文章問題はどうなっているの? "ニューノーマル"な情報処理技術者試験を受験してみた

12月1日、情報処理技術者試験の一区分である情報セキュリティマネジメント試験がはじまると同時に、基本情報技術者試験の申込みが一部開始されました。この二つの試験は、今年度から試験方式が大きく変わり、従来のマークシート方式からCBT方式へと切り替わりました。突如として実施されることとなった新たな試験方式とは一体どういったものなのでしょうか? 今回、試験対策本の担当編集者自身が実際に受験して確かめました。基本情報技術者・情報セキュリティマネジメント両試験の受験者の参考になれば幸いです。

突然の"新様式"を余儀なくされた情報処理技術者試験

2020年は新型コロナの年でした……という決まり文句も見飽きた方が多いでしょう。それくらい、あらゆるものが新型コロナウイルス感染症に翻弄された1年でした。

新型コロナウイルス感染症は、毎年約40万人もの人々が受験する情報処理技術者試験にも多大な影響を及ぼしました。4月に予定されていた春の試験は中止になり、10月に予定されていた秋の試験も一部試験区分で大幅な予定変更がなされました。ITストラテジスト試験など四つの高度試験は2020年度の実施が見送られ、基本情報技術者試験(以下「基本情報⁠⁠)と情報セキュリティマネジメント試験(以下「セキュマネ⁠⁠)の二つは、試験会場確保の観点から、⁠CBT方式」に試験方法を変更したうえで、日時を改め行われることが発表されました。かくして、基本情報とセキュマネの二つの試験は、マークシートを用いた従来の筆記試験から、パソコンを使った"新様式"へと予期せぬかたちで移行することになったのです。

パソコンの画面上で文章問題は解けるのか?

さて、CBT方式とは何でしょうか。CBTとは"Computer Based Testing"の略で、CBT方式とは問題の表示や解答をパソコンで行う方式を指します。CBT方式はすでにITパスポート試験で導入されており、この記事を読んでいる受験者のなかにも、CBT方式と聞いて、⁠あー、ITパスポートみたいな感じでやるのね」と思った方もいるかもしれません。

とはいえ、基本情報・セキュマネともに、試験の形式はITパスポートとかなり異なります。この二つの試験は、数十問の四択問題を解く午前試験と、長文問題である午後試験から構成されています。ITパスポートは四択問題のみなので、CBT方式で長文問題に取り組むのは未知の世界です。当然、長文問題は1問あたりの文章量も多く、選択肢も四択以上の場合がざらにあります。試験画面のイメージや操作方法は事前に発表されているものの、実際の使い心地は気になるところです。果たして、CBT方式で文章問題に難なく取り組めるのでしょうか?

そこで、CBT方式の実態を探るべく(?⁠⁠、実際にセキュマネを受験してみました。

受験時の操作画面のイメージは基本情報・セキュマネともに公開されている
受験時の操作画面のイメージは基本情報・セキュマネともに公開されている
出典プロメトリックによる「情報セキュリティマネジメント試験:試験当日の受験の流れ」

いざ、"新しいセキュマネ"に挑戦

受験の前に、まずは申込みです。CBT方式への変更にともない、試験の申込み方法も従来と変わっています。従来は特定の日に全国一斉に試験が行われていましたが、CBT方式では決められた期間内から、自分で試験の場所・日時を選択して受験申込みを行います。午前試験と午後試験を別々の日に受けたり、午後試験を午前試験より先に受けたりといったことも可能です。私は受験期間初日の12月1日(火曜)に午前→午後の順番で受験しました。本当は、土日に立川で受けたかったのですが、都合の良い日時に立川会場が用意されていなかったため、新宿を選択しました(このように、希望どおりの日時・会場があるとは限らない点は注意が必要です⁠⁠。

選択した受験会場に着くと、最初に受付を済ませます。会場は感染症対策のためマスク着用が必須であるほか、最初に入り口で手指の消毒を求められます。その他にも、本来手荷物を預けるためのロッカーの使用が禁止されているなど、感染症対策の影響がちらほら見受けられます。

受付後は待合スペースで過ごして、所定の時間になると係員が試験の流れ・持ち物について説明をはじめます。その後、座席番号が書かれた紙を受け取り、順番に会場入りをすることとなります。持ち物については一般的な試験と同様で、本人確認書類のほかはハンカチ・ティッシュ・目薬のみ持ち込みを許可されます。筆記用具の持ち込みも不可ですが、各座席にはペンとメモ用紙が用意されています。

会場では感染症対策がなされている。受験者も会場ではマスクの着用が必須となる
会場では感染症対策がなされている。受験者も会場ではマスクの着用が必須となる
(筆者撮影)

ITパスポートより快適な(?)午前試験

決められた座席に着くと、さっそく試験開始の操作へと進みます。各座席には試験開始時の流れを書いた紙が用意されていたので、それに従って操作すれば迷うことなく試験をはじめられます。

さて、肝心の試験ですが、結論から言うと午前試験はほとんどストレスなく受験できました。

画面は左右で二分されている構成をとり、左側が問題文のウィンドウ、右側が選択肢のウィンドウとなっています。問題の切り替えは画面右下の「進む⁠⁠/⁠戻る」ボタンで行えるほか、画面中央にある問題番号が書かれたボタンをクリックすることでも各問題にジャンプできます。また、画面右下の旗のマークのボタンを押すと、選択中の問題に「後で見直す」マークを付けることができます。画面のレイアウトこそ変わっていますが、同様の機能はITパスポートでも実装されているので、受験経験がある方はイメージしやすいかもしれません。

画面の左に問題文が、右に選択肢が表示される
画面の左に問題文が、右に選択肢が表示される
出典プロメトリックによる「情報セキュリティマネジメント試験:試験当日の受験の流れ」

ITパスポートにはなかった機能もあります。まず、⁠後で見直す」機能ですが、基本情報・セキュマネではただ問題にマークが付くだけでなく、マークが付いた問題だけ絞り込んで表示できます。また、未回答の問題だけ表示することもできるので、見直しや解答漏れのチェックは、マークシートやITパスポートと比べてもグッと楽になっています。さらに、便利な機能としては、⁠選択肢ボタンを右クリックすると×印を付けられる」というものがあります。つまり、⁠これはないだろ」という選択肢を消せるのです。筆記試験では選択肢に○×を書き込んで問題を解く人も少なくないと思いますが、それと近いことをCBT方式でも再現できるのです。個人的には、この機能は非常に役に立ちました(後述のように、午後試験では必須機能だったと言っていいレベルでした⁠⁠。

フラグ付きの問題・未回答の問題のみを絞り込めるのはITパスポートにはなかった機能
フラグ付きの問題・未回答の問題のみを絞り込めるのはITパスポートにはなかった機能
出典プロメトリックによる「情報セキュリティマネジメント試験:試験当日の受験の流れ」

午後試験は"慣れ"までの時間を加味した方がいい……かも

さて、問題は午後試験です。こちらも大きな問題はなく、さしてストレスなく受験できました。とはいえ、午前試験と比べると、一部気になる点もあります。

最初に気になったのは問題文と設問文の切り替えです。午後試験も基本的な画面構成は午前試験と同様で、画面左に問題、右に選択肢が表示されます。左側のウィンドウは、ボタンをクリックして、本文と設問文を切り替えながら読むことになるのですが、これに最初は何となく慣れず、操作に意識を持っていかれた感じもしました。操作自体はワンクリックでできるものなので、試験を解いている間に気にならなくなるレベルの問題です。とはいえ、"慣れ"のための時間を加味して解答プランを立てた方がいいかもしれません。

午後試験では本文と設問文を切り替えながら試験問題を解く
午後試験では本文と設問文を切り替えながら試験問題を解く
出典プロメトリックによる「情報セキュリティマネジメント試験:試験当日の受験の流れ」

それよりも、個人的に一番気になったのは「見直しのしづらさ」です。午前試験で活躍した(?)⁠後で見直す」機能は午後試験にも実装されていますが、どうも大問ごとにマークを付けるという仕様になっているようです。セキュマネの午後試験は、三つの大問の中にそれぞれ複数の小問が設けられているので、マークを付けるのも小問ごとでないと意味がありません。これは地味にイライラしました。

もし午後試験でも見直しのための目印を付けたい、という方がいれば、ハイライト機能を活用するのがいいかもしれません。午後試験では、ハイライト機能を選択肢のウィンドウでも利用できます。たとえば、設問1の(2)を後で見直したい……という場合は、選択肢ウィンドウの「設問1(2)のに関する解答群」と書かれた箇所をハイライトすると、少しは見直し時の手間が省けるかもしれません。もちろん、ハイライトは問題文にも引けるので、本文の重要な箇所を強調するという使い方もできます。

また、積極的に活用したいのが、右クリックで選択肢に×を付ける機能です。セキュマネの午後試験では選択肢の数が10個近くなることもあり、書き込みできない状態で選択肢を絞るのはなかなか面倒です。しかし、選択肢ウィンドウで×印をつけることで、画面内で簡単に解答の絞り込みを行えます。この機能がなければ、試験はかなりやりづらくなっていたでしょう。下手をすれば時間が足りなかったのでは? とすら思います。

また、ここまで触れませんでしたが、問題文は表示倍率を変えられます。小さい字で長々と文章を読むのが辛いという人や、逆に画面当たりの文字数を増やしたいという人は、表示倍率を変えて受験するといいでしょう。

たしかな知識があれば試験方式変更も怖くない

実際にCBT方式で受験してみた感想としては、ポイントは以下のとおりです。

  • 選択肢に×印をつける機能はかなり便利。午後試験では絶対使った方がいい
  • 午前試験では「後で見直し」機能が効率的で良い感じ。ただし午後試験では使えない
  • 午後試験は画面の切り替えに最初は少し手間取るかも。時間に余裕をもって取り組むのが吉

総じて操作は単純でわかりやすいですし、レスポンスが遅いということもなかったので、ことさら不安を感じる必要はないと思います。マークシートよりは慣れ・不慣れの個人差が出てくる可能性はありますが、日常的に業務などでパソコンを使っているのであれば、受験に支障が出るほどの問題はないかと思われます。

また、大事な点として、問題の難易度は事前のアナウンスどおりまったく変更はありませんでした。ですので、基本的な試験対策の方法は変わらず、参考書や過去問に取り組む、というのが一番でしょう。

皆さまが無事合格されることを心より願っています。大きな壁を乗り越えてたどり着いた情報処理技術者試験、是非ご健闘ください。

参考URL

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
URL:https://www.jitec.ipa.go.jp/index.html

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