケージのテストが開始されています。実際にテストする場合はバグ報告用スレッドを参照の上、⁠それなりにバグはあるかもしれない」という認識で挑戦するのが良いでしょう。

Dell PowerEdge XR8000を中心にしたエッジAIやネットワーキング

AIの進展により、⁠エッジ」⁠データセンターではない、現場⁠⁠)においてAIワークロードやネットワークスタックを構築することが増えてきています。要するに、工場や病院、あるいはオフィスといった場所においてサーバー一台では完結しない複雑な構成を配備する、といったシナリオです。こうした状況においては、Ubuntuの現在の強みである「MicroCloudベースでのライトウェイトなk8s」が良い形で機能することがあります。

この流れで、Dell PowerEdge XR8000をベースにCanonicalが提供できる各種ワークロードを載せることで「自律的な回復性を備えたエッジ」を構成できることがアピールされています。これはDell Technologies(ハードウェア), Intel(CPU), Druid(5G k8sオーケストレータ), Airspan(ソフトウェア5Gラジオ), Ecrio(AI併用のビデオやボイス・画像認識ソフトウェア)というソフトウェアスタック構成となっており、試行錯誤なく必要なワークロードが処理できることが主張されています。この構成を用いると、いわゆる「ローカル5G」環境を展開しつつ、さらに5Gネットワークにビジュアルタスク(画像解析を伴うAIタスク)を載せることができ、医療や工業といったレイテンシが必要な文脈で役に立つというものです。

一般的なユーザーがダイレクトに利用する可能性はあまりありませんが、今後は「各種AIワークロードの裏ではUbuntuが動いている」という展開になるかもしれません。

Azure VM utilsのデフォルト導入

Ubuntuを利用する場所はオンプレミスのハードウェアだけではありません。いわゆる「クラウド」の上では、それぞれのクラウド環境に最適化されたUbuntuの「クラウドイメージ」が動作しています。こうした「クラウドイメージ」は、該当するクラウド環境のハードウェア構成に特化し、⁠他の環境ではうまく動かない代わりに、該当クラウドにおける『かゆい場所』に手が届く」ようになっています。

こうした流れの中で、今回はAzure向けのクラウドイメージに変更が行われています。具体的には「azure-vm-utils」パッケージがデフォルトで含まれるようになりました。Azure環境では歴史的な経緯から、ストレージにはvirtual SCSI経由とvirtual NVMe経由の二種類が、そしてネットワークについては通常のvirtual NICだけでなく、MANA, Mellanoxという二種類のインテリジェント実装が存在しており、インスタンスの世代によってデバイスノードが異なるものになっています。

azure-vm-utilsはこれをラップし、一環したユーザー体験を提供するためのものです。具体的には次のようなものが提供される見込みです(言い換えると、これまではこうした振る舞いがあることをユーザーが気にする必要がありました⁠⁠。

  • この変更により、各種ストレージは「/dev/disk/azure/」以下に生成されるデバイスノードからアクセスできるようになります。多くの場合は「/dev/disk/azure/data/by-lun/というpersistent bindノードを経由してストレージデバイスを指定することになるでしょう。
  • 同様に、⁠/dev/disk/azure/os」がOSディスク、⁠/dev/disk/azure/resource」が一時リソースディスクとなります。azure-nvme-idコマンドを用いることで、ストレージの識別も可能です。
  • udevとNetplanに含まれていた、MANA, Mellanox製NICへのケア実装が不要になります。
  • これまで行われていた「Azure用の調整」の多くがazure-vm-utilsで行われるようになるため、スペシャルな変更が「このパッケージを追加するだけ」に圧縮されます。

その他のニュース

  • Phoronixによる「APT::Architecture-Variants "amd64v3";」を設定した環境におけるベンチマークの結果。特定のゲームタイトル以外では誤差となるものの、有効なパターンではなぜかは不明なものの二倍近い性能差が得られており、なかなかに興味深い(ただし、実用的な意味は薄い)結果となっています。
  • Ubuntu Summitの裏で行われたThe RegisterによるMark Shuttleworthへのインタビュー。いつものようにIPOについての質問をされたMarkいわく、⁠I am very calmly of the view that we should be a public company, but also very calmly of the view that there's no need to do it when we're not mature enough.」⁠我々は公開企業になる必要があります、これは冷静な見解です。 しかし同時に、まだ組織として未成熟な段階でそれを実行する必要はないということもまた、冷静な見解だと思います⁠⁠。ということで「準備は整っているが、市場や自社の状況からすると今ではない」という内容です。他の内容としては既存のresoluteの方針とギャップはありません。

今週のセキュリティーアップデート

usn-7829-4:Linux kernel (AWS)のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009894.html
  • Ubuntu 20.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-52593, CVE-2024-26700, CVE-2024-26896, CVE-2025-38727を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

usn-7840-1:Rubyのセキュリティアップデート

usn-7841-1:strongSwanのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009896.html
  • Ubuntu 25.10・25.04・24.04 LTS・22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-62291を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、メモリ破壊を伴うクラッシュを誘発することが可能でした。任意のコードの実行・DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7842-1:Radare2のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009897.html
  • Ubuntu 25.10・25.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-60358を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7837-1:GStreamer Good Pluginsのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009898.html
  • Ubuntu 20.04 ESM・18.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-47219を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoS・本来秘匿されるべき情報へのアクセスが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7829-5:Linux kernel (Intel IoTG)のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009899.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-52593, CVE-2024-26700, CVE-2024-26896, CVE-2025-38727を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

usn-7845-1:Squidのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009900.html
  • Ubuntu 25.10・25.04・24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 ESM・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-62168を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、本来秘匿されるべき情報へのアクセスが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7846-1:X.Org X Serverのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009901.html
  • Ubuntu 25.10・25.04・24.04 LTS・22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-62229, CVE-2025-62230, CVE-2025-62231を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、メモリ破壊を伴うクラッシュを誘発することが可能でした。任意のコードの実行・DoS・本来秘匿されるべき情報へのアクセスが可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。

usn-7847-1:GNU binutilsのセキュリティアップデート

usn-7848-1:AMD Microcodeのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009903.html
  • Ubuntu 25.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-36350, CVE-2024-36357を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、本来秘匿されるべき情報へのアクセスが可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。

usn-7843-1:Nettyのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009904.html
  • Ubuntu 25.10・25.04・24.04 LTS・22.04 LTS(Ubuntu Proのみ⁠⁠・20.04 ESM・18.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-59419を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、偽装したメールを生成することが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7844-1:YAML::Syckのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009905.html
  • Ubuntu 25.10・25.04・24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 ESM・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-11683を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、本来秘匿されるべき情報へのアクセスが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7854-1:Linux kernel (KVM)のセキュリティアップデート

usn-7850-1:Linux kernelのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009907.html
  • Ubuntu 14.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-53150, CVE-2025-40300を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

usn-7853-1:Linux kernelのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009908.html
  • Ubuntu 18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-52574, CVE-2023-52650, CVE-2024-41006, CVE-2024-50006, CVE-2024-50299, CVE-2024-53124, CVE-2024-53150, CVE-2024-56767, CVE-2025-37838, CVE-2025-38352, CVE-2025-40300を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

usn-7853-2:Linux kernel (FIPS)のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009909.html
  • Ubuntu 18.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-52574, CVE-2023-52650, CVE-2024-41006, CVE-2024-50006, CVE-2024-50299, CVE-2024-53124, CVE-2024-53150, CVE-2024-56767, CVE-2025-37838, CVE-2025-38352, CVE-2025-40300を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

usn-7852-1:libxml2のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-October/009910.html
  • Ubuntu 25.04・24.04 LTS・22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2025-7425を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、メモリ破壊を伴うクラッシュを誘発することが可能でした。任意のコードの実行・DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7833-4:Linux kernel (GCP)のセキュリティアップデート

usn-7835-4:Linux kernel (HWE)のセキュリティアップデート

usn-7839-2:Google Guest Agentのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2025-November/009913.html
  • Ubuntu 25.04・24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 ESM・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-45337を修正します。
  • usn-7839-1の修正をGoogle Guest Agentにも適用するためのアップデータです。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

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