クラウド上で物理サーバーを提供する「ベアメタル型アプリプラットフォーム」は、仮想サーバーのように柔軟に物理サーバーを運用するために、数多くの便利な機能が提供されています。今回は、そうした機能の1つであるバックアップ機能を中心に解説していきましょう。
バックアップファイルを使ってサーバーを複製
IaaSを利用するメリットの1つとして、サーバー運用の手間を軽減できるさまざまな機能が提供されていることが挙げられます。その中でも特に使われるケースが多いのはバックアップ機能でしょう。サーバー全体のバックアップを作成しておけば、トラブル発生時に即座に復旧できるだけでなく、別のサーバーにバックアップファイルをリストアしてサーバーを複製するといった使い方もできます。
一般的な仮想サーバーではなく、物理サーバーをクラウド上で提供するリンクの「ベアメタル型アプリプラットフォーム」にも強力なバックアップ機能があり、物理サーバーでありながら多くのIaaSと同様に柔軟なサーバー運用が可能です。
ベアメタル型アプリプラットフォームのバックアップ機能は、指定した時間ごと、あるいは毎日指定した時間に自動的にバックアップを取得するようスケジュール設定ができるほか、好きなタイミングで実施できる即時バックアップにも対応しています。リストアを行う際は、コントロールパネル上に一覧表示されているバックアップファイルのいずれかを選択するだけでよく、迅速に復旧することが可能です。
ベアメタル型アプリプラットフォームのバックアップ画面。作成したバックアップファイルは、ここで確認することが可能
このバックアップ一覧には、サーバーを復旧する「レストア」ボタンに加え、バックアップファイルを使って新たな物理サーバーを作成する「サーバ複製」ボタンも用意されています。これをクリックするとダイアログが開き、ホスト名や複製先となるサーバーのスペック、利用する仮想スイッチを指定すればサーバーの複製が自動的に始まります。
バックアップファイルの「サーバ複製」ボタンをクリックすると、このダイアログが表示されるので、複製するサーバーのスペックを指定する
ホットスタンバイで迅速にサービスを復旧
障害の発生に備えてホットスタンバイ用のサーバーを構築するといった際にも、バックアップファイルを使ったサーバーの複製は便利でしょう。あらかじめサーバーを複製しておき、オリジナルのサーバーに何らかの障害が発生した際には、複製したサーバーにアクセス先を切り替えることで、サービスの停止時間を最小限に抑えるというわけです。
この際に便利なのは、クライアントから見たときにグローバルIPアドレスが変化しない点です。前述したとおり、ベアメタル型アプリプラットフォームは1つのグローバルIPアドレスを複数のサーバーで共有可能なため、バックアップサーバーに切り替える際、グローバルIPアドレスを付け替えたり、クライアントからの接続先を変更したりする必要はありません。コントロールパネルのロードバランサの設定画面で、NATの転送先にバックアップ用のサーバーを指定すればよく、短時間で切り替えられます。
なおベアメタル型アプリプラットフォームには「自動復旧登録」と呼ばれる機能もあります。これを事前に設定しておけば、システムによる自動監視で異常を検出し、90秒間隔でのチェックで3回連続して復旧していない場合に、自動的に新たなサーバーに対してリストアを実行します。この機能ならあらかじめスタンバイ用のサーバーを用意しておく必要がないためコストは抑えられますが、一方で障害発生後にリストア作業が始まるため、復旧までに時間がかかります。高い可用性が求められるシステムではホットスタンバイ、コストを抑えたい場面や、複数のWebサーバでロードバランシングしている場合では自動復旧登録と使い分ければよいでしょう。
このように便利なベアメタル型アプリプラットフォームのバックアップ機能ですが、今後は物理サーバー上に構築した仮想環境に対してリストアを行う機能の実装も検討されています。これが実現すれば、物理サーバーを仮想環境に移行する「P2V(Physical to Virtual) 」が可能となり、さらに柔軟にサーバーを運用できるようになるでしょう。今後の実装が楽しみな機能です。