新春特別企画

2022年に注目したいCloudNative関連技術

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CNCFのSandboxプロジェクトにも採択されたWasmランタイム

Wasmを実行するランタイム環境は,wasmCloud,Wasmtime,Lucet,Wasmerなど様々な実装があります。そのうちの1つであるwasmCloudが,CNCFのSandboxプロジェクトとして採択されました。

wasmCloudはただのWasmランタイムではなく,地理的に分散した環境でのコンピューティングを可能にするために,NATSとActorモデルを利用したLatticeと呼ばれるネットワーク機能も持っています。また,HTTPサーバとしての公開・HTTPリクエスト・KVSとの連携といった,ビジネスロジック以外の非機能要件をCapability Providerとして抽象化して利用する機能も持っています。これにより,Providerの裏側にある実装がRedisなのかmemcachedなのかといった違いを意識することなく,ビジネスロジックの実装だけに注力できるのも特徴の一つです。wasmCloudは現状では成熟度はまだまだですが,CNCFプロジェクトとして採択されたランタイムの一つとして2022年も注目度は高そうです。

図5 wasmCloudが目指す世界観wasmColudのTwitterの投稿より)

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図6 wasmCloudがターゲットにしている実行環境CNCFのYoTubeより)

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図7 wasmCloudが提供するCapability Providerと実装するビジネスロジックの分離

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複数Kubernetesクラスタの管理・連携

ここ数年,複数のKubernetesクラスタをどう管理していくかについて試行錯誤がなされています。Multi-cluster Service Mesh(istio⁠⁠・Federation v2・Admiralty・virtual-kubelet・submarinerなど,様々な手法も登場しています。

2021年に特に印象的だったのは,GCPがKubernetesのクラスタDNSとしてCloud DNSが利用できるようになった点です。これにより,複数のGKEクラスタ横断での名前解決や,VMをあわせたServiceの名前解決(たとえばsample.default.svc.cluster.local)が可能になり,より柔軟なアーキテクチャを実現する土壌が整いました。今後はAnthosなども含め,複数拠点で連携した構成も実現しやすくなるのではないでしょうか。

また,筆者としては今年はIstioによるMulti-cluster Service Meshの実例なども出てくるのではないかと期待しています。

図8 Cloud DNSを利用した利用した複数クラスタ間でのサービスディスカバリGoogle Cloudのサイトより)

図8

そしてOpen Cluster Managementプロジェクトも開始され,複数クラスタ・複数クラウドでの管理に焦点を当てた標準化や開発も始まりました。まだ日が浅いプロジェクトですが,既にArgo CD ApplicationSetやPersistentVolumeのDisaster Recovery対応を実現するRamenプロジェクトなどによって利用され始めています。2022年はOCMの発展も見ていきたいと思います。

CNCF Technical Advisory Groups(TAGs)によるWhitepaper

CNCFには,Security・Storage・App-Delivery・Network・Runtime・Observabilityといった領域ごとに,Technical Advisory Group(TAG)が作られており,各領域のCNCFプロジェクト全体での整合性の維持や品質の向上のための活動が行われています。昨年は各TAGsから様々なWhitepaperなどが公開・更新され,用語や定義の明確化やプロジェクトの比較などが整備されました。

  • CNCF Storage Landscape Whitepaper
    • 用語を明確化(Block/KVS/DB/Object/Filesystemなど)
    • Availability, scalability, consistency, durability, performanceなどの比較
  • Cloud Native Security Map
    • 各ステップでセキュリティを向上させるための取り組みのリスト
  • Operator Whitepaper
    • Operatorのベストプラクティスをまとめたリファレンスペーパー
    • デザインパターン,ライフサイクル管理,セキュリティ,フレームワークなど
  • Chaos Engineering Whitepaper
    • Chaos Engineeringの原則や,ユースケース・要件・関連ツールのリスト
  • CNCF Observability Whitepaper
    • Observabilityの定義や各種データ(メトリック,ログ,トレース,構造化イベントなど)の目的とベストプラクティスの明文化
  • Service Mesh Interface Conformance
    • Service Meshの標準インターフェースへの対応状況
  • Service Mesh Performance
    • 5000通りのテストをもとにService Meshのパフォーマンスを計測可能な標準仕様
  • Service Mesh Patterns
    • 60種類のベストプラクティスをカタログ化したパターン集

まとめ

新春のお話として,eBPFとWasmによる機能拡張や利用事例の動向,マルチクラスタ・マルチクラウド環境への適用・高度な様々なトピックに対応するWhitepaperを紹介しました。

最後に少し国内での動向もご紹介したいと思います。今年実施したCloudNative Days Tokyo 2021では,みんなの銀行三菱UFJインフォメーションテクノロジーによるKubernetesやCloudNativeな技術スタックの利用事例が基調講演で取り上げることができたほど,一定の裾野の広がりを見せました。

2022年はさらに一歩進んだ活用事例,高度な問題解決などもあり,楽しい一年になりそうです。本年も皆様よろしくお願いいたします。

著者プロフィール

青山真也(あおやままさや)

株式会社サイバーエージェント CyberAgent group Infrastructure Unit ソフトウェアエンジニア/Developer Experts(Kubernetes/CloudNative領域)

2016年CyberAgent入社。プライベートクラウド上のKubernetes as a Serviceのプロダクトオーナー,Kubernetes/CloudNative領域のDeveloper Expertsとしても従事。国内カンファレンスでのKeynoteや海外カンファレンス等での登壇経験。著書に『Kubernetes完全ガイド』『みんなのDocker/Kubernetes』。現在はOSSへのContribute活動をはじめ,CloudNative Days Tokyo のCo-chair,CNCF公認のCloud Native Meetup TokyoやKubernetes Meetup TokyoのOrganizerなどコミュニティ活動にも従事。