新春特別企画

2014年のインターネットを予想する─⁠─インターネットの行方を決める議論が起こる

2013年にインターネットで起こった話題から、2014年を予想してみます。

早いもので、2011年から開始して今回で4回目になります。

これまで主に、IPv4アドレス在庫枯渇/IPv6、ネット検閲、インターネットガバナンス、ネット界隈などをテーマに新年記事を書いてきましたが、今年も私の興味はそこら辺にあります。

スノーデン事件が意識させた「データのある場所」

2013年、インターネットそのものに関連して最も世界的に大きなニュースになったのは、何といってもスノーデン事件でしょう。事件発生から約半年が経過してもまだ新しい話が登場していることから、⁠どこまで続くのだろう」というのが最近の個人的な感想です。

スノーデン事件は、国境を超えたクラウド等の利用に対する警戒感を高めたような印象があります。⁠Web 2.0」「クラウド」という表現が大流行し、そういった「ネットの向こう側」に対して無条件にデータを預けるというトレンドに対してブレーキをかける要素となったとも言えます。国によって対応は異なりますが、たとえば、ブラジルでは同国国民のデータを国内に留めることを求めた法律が成立しました。

2014年は、そういった流れのなかで、⁠データが実際に管理されている場所」に関連する議論が増えるかも知れないと予想しています。

インターネットガバナンス関連─ITU憲章の根幹にもネット規制が?

2013年に入ってからのインターネットガバナンス関連の動きとして私が着目していたのが、WTPF-13(World Telecommunication/ICT Policy Forum / 世界電気通信政策フォーラム)でした。WTPF-13は、5月にスイスのジェノバで開催されました。

そこでは、⁠インターネットガバナンスにおけるマルチステークホルダリズムの支持」など6つのオピニオンが採択されましたが、WTPF-13直前にロシアがサポートし、ブラジルが追加を提案した「幻の第7オピニオン」があります。第7オピニオンの主な内容は、⁠各国政府がインターネットガバナンスで重要な役割を果たせるようにすること」です。第7オピニオンは採択されなかったものの、WTPF-13後に各所で継続審議されました。

2014年も、そこら辺が審議され続けるものと思われますが、恐らくその先にあるのが、2014年に韓国の釜山で開催されるITU-Tの全権委員会議(PP-14 / Plenipotentiary)です。2012年に開催され、世界中で話題となったWCIT-12は非常に限られた部分しか改訂できない場でしたが、PP-14ではITU憲章やITU条約といった根本的な部分の改訂が可能です。

現時点では、ITU憲章および条約の範囲は「Telecommunication」だけであるため、電話のみが対象ですが、これが「Telecommunication/ICT」に変更されてしまうと、インターネットもITUの守備範囲内になるため、ITUの場において堂々とインターネット規制の議論ができるように変わってしまいます。

PP-14は、インターネットガバナンス関連の話題としては、近年最も大きな意味を持つイベントになってしまう可能性があります。

DNS─終わらない脆弱性との戦い

2013年は、DNSに関連する話題も豊富でした。

2013年初頭にDNSリフレクター攻撃が各所で話題となりはじめました。その攻撃手法は何年も前から知られていましたし、そういった攻撃が実際に行われることも特に新しさは無かったのですが、上手いプレスリリース等によって各所で話題になった感じです。

2013年中盤から後半にかけて、IPフラグメンテーションを悪用した脆弱性が公表され、それも一部界隈で大きな話題となりました。

DNSそのものに関連する脆弱性と、⁠運用でカバー」に近い考え方での対策は、2014年も続きそうな予感がします。

「.computer」⁠.company」⁠.photos」等の新gTLDの運用が開始されたのも大きな変化と言えます。2013年は「新gTLDが開始した」という段階でしたが、2014年からは新gTLDが爆増していきます。2014年は、そういった環境変化が何らかの障害や事件の要素となるのかどうかを見守る年になりそうです。

ネット界隈─ソーシャル炎上事件から伺える「ネットの空気」

2013年開始当初は、2ちゃんねる関連で何か大きな動きがあるかも知れないと思ったのですが、2013年が終わってみれば、最終的にはそこまで劇的な変化はなかったように思えます。

2013年のネット界隈でひときわ大きなニュースになったのが、俗に「バイトテロ」と呼ばれたアルバイト店員によるソーシャルメディアへの写真投稿等を引き金とする炎上事件だったと思います。最初のうちは、⁠これは、あまり良いとは思えない悪ふざけだ」と思えるような写真が叩かれていましたが、徐々に「叩くための敷居が低くなってないか?」と思えるような流れになっていったという感想を持っています。

ネットでの炎上事件には、2ちゃんねるや、まとめサイト等が関わっていることが多く、その存在感は年々増しています。2014年も2013年同様に、そこら辺にあまり大きな変化が無く進むのか、それとも何らかの大きな変化を誘発するような事件が発生するのかによって、⁠ネットの空気」がどうなるのかも変わって行くような気がしています。

最後に

2014年もインターネットは変化を続けそうです。

個人的には、ITU-T関連の話題が凄く大きい気がしています。⁠インターネットはどこに向かって行くのだろう」と思ってしまうような国際的な議論が2014年は増えそうな気がしている今日この頃です。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧