データを集約するためのNAS
データ需要の増大は今に始まったことではありませんが、今後も企業にとっては必須の案件となっています。特に「クラウド」志向が高まるにつれ、あらゆるデータをネットワーク上にアップロードするという考え方は、PCのみならずスマートフォン、ボードPCといった、新世代の端末をビジネスに活用していく際にも大切なことです。
大量のデータを多く扱っていくには、データアクセスのレスポンスを向上させる必要があります。一番効率的なのは、回線の増強と共にNAS自体のハイスペック化です
今回ご紹介するQNAP「TS-EC1279U-RP」は、クアッドコアプロセッサ、大容量メモリといった高い処理能力を持つだけでなく、操作が容易な管理ソフトウェアも同梱される製品です。企業の悩みに答えるハイスペックNASをご紹介しましょう。
基本性能と堅牢性の高い信頼のハードウェア
TS-EC1279U-RPは、3.5インチHDDを最大12台搭載することが可能な2Uラック型のファイルサーバです。ファイル共有だけでなく、バックアップ、ディザスタリカバリ、仮想化といった用途を全般的にカバーできる汎用性の高さも特長です。
ストレージソリューションとしては、NAS,iSCSI、IP-SANなどに対応でき、VMware、Citrix、Hyper-Vなどの仮想化技術も利用できます。
ハイレスポンスを実現するスペックとしては、プロセッサに「Quad Core Intel Xeon E3-1225 3.1GHz」を搭載し、メモリもDDR3 ECC RAMを4GB用意しています。搭載可能なHDDには、最新の6Gb/sの高速対応が利用できるだけでなく、2.5インチSSDも搭載することができます。SSDを活用することで更なる高速アクセスが可能になるので、将来への備えも心配ありません。
転送ポートには4基のギガビットLANが用意されているほか、USB3.0ポートも2基搭載されています(USB2.0ポートは4基)。また、eSATAポートも2基用意されているので、USB UPSの利用のほか、外部ストレージとも連携でき、データバックアップなども容易です。
また、QNAP製品の特長として、高い可用性を持っていることが挙げられます。万が一のディスク破損時にもすばやく交換できるホットスワップに対応していることはもちろん、電源ユニットの2重化により、片方が破損してもしばらくは一方の電源ユニットで稼働を続けることが可能です。データセンターへの要件が厳しくなる昨今、こうした可用性の高い機能の数々は安定したサーバ運用には欠かせないといえるでしょう。
ざっとスペックを並べただけでも、最新のデータセンターにも対応できるハイスペックを搭載していることがおわかりいただけると思います。
管理を容易にする「QNAP Finder」と管理ツール
QNAP製品をお使いの方にはすでにお馴染みのQNAP Finderは、本製品でも活用されます。管理PCからネットワークに接続されたTS-EC1279U-RPをすぐに発見でき、簡単な設定も行えます。
本体の管理ツールは、検索結果が表示されるリストから製品名をクリックすることでブラウザが起動し、そこからアクセスできる仕組みです。凝ったUIが操作をサポートしてくれるので、サーバ管理に不慣れなユーザでも設定できる容易さが魅力です。もちろん、OSは日本語に対応しているので、コマンドの知識などは必要ありません。直感的な操作さえ可能なので、管理費の削減も容易に達成できるでしょう。
サーバ管理ツールのメニューには大きく「管理」「WEBファイルマネージャ」「顧客サービス」「QNAPウィキ」「QNAPフォーラム」があります。特によく使うのは「管理」で、ここではシステム、ディスク、アクセス権を管理するほか、ネットワークサービスやアプリケーション、バックアップ、外部デバイス、MyCloudNASサービスなどの各サービスの設定などを行います。システムステータスでは、日々のメンテナンスや障害情報を管理するために特に必要となるはずです。
導入初期はHDDをセットし、「ディスク管理」にある「ボリューム管理」からドライブの状況を把握します。ステータスが「準備完了」となっていれば、そのドライブはボリュームとしてRAID構成に用いることが可能です。単一ボリュームとJBODリニアディスクボリュームのほか、RAID0、RAID1、RAID5、RAID6、RAID10に対応しているので、状況に合わせた管理が行えます。この他、「ディスク管理」では、暗号化ファイルシステムやiSCSI、仮想ディスクなど各設定項目がありますから、必要に応じて操作してください。
次によく使うのは「ネットワークサービス」と「アクセス権管理」でしょう。ネットワークには、Microsoftネットワーク、Appleネットワーク、NFSサービスなどが用意されているので、クライアントの環境に合わせて任意に構築できます。また、アクセス権もユーザ、ユーザグループ単位で設定できるのはもちろん、WindowsアクティブディレクトリやLDAPにも対応しているので、既存のサーバからユーザアカウントを取得することも可能です。
一般的なローカルネットワークにつなぐことができるファイルサーバとしてのNASでしたら、ここまで紹介した一部の機能だけで十分です。すぐれたUIと直感的な操作さえ可能な設定項目によって、熟練のIT管理者でなくても管理していけるので、導入当初は維持管理のコストメリットが期待できます。
また、多機能を利用し、バックアップサーバや仮想化システムの導入まで検討していくことも可能です。基本的なNASの運用から、将来への備えまで出来てしまうのが、ハイスペックNAS「TS-EC1279U-RP」の最大のメリットかもしれません。
ディザスタリカバリソリューションや高度なセキュリティ機能も提供
容易な管理は日々の操作を大いに助けてくれます。しかし、より高度なディザスタリカバリへの要求も考えなくてはなりません。
TS-EC1279U-RPには、リアルタイムのリモートレプリケーションやiSCSI LUNバックアップ/リストア、さらにAmazon S3とElephantDrive クラウドストレージバックアップをサポートしています。同じQNAP製品はもちろん、様々なクラウドストレージソリューションと連携することで、より高いデータの堅牢性を実現しています。
また、災害と同レベルで企業にとって重要となるセキュリティに関しても、TS-EC1279U-RPには高度な機能が備わっています。
暗号化技術(FIPS 140-2 AES256ビット暗号化)を使うことで、承認された暗号化パスワードかキーを使った場合のみアクセスできるボリュームを作成することも可能なほか、ポリシーベースの非認証IPブロックや、SSLなどにも対応しています。先ほど少し触れたアクセス権管理などと組み合わせて運用することで、堅牢なデータ保護を実現することができます。
先の大震災や後を絶たない情報漏洩事故を受け、今後はますます災害対策やセキュリティへの要求が高くなることは必至です。TS-EC1279U-RPなら、それらにきちんと対応できるだけの機能が最初から備わっているといえます。ここでも、導入メリットの高い製品であることがおわかりいただけるはずです。
ハイスペックを活かしたサーバ運用に最適なソリューション
TS-EC1279U-RPは、ファイルサーバとしてはもちろんのこと、FTPサーバ、バックアップサーバ、ウェブサーバ、RADIUSサーバといったビジネスアプリケーションをサポートしています。
既存のNASがそれぞれのサーバとして分散されている場合、本製品ならひとつでこれらをまかなうことも可能です。システムへのハードウェア的な要求が高くなりますが、ハイスペックNASの本領はこうした様々なアプリケーションを一気にまかなえるところにあるともいえます。
もちろん、イベントログはオンラインユーザによるネットワークサービスへのアクセスログだけでなく、Samba、iSCSI、FTP、AFP、HTTP、HTTPS、Telnet、SSHを経由したものでもすべて記録することが可能なため、管理者はログの採取に関して大幅に作業を減らすことができます。
多機能をすべて活かしきるハイスペックNAS「TS-EC1279U-RP」。ここで触れた部分だけでも、ビジネスを強力に牽引してくれる実力があることがお分かり頂けたと思います。実際に既存のNASに不満がある、あるいは老朽化してきているといったケースの方々には、ぜひオススメしたいソリューションだといえます。
今後数年以内にクラウド革命があると噂されているとおり、これまでのようにデータを保管するだけのNASではなく、価値あるデータを収集し、どのようにサービスとして提供していくかが、今後のビジネスには必須となるでしょう。
その際に、TS-EC1279U-RPはアイデアを忠実に再現し、なおかつハイレスポンスでそれらのデータを扱ってくれるはずです。
ご参考までですが、最後にデータの転送速度レスポンスを知っていただくために、クライアントPCから本機の共有フォルダを対象にベンチマークを採取してみましたので、ご紹介しておきましょう。
ベンチマークテスト:テスト環境
テストマシン
CPU | AMDE450 |
メモリ | 8GB |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit |
ネットワーク | 1000BASE-T(ローカルネットワーク) |
NAS使用HDD
Western Digital WD1003FBYX(1TB)×12
※:RAID構成により使用したHDD数は異なります。 |
テストソフトウェア
FD Bench Ver1.02
Diskテスト(100MB/1000MB)、Copyテスト(1MB/10MB)をそれぞれ3回ずつ計測 |
CrystalDiskMark 3.0.1 x64
1000MBテストを5回計測 |
ベンチマーク結果
FD Bench Diskテスト
- Read=Sequential Read、Write=Sequential Write
- RRead=Random Read、RWrite=Random Write
- 単位は kバイト/秒
表1-1 RAID0/100Mバイト
| Read | Write | RRead | RWrite | W/R平均 |
1回目 | 54237 | 104065 | 37716 | 56574 | 63148 |
2回目 | 49708 | 104170 | 37925 | 57047 | 62212 |
3回目 | 50869 | 95078 | 38597 | 58049 | 60648 |
表1-2 RAID0/1000Mバイト
| Read | Write | RRead | RWrite | W/R平均 |
1回目 | 48122 | 84148 | 33234 | 40268 | 51443 |
2回目 | 54971 | 78233 | 38228 | 51764 | 55799 |
3回目 | 54560 | 81334 | 38095 | 49461 | 55862 |
表1-3 RAID1/100Mバイト
| Read | Write | RRead | RWrite | W/R平均 |
1回目 | 49349 | 105785 | 38817 | 55591 | 62385 |
2回目 | 49708 | 81985 | 38152 | 58581 | 57106 |
3回目 | 43445 | 88581 | 24951 | 54208 | 52796 |
表1-4 RAID1/1000Mバイト
| Read | Write | RRead | RWrite | W/R平均 |
1回目 | 54926 | 78419 | 38723 | 47841 | 54977 |
2回目 | 45517 | 74165 | 38006 | 46255 | 50986 |
3回目 | 52258 | 76230 | 37658 | 39256 | 51350 |
表1-5 RAID5/100Mバイト
| Read | Write | RRead | RWrite | W/R平均 |
1回目 | 51664 | 104065 | 37495 | 57560 | 62696 |
2回目 | 44329 | 93687 | 30955 | 46524 | 53874 |
3回目 | 50869 | 80000 | 36247 | 52058 | 54793 |
表1-6 RAID5/1000Mバイト
| Read | Write | RRead | RWrite | W/R平均 |
1回目 | 49018 | 89416 | 32493 | 36730 | 51914 |
2回目 | 54560 | 78605 | 38296 | 47324 | 54696 |
3回目 | 55205 | 91665 | 37187 | 45173 | 57307 |
FD Bench Copyテスト(単位:Operations/分)
表2-1 RAID0/1Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 1MB | 平均 |
1回目 | 19728 | 6702 | 2664 | 3678 | 8193 |
2回目 | 20412 | 6606 | 2664 | 3792 | 8368 |
3回目 | 19404 | 6330 | 2640 | 3816 | 8047 |
表2-2 RAID0/10Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 10MB | 平均 |
1回目 | 16404 | 5916 | 2376 | 462 | 6289 |
2回目 | 19548 | 6522 | 2466 | 480 | 7254 |
3回目 | 19350 | 6090 | 2388 | 468 | 7074 |
表2-3 RAID1/1Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 1MB | 平均 |
1回目 | 17820 | 6426 | 2682 | 3618 | 7636 |
2回目 | 20232 | 6576 | 2682 | 3786 | 8319 |
3回目 | 18564 | 6078 | 2634 | 3252 | 7632 |
表2-4 RAID1/10Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 10MB | 平均 |
1回目 | 17370 | 6378 | 2610 | 498 | 6714 |
2回目 | 18870 | 6120 | 2406 | 516 | 6978 |
3回目 | 18612 | 6522 | 2682 | 564 | 7095 |
表2-5 RAID5/1Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 1MB | 平均 |
1回目 | 20142 | 6738 | 2640 | 3336 | 8214 |
2回目 | 18414 | 6348 | 2382 | 3030 | 7543 |
3回目 | 19062 | 6600 | 2694 | 3792 | 8037 |
表2-6 RAID5/10Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 10MB | 平均 |
1回目 | 15696 | 5892 | 2148 | 426 | 6040 |
2回目 | 17070 | 5976 | 2280 | 462 | 6447 |
3回目 | 17112 | 5670 | 2214 | 456 | 6363 |
FD Bench Copyテスト(単位:kバイト/秒)
表3-1 RAID0/1Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 1MB | 平均 |
1回目 | 438 | 2390 | 7644 | 42062 | 13133 |
2回目 | 454 | 2355 | 7644 | 43352 | 13451 |
3回目 | 431 | 2258 | 7566 | 43626 | 13470 |
表3-2 RAID0/10Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 10MB | 平均 |
1回目 | 365 | 2111 | 6818 | 54699 | 15998 |
2回目 | 434 | 2326 | 7065 | 56736 | 16640 |
3回目 | 430 | 2172 | 6850 | 55258 | 16177 |
表3-3 RAID1/1Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 1MB | 平均 |
1回目 | 396 | 2291 | 7695 | 41369 | 12938 |
2回目 | 450 | 2345 | 7683 | 43348 | 13456 |
3回目 | 412 | 2169 | 7554 | 37214 | 11837 |
表3-4 RAID1/10Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 10MB | 平均 |
1回目 | 386 | 2274 | 7480 | 59297 | 17359 |
2回目 | 419 | 2182 | 6901 | 60777 | 17570 |
3回目 | 414 | 2326 | 7683 | 66650 | 19268 |
表3-5 RAID5/1Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 1MB | 平均 |
1回目 | 448 | 2402 | 7566 | 38179 | 12149 |
2回目 | 409 | 2265 | 6839 | 34708 | 11055 |
3回目 | 424 | 2353 | 7718 | 43352 | 13462 |
表3-6 RAID5/10Mバイト
| 2k | 32k | 256k | 10MB | 平均 |
1回目 | 349 | 2102 | 6176 | 51018 | 14911 |
2回目 | 379 | 2131 | 6543 | 54699 | 15938 |
3回目 | 380 | 2022 | 6348 | 54457 | 15802 |
CrystalDiskMarkテスト
- Read=Sequential Read、Write=Sequential Write
- RRead=Random Read、RWrite=Random Write
- 単位は Mバイト/秒
表4 CrystalDiskMarkテスト
| RAID0 | RAID1 | RAID5 |
Read | 54.816 | 55.200 | 55.861 |
Write | 102.510 | 74.473 | 104.680 |
RRead 512KB | 55.757 | 54.926 | 57.072 |
RWrite 512KB | 97.251 | 93.023 | 98.482 |
RRead 4KB(QD=1) | 7.135[1742.0IOPS] | 7.304[1783.1IOPS] | 7.668[1872.1IOPS] |
RWrite 4KB(QD=1) | 7.695[1878.6IOPS] | 2.259[551.5IOPS] | 8.434[2059.1IOPS] |
RRead 4KB(QD=32) | 11.133[2717.9IOPS] | 12.323[3008.6IOPS] | 12.380[3022.5IOPS] |
RWrite 4KB(QD=32) | 8.534[2083.4IOPS] | 7.531[1838.6IOPS] | 9.132[2229.5IOPS] |