BSD界隈四方山話

第53回2016Q1 SR: GPLv3ツールチェーン、ディスクIOリソース制御機能、Hyper-Vネット高速化、IB新ドライバ

2016年第1四半期のFreeBSDステータスレポートがでていますので、この中からとくに興味深いところを取り出して紹介します。

GPLv3ツールチェーンを含む別リポジトリ計画

2016年第1四半期におけるFreeBSDコアチームの報告に、コアチームとJohn Baldwin氏と共同でGPLv3ツールチェーンコンポーネントを含んだリポジトリを別ディレクトリとして用意する計画を進めていることが掲載されています。FreeBSDプロジェクトとしてはGPLv3のコードをベースにマージしないことにしているので、GPLv3のツールチェーンはベースには追加されていません。FreeBSDプロジェクトとしてはLLVMを主体としたツールチェーンに移行しつつあります。

GPLv3ツールチェーンを別ディレクトリで保持することは、まだLLVMが提供されていないアーキテクチャにおいて最新のツールチェーンの機能を利用することを狙ったものではないかと見られます。こうした新しいツールを利用できるようにすることでより新しいモダンなコードをベースに入れることが可能になります。

GPLv3のコードをベースシステムにマージしないということに関しては一定のコンセンサスが得られるようですが、最新のGCCおよびそれに関連するツールチェーンなどの利用を求める声があったのもまた事実のようです。この取り組みが進むと、LLVMもGCCも最新のツールチェーンが使えることになり、より適用できる範囲が広がる可能性があるとみられます。

リソース制御機能にディスクIO制限機能を追加する取り組み

FreeBSDにはリソース制御機能としてRCTLという機能が用意されています。FreeBSD 10.3-RELEASEではこの機能がデフォルトで利用できるようになっています。

ステータスレポートには、現在の実装にはファイルシステムスループットを制限する機能が実装されていないと説明しており、この機能を実装する取り組みがFreeBSD Foundationのスポンサーシップのもとで進められていると説明があります。具体的には、次の値を制御する機能を追加する計画のようです。

  • 1秒間あたりの読み込みバイト数
  • 1秒間あたりの書き込みバイト数
  • 1秒間あたりの読み込みI/Oオペレーション数
  • 1秒間あたりの書き込みI/Oオペレーション数

また、リミットを超えたプロセスの動作速度を低下させるための新しいメカニズムも開発したとしており。この新しい機能はFreeBSD 11.0-RELEASEとともに公開される見とおしです。すでに機能はCURRENTにコミットされたようで、問題がない限りそのまま次のリリースで登場することになるのではないかと思われます。

Hyper-V / Azureでのパフォーマンス改善

2016年第1四半期は、MicrosoftのスポンサーシップのもとでHyper-Vでのパフォーマンスが大幅に進んだと記載されています。Hyper-Vで動作するゲストオペレーティングシステムはその性能を最大限に発揮するためにIntegration Serviceと呼ばれる機能を提供する必要があります。FreeBSDではFreeBSD Integration Service (BIS)が提供されていますが、ほかのオペレーティングシステム向けのISと比較すると、いくつかの機能が欠けているのと、性能が弱いところがありました。

今回実施された改善で特にネットワークドライバ回りに大幅に手が加わり、オフローディングや仮想RSSのサポートなどでネットワーク性能が大きく向上しています。マルチコア/スレッドのマシンの性能も発揮しやすくなっています。今後さらに性能を向上させる開発に取り組むとしており、より新しいバージョンのFreeBSDはHyper-VやAzureで優れた性能を発揮することになるものとみられます。

性能の向上やVMBusドライバのリファクタリングに加えて、バグ修正が進んだ点も注目されます。修正されたバグのうちバックポートが必要なものに関してはすでにErrataとして報告されているため、10.1や10.2を使っている場合にはそれぞれ最新のパッチセットにアップグレードすることでこれら修正の恩恵を受けることができます。

Infinibandの新ドライバ開発中

Mellanox Technollogiesは現在、Mellanox OFED v3.2をFreeBSDに適用させる開発を進めています。このドライバが動作するようになると、現在販売されているMellanox TechnologiesのInfinibandの性能が最大限の発揮できるようになる見とおしです。現在マージされているドライバでは新しいモデルはすべての性能を発揮できていないところがあるため、この新しいドライバが動作するようになることは、性能の大幅な向上という点で注目されます。

開発中のパッチはOFED v3.2 updateで提供されていまして、すでにいくつかの試験では通信速度が大幅に向上したという報告も行われています。

最近FreeBSDステータスレポートで報告される開発プロジェクトは、FreeBSDを活用しているベンダのスポンサーシップのもとで取り組まれているものが増えています。エンタープライズで必要になる機能の実装が進んでいます。こうしたエコシステムは今後も継続して進んでいくものとみられます。

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