ストレージ進化論

第1回DASからネットワーク・ストレージへの進化

コンピュータにおけるストレージは、演算に必要なデータの保存場所であり、演算結果を残しておくための記録の場でもありました。本質的にはRAMメモリと同じ役割ですが、低速な分大容量を安価で揃えられる、というのがメモリとストレージが別々に用意された理由だと言えます。しかし、そうした初期のストレージからは想像もつかないほど、現在のストレージは進化を遂げ、高機能化しています。

DASの問題点

DAS(Direct Attached Storage)とは、コンピュータに直接接続されたストレージを指します。

一般的なPCは、内蔵HDDという形でDASを使っていますし、サーバでも筐体内にHDDを搭載することはまだ普通に行われています。PCユーザにとってはあまりに日常的な形態のため、この方式に何か問題があるとは思わないのが普通でしょう。むしろ、PC1台で作業環境が完全に完い結し、必要なデータが全て常に手元にある安心感がメリットと感じられるかもしれません。

一方、企業システムなどで利用されるサーバなどでは、また事情が異なります。移動を想定する必要がなく、LANの正常稼働が大前提となるため、必要なデータ全てがローカルに揃っていることは、さして大きなメリットではなくなります。

DASの問題点として挙げられるのは、サーバ個々にそれぞれストレージを用意することの無駄です。ストレージの容量を使い切ってしまうと、さらなるデータ書き込みの際にエラーが発生することになります。当然ながらそれはサーバの運用という視点からは「避けるべきトラブル」であり、通常は稼働中に容量不足に陥らないよう、十分な余裕を確保することになるのです。

DASではサーバごとにそのサーバだけが利用するストレージ(HDD)が接続されており、それぞれに余裕を持った容量を確保することから、全体での未使用容量が意外なほど多くなります。DASの平均的な利用効率は40%を下回るというデータもあります。つまり、購入したものの使われないまま放置されているストレージ容量の方が、実際にデータの記憶に使われている分より多いのが普通だということです。

DASでは、個々のサーバごとに専用のストレージを接続する形態であるため、あるサーバで余剰となった空き容量を他のサーバから利用する、ということも簡単ではないため、なおさらそうなるのです。

容量の無駄に加えて、運用管理の手間が増大することも企業ユーザにとっては考慮すべき重大な問題となります。サーバごとに専用のストレージが接続されているということは、データが分散することに直結します。どのストレージにどのデータが格納されているかを把握し、整理して管理する手間がかかってしまうというわけです。

さらに、複数のサーバで共通に利用するデータをそれぞれのストレージにコピーしたりすれば、本来必要なデータ量以上にストレージ容量を消費することにもなりかねません。企業が保有するデータ量は増加する一方ですが、こうした重複データの存在が状況をさらに悪化させる可能性も考えられるのです。

DAS、NAS、SANの違い
DAS、NAS、SANの違い
DASは、ストレージがサーバに内蔵されたり、内部バスに直接接続されたりする形態で、基本的にそのサーバからしかアクセスできません。NASは、ストレージがIPネットワークに接続され、ファイルサーバとして動作します。サーバからのアクセスは、ファイルアクセスプロトコル(NFSやCIFSなど)を介してファイル単位で行われます。SANは、IPネットワークとは別のストレージ専用のネットワークを構築する形態で、ファイバチャネルを利用したFC-SANが長く使われていましたが、最近ではIPネットワークの流用も可能なiSCSI(IP-SAN)も普及しはじめています。iSCSIの場合は、NASと同様にサーバ間接続のIPネットワークを流用することもできるし、FC-SANのようにストレージ接続専用のネットワークを別に用意しても使えます。NAS/SANはいずれもストレージとサーバの接続が排他的ではなく、必要に応じて接続先を変更するといった操作も容易に行うことができます。

ネットワーク・ストレージとは何か

DASの諸問題の解決策として考えられるのが、ネットワーク・ストレージの利用です。現在主流のネットワーク・ストレージとしては、SAN(Storage Area Network)およびNAS(Network Attached Storage)の2種類があります。いずれも、ストレージをネットワークに接続し、複数のサーバから共有できるようにすることが基本となります。

SANは、ストレージ専用のネットワークを構築するものです。イメージとしては、DASをそのままサーバの外部に引き出したような形で、サーバからはDASと同様にディスク上にファイルシステムを構築し、利用することができます。ただし、単にDASの接続ケーブルを延長しただけとは異なり、スイッチでアクセスを振り分けることで、ストレージ内部に確保された複数の領域をそれぞれ異なるサーバに割り当てることができます。ネットワーク・ストレージをパーティション分割し、パーティションごとに異なるサーバに接続する、という言い方もできるでしょう。

サーバから見た場合にはDASとまったく同じ使い方ができ、独自のファイルシステムを利用するなど、ネットワーク接続でありながら、生のHDDそのままといった利用ができる点がメリットとなります。なお、SANには接続のためのネットワークとしてファイバチャネルを利用する FC-SANと、Ethernetを流用するiSCSI(IP-SAN)の2種類があります。

iSCSIはケーブルやスイッチなどにIPネットワーク用のデバイスが流用可能であり、簡便な構成であれば通信用のネットワークにストレージのトラフィックを流してしまうことも可能なため、コスト面では有利となります。しかし、IPネットワークでは混雑時のパフォーマンスの劣化が極端だったり、信頼性の面などで不安要素があったりといった状況で、ようやく普及が始まったばかりというのが実情です。

NASは、通常はファイル単位でアクセスされる「ネットワーク・ファイルサーバ」です。UNIX系OSで一般的なNFSや、WindowsのCIFSといったファイルアクセスプロトコルをサポートするOSが稼働しており、クライアントからのリクエストに応じてファイルを転送します。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧